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次の週、優羽は珍しく一人で大型スーパーに来ていた。
中途半端な時間に流星が昼寝をしてしまい困っていたところ、母の恵子が「見ていてあげるから行っておいで」と言ってくれたのだ。
この日は、入園が決まった保育園への挨拶や、市役所・職安に寄る予定があったため、優羽は母の申し出に心から感謝した。
恵子と流星は、今ではすっかり普通の祖母と孫のような関係になっていた。
恵子は物怖じしない流星のペースにすっかり巻き込まれている。
子供の純粋さには、大人をあっという間に変えてしまう力があるのだと、優羽は改めて感じた。
街外れの保育園への挨拶を済ませたあと、優羽は職安へ向かった。
先日申し込みをしていた会社は、すでに採用が決まってしまったと言われ、優羽はがっくりと肩を落とす。
職員も一緒に他の職場を探してくれたが、小さな子供を抱えたシングルマザーを雇おうという会社はなかなか見つからない。
「また来ます」と伝えて職安を後にし、市役所での用事を済ませると、最後に大型スーパーへ寄った。
以前、兄が言っていたスーパー内の掲示板を見てみようと思い、優羽は掲示板へ向かった。
そこにはスーパーのスタッフ募集から外部企業の求人まで、さまざまなチラシが貼られている。
(職安より多いかもしれない……)
そう思いながら一枚ずつ見ていくと、その中の一枚に目が留まった。
【山神山荘での住み込みのスタッフを募集しています。登山客が多く泊まるロッジです。季節営業ではなく一年を通してオープンしています。温泉に入り放題! シングルマザーも大歓迎! 最寄りの保育園まで車で五分。小学校までは十分です。送迎にはロッジの車をお貸しします。長く勤めてくださる方を希望】
優羽はその求人が気になった。というのも、そこに書かれていた『近い保育園』は、まさに先ほど挨拶に行った保育園だったのだ。
その瞬間、優羽は何か運命のようなものを感じた。
近くのベンチに腰を下ろし、一度深呼吸をする。
それから優羽は、チラシに記載された番号へ電話をかけてみた。三度の呼び出し音のあとで電話はつながった。
「はい、山神山荘です」
年配の男性の声だった。優羽は緊張で少し上ずった声で尋ねた。
「あの……お忙しいところすみません。今、そちらの求人チラシを見た者なのですが……」
男性はすぐに察したようだ。
「ああ、スーパーアルペンのチラシですね。目を留めていただきありがとうございます。もしよろしければ、一度こちらへ面接に来ていただけると助かるのですが」
「はい。ぜひ! いつでしたらご都合がよろしいでしょうか?」
「こちらとしては早い方が助かります。急にスタッフが辞めてしまいまして……今日でも明日でも、なるべく早く来ていただけるとありがたいです」
男性は申し訳なさそうに言った。
「今日これから伺ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。場所はわかりますか? 県道をまっすぐ来てもらえば看板が出ています。途中で迷ったらまた電話してください」
その優しい声に励まされ、優羽は今から山荘へ向かうことにした。
電話を切るとすぐに車へ戻り、エンジンをかける。
ハンドルを握る手は緊張で少し汗ばんでいたが、それ以上に胸の奥には期待や希望がふくらんでいた。
車は先ほど挨拶に行った保育園を通り過ぎ、さらに奥へと進む。
市街地から離れたこのあたりは、自然豊かな景色が広がっている。
しばらく進むと電力会社の発電所が見え、その先には温泉旅館や山荘が点在していた。
優羽はこのあたりまで来たことはなかったが、道は一本道で迷う心配はなかった。
やがて左手に『山神山荘』の看板が見えてきた。
看板横の入口を入ると広い駐車場があり、その奥に山荘が建っていた。
優羽は『山荘』と聞いて小さな山小屋を想像していたが、その予想は見事に裏切られた。
建物はログハウス風の立派な二階建てで、裏手には山、脇には川が流れている。清流の音が耳に心地よい。
川に面したウッドデッキに『cafe』と書かれた看板があり、小さなカフェも併設されているようだ。
裏山の木々は落葉樹が多く、秋には見事な紅葉が見られそうだ。
その自然豊かなその環境を一目で気に入った。
車を降りた優羽は、胸の高鳴りを抑えながら山荘の入口へと向かった。
コメント
6件
山神山荘山の神様が臨在してそうな名前…運命の山荘
わぁ〜✨全て良い方に進んどるね⤴️⤴️⤴️🍀🍀🍀優羽チャン面接頑張って⤴️⤴️⤴️💪💪💪
ビビビっと何かを感じたのよね⁉️ 保育園からも近く、住み込みでシングルマザー歓迎だなんてこれは運命だわね✨ もし決まったら恵子さんがガッカリしそうだけど、離れてもしっかり結ばれてるから大丈夫だね🎀 いい所でありますように…(人˘ ˘*)