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#ファンタジー
村を出てから二日目の朝だった。
空は灰色だった。
風が強い。
雲が低く流れていた。
出発してしばらくすると雨が降り始めた。
最初は細かい雨だった。
すぐに強くなった。
レオルが言った。
「急ぎましょう」
陽和はうなずいた。
鎧に雨が当たる。
音が続く。
重くなっていく気がした。
ミナが言った。
「冷えるわね」
フィルが言った。
「勇者様がいますから大丈夫です!」
陽和は歩いた。
だが、寒かった。
はっきり寒かった。
しばらくしてミナが言った。
「……今日、弱くない?」
陽和は言った。
「何がですか」
「暖かさ」
立ち止まる。
四人とも黙る。
確かめるように手を出す。
風が強かった。
冷たい。
レオルが言った。
「確かに」
陽和は言った。
「出てないですか」
フィルが言った。
「そんなはずはありません!」
祈り始める。
だが変わらなかった。
雨は強くなった。
道はぬかるんでいた。
陽和は歩いた。
寒かった。
前よりは少しだけましな気もしたが、誤差のようだった。
ミナが言った。
「これ、意味ある?」
陽和は言った。
「分からないです」
レオルが言った。
「祝福が消えることはありません」
フィルが強くうなずいた。
「試練です!」
陽和は思った。
試練にしては地味だった。
昼過ぎ。
小さな岩陰で休む。
雨を避けるためだった。
だが風が吹き込む。
寒かった。
ミナが言った。
「いつもならもう少し違うのに」
陽和は言った。
「すみません」
ミナは言った。
「謝らなくていい」
少し間を置いて、
「そういう能力じゃないだけ」
レオルは言った。
「十分です」
だが声が少し震えていた。
フィルは祈っていた。
長かった。
それでも寒かった。
陽和は手を見た。
冷えていた。
初めてだった。
今までは、どこか少し暖かかった。
少しだけ。
確かにあった。
今日は違った。
ほとんど感じなかった。
夕方。
やっと小屋を見つけた。
使われていない山小屋だった。
中に入る。
風が止まる。
それだけでましだった。
レオルが薪を集める。
ミナが火をつける。
小さな炎が上がる。
フィルが座り込む。
陽和も座った。
火の近くに寄る。
暖かかった。
はっきり暖かかった。
ミナが言った。
「今日は火の勝ちね」
陽和は言った。
「そうですね」
レオルが言った。
「勇者様の力は常にあります」
フィルが言った。
「見えないだけです!」
陽和は火を見た。
今日は違った。
自分がいなくても同じだった気がした。
炎は揺れていた。
暖かかった。
いつもよりずっと。
陽和は思った。
暖かくならない日もあるらしい。
勇者の祝福より、
火の方が頼りになる夜だった。