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昼休み。校舎裏の影。3人、パンやジュースを手にのんびりしているようでいて、どこか目の奥が醒めている時間。校庭側から声が響く。
女子生徒の声(遠くから)
「えっ、それだけで?まじで言ってんの?」
教師の怒鳴り声
「校則違反だ!髪を染めたまま登校するなど——」
蓮司(ジュースのストローをくるくる回しながら)
「またやってるね。染髪アウト、ピアス即呼び出し、ネイル没収」
日下部
「わざわざ校門で止めなくてもな……やり方、見せしめじゃん」
遥(黙ってパンをちぎる)
蓮司
「ま、権力ってそういうとこでしか使えないんでしょ。“学校”っていう狭い島の王様だから」
日下部(小さくため息)
「やりたいこと一つ通すのに、“やらせてもらってる”って姿勢、求められるのキツいな」
遥(ぽつり)
「……言うだけ無駄」
蓮司(目を細めて遥を横目で見る)
「経験談?」
遥(目を合わせず)
「……昔、先生に聞いた。“なんで髪染めたらダメなんですか?”って」
日下部
「……で?」
遥
「“親が悲しむから”って言われた」
蓮司(小さく吹き出す)
「親が、ねえ……」
日下部(目を伏せて)
「……それ、笑えないだろ」
蓮司
「うん、笑えない。でも、皮肉には丁度いい」
遥
「俺、髪なんて染めたことないけど。……黒いままでも、先生は怒った」
日下部(静かに)
「……何に?」
遥
「……“目が気に入らない”って」
蓮司(首を傾げて)
「へぇ……それはまた、ハイレベルな校則違反だ」
遥(目を伏せたまま)
「だから、別に。ピアスとか、染髪とか、……理由があれば許されるだけマシだよ」
日下部(硬く握ったジュースの缶を見つめて)
「許されるべきじゃないことなんて、そんなに多くないのにな」
蓮司(ふっと口元をゆるめて)
「それがわかるのは、たぶんここじゃない場所だね。……もう少し、空気が薄くないとこ」
遥(ぼそっと)
「俺、呼び出されたら、一言だけ言うって決めてる」
日下部
「何を?」
遥
「“もう大丈夫です。どうせ何をしてもアウトですから”って」
蓮司
「いいね、それ。完敗宣言。潔くて、逆に格好いいじゃん」
日下部(苦笑気味に)
「お前はもうちょい諦めろよ」