テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
村を出てから二日目の朝だった。
空は灰色だった。
風が強い。
雲が低く流れていた。
出発してしばらくすると雨が降り始めた。
最初は細かい雨だった。
すぐに強くなった。
レオルが言った。
「急ぎましょう」
陽和はうなずいた。
鎧に雨が当たる。
音が続く。
重くなっていく気がした。
ミナが言った。
「冷えるわね」
フィルが言った。
「勇者様がいますから大丈夫です!」
陽和は歩いた。
だが、寒かった。
はっきり寒かった。
しばらくしてミナが言った。
「……今日、弱くない?」
陽和は言った。
「何がですか」
「暖かさ」
立ち止まる。
四人とも黙る。
確かめるように手を出す。
風が強かった。
冷たい。
レオルが言った。
「確かに」
陽和は言った。
「出てないですか」
フィルが言った。
「そんなはずはありません!」
祈り始める。
だが変わらなかった。
雨は強くなった。
道はぬかるんでいた。
陽和は歩いた。
寒かった。
前よりは少しだけましな気もしたが、誤差のようだった。
ミナが言った。
「これ、意味ある?」
陽和は言った。
「分からないです」
レオルが言った。
「祝福が消えることはありません」
フィルが強くうなずいた。
「試練です!」
陽和は思った。
試練にしては地味だった。
昼過ぎ。
小さな岩陰で休む。
雨を避けるためだった。
だが風が吹き込む。
寒かった。
ミナが言った。
「いつもならもう少し違うのに」
陽和は言った。
「すみません」
ミナは言った。
「謝らなくていい」
少し間を置いて、
「そういう能力じゃないだけ」
レオルは言った。
「十分です」
だが声が少し震えていた。
フィルは祈っていた。
長かった。
それでも寒かった。
陽和は手を見た。
冷えていた。
初めてだった。
今までは、どこか少し暖かかった。
少しだけ。
確かにあった。
今日は違った。
ほとんど感じなかった。
夕方。
やっと小屋を見つけた。
使われていない山小屋だった。
中に入る。
風が止まる。
それだけでましだった。
レオルが薪を集める。
ミナが火をつける。
小さな炎が上がる。
フィルが座り込む。
陽和も座った。
火の近くに寄る。
暖かかった。
はっきり暖かかった。
ミナが言った。
「今日は火の勝ちね」
陽和は言った。
「そうですね」
レオルが言った。
「勇者様の力は常にあります」
フィルが言った。
「見えないだけです!」
陽和は火を見た。
今日は違った。
自分がいなくても同じだった気がした。
炎は揺れていた。
暖かかった。
いつもよりずっと。
陽和は思った。
暖かくならない日もあるらしい。
勇者の祝福より、
火の方が頼りになる夜だった。