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町を出る準備をしているときだった。
宿の前で荷物をまとめていると、男が近づいてきた。
農夫のような格好だった。
帽子を取る。
少し緊張した顔をしていた。
「勇者様でしょうか」
陽和は言った。
「候補です」
男はうなずいた。
「同じことです」
最近よく聞く。
男は言った。
「少しお願いがありまして」
レオルが前に出た。
「どうしました」
男は言った。
「うちの村に来てもらえませんか」
ミナが言った。
「討伐依頼?」
男は首を振った。
「違います」
少し迷ってから言った。
「寒くて」
意味が分からなかった。
陽和は言った。
「寒い?」
男はうなずいた。
「山の上の村でして」
帽子を握る。
「薪が足りなくて」
沈黙があった。
ミナが言った。
「つまり?」
男は言った。
「勇者様に来てもらえれば」
まっすぐだった。
「暖かくなると聞きまして」
陽和は言った。
「そういう使い方ですか」
フィルが言った。
「祝福は人々のためにあります!」
ミナが言った。
「完全に暖房扱いね」
レオルは真剣だった。
「困っているなら行くべきです」
陽和は言った。
「戦いじゃないですよ」
レオルは言った。
「勇者の役目です」
基準が広かった。
男は言った。
「一晩でいいんです」
深く頭を下げる。
「少し暖かくなれば」
陽和は言った。
「行きます」
断る理由がなかった。
村までは一時間ほどだった。
坂道だった。
風が強かった。
男が言った。
「ここです」
小さな村だった。
家は十軒もなかった。
煙突から煙が少し出ていた。
だが弱かった。
子供が一人、こちらを見ていた。
男が言った。
「勇者様が来たぞ」
人が出てくる。
年寄りが多かった。
期待する目だった。
陽和は少し困った。
何をすればいいのか分からない。
ミナが言った。
「真ん中に立ってみなさい」
言われた通りにする。
村の広場に立つ。
風が吹く。
冷たい。
しばらくすると。
子供が言った。
「さっきより寒くない」
老人がうなずく。
「本当だ」
誰かが言った。
「暖かい」
少しだけだった。
だが確かに違った。
フィルが言った。
「奇跡です!」
ミナが言った。
「微妙ね」
レオルが言った。
「役に立っています」
陽和は立っていた。
それしかできない。
日が沈む。
広場に椅子が運ばれてきた。
陽和は座った。
周りに人が集まる。
火が少なくて済むらしかった。
男が言った。
「助かります」
陽和は言った。
「少しだけですけど」
男は言った。
「十分です」
夜になった。
村は静かだった。
帰る前。
男が袋を差し出した。
「これを」
陽和は言った。
「いりません」
男は言った。
「貸出料です」
聞き慣れない言葉だった。
陽和は言った。
「貸出」
男はうなずいた。
「勇者様の」
陽和は少し考えた。
断りきれなかった。
帰り道。
ミナが言った。
「レンタル勇者ね」
フィルが言った。
「素晴らしい奉仕です!」
レオルが言った。
「人々に必要とされています」
陽和は歩いた。
風は冷たかった。
だが少しだけ暖かかった。
どうやら勇者は、
貸し出されるものでもあるらしかった。