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ruruha
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きゆう
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📩 相談
高校2年・Nさん
私は、悩みを相談するのが苦手です。
友達に嫌なことを言われたり、家で嫌なことがあったりしても、誰かに話そうとすると「でも、もっと大変な人もいるし」と思ってしまいます。
実際、私よりつらい状況にいる人はいると思います。
学校に来られない人もいるし、家に居場所がない人もいるし、もっと深刻な問題を抱えている人もいる。
私は学校に通えているし、ご飯も食べられるし、笑える日もあります。
だから、つらいと言うのは大げさな気がします。
この前、友達に「最近元気ないね」と言われたときも、「別に大丈夫」と答えました。本当は少し聞いてほしかったけど、話したところで、こんなことで悩んでいるのかと思われそうで怖かったんです。
それなのに、家に帰ると、誰かに気づいてほしかったと思います。
自分から何も話さないくせに、気づいてほしいと思うのはわがままですか。
遥「……気づいてほしかったんだな」
N「はい。でも、自分から言わなかったんです。だから、誰にも気づいてもらえなくても仕方ないと思います」
遥「……言わなかったら、分からないこともあると思う。でも、気づいてほしかったって気持ちまで、なかったことにしなくてもいいんじゃないかな」
N「でも、私より大変な人はいるので」
蓮司「それ、誰に言われたの?」
N「……誰にも」
蓮司「じゃあ、誰に許可を取ってるんだ?」
N「え?」
蓮司「つらいって言う前に、もっと大変な人がいるから自分は駄目だって判断してるんだろ。誰かに『おまえは十分つらい』って認定されないと、相談できないの?」
N「……そういうつもりじゃないんですけど」
蓮司「自分でも気づいてないだけかもしれないけどな。Nは、悩みを話す前に、自分が話していい人間かどうかを審査してる」
日下部「しかも、その審査に合格する条件が曖昧だ。どれくらい大変なら話していいのか、自分でも決められないだろ」
N「……はい」
日下部「だったら、いつまで経っても話せない」
N「でも、本当に大したことじゃないかもしれないんです。友達に嫌なことを言われたくらいで落ち込んで、家でも機嫌が悪くなって。こんなの、私が気にしすぎなだけかもしれないし」
遥「……俺、誰かに相談されたときは、『そんなことで』って思わないようにしてる」
N「どうしてですか?」
遥「その人が何を気にするかって、俺が決めることじゃないと思うから。俺には平気なことでも、相手にはずっと残ることがあるし」
蓮司「逆もあるだろ。自分が平気だと思ってたことでも、誰かに指摘されて初めて、あれは嫌だったんだって気づくこともある」
N「……そうですね」
遥「でも、自分のことになると、俺も『これくらいで』って思うことがある」
蓮司「へえ。おまえでも?」
遥「……あるよ」
蓮司「自分で相談を受けてるときは、そんなこと言わないのにな」
遥「……」
日下部「自分のことを話すときだけ、急に基準が厳しくなるんだろ」
遥「……そうかもしれない」
N「遥くんも、自分がつらいって言えないんですか?」
遥「……言えないことはある。もっと大変な人がいるとか、今の自分より悪い状況になったらどうするんだとか、考えることもあるし」
N「それで、どうするんですか?」
遥「……何も言わないことが多い」
N「それで平気なんですか?」
遥「……平気じゃないときもある」
遥はそこで言葉を止めた。
N「……」
遥「ごめん。俺の話になったな」
蓮司「別にいいだろ。今のNの話にも関係ある」
N「……私も、何も言わないでいると、だんだん自分でも何が嫌だったのか分からなくなることがあります」
日下部「どういうふうに?」
N「最初は友達の言葉が嫌だっただけなのに、あとから『こんなことで落ち込む自分が嫌だ』とか、『周りは普通にしてるのに』とか、いろいろ考えてしまって。最後には、自分の何がつらかったのかより、自分が弱いことばかり気になります」
蓮司「それ、悩みが二段階になってるな」
N「二段階?」
蓮司「最初に嫌なことが起きる。そのあと、そのことで落ち込んだ自分を責める。最初の出来事だけでもしんどいのに、後半は自分で自分を追い込んでる」
N「……確かに」
蓮司「しかも後半のほうは、相手が何かしなくても続けられる」
日下部「自分の中だけで、ずっと責め続けられるからな」
N「……私、家に帰ってからも、ずっと考えています」
遥「何を言われたか、何度も思い出す?」
N「はい。それで、こんなことで落ち込んでいる自分が嫌になるんです」
遥「……そっか」
N「どうしたら、気にしないようになれますか?」
蓮司「気にしない方法を探す前に、その友達に何を言われたのか、話してみたら?」
N「……ここでですか?」
蓮司「話せる範囲でいい。俺たちが聞いたら、Nが大げさかどうか判定するためじゃなくて、何が嫌だったのかを一緒に考えられるだろ」
N「……私が気にしすぎだったら?」
日下部「そのときは、そのときに考えればいい。最初から自分の話を却下する必要はない」
N「……」
日下部「相談って、自分の中で答えが出てからするものじゃないだろ。分からないから話すんじゃないのか」
N「……そうですね」
遥「俺も、相談されたら、すぐに答えを出さなきゃって思うことがある。でも、相手が何に傷ついたのか分かる前に、気にしすぎだとか、気にしなくていいとか、決めたくない」
N「……私、友達に『大丈夫?』って聞かれたとき、何て答えればいいか分からないんです」
蓮司「大丈夫じゃないなら、大丈夫じゃないって答えれば?」
N「それができたら、悩んでないです」
蓮司「まあ、そうだな」
日下部「いきなり全部話す必要はない。『ちょっと疲れてる』でも、『今はうまく説明できないけど、少し聞いてほしい』でもいい」
N「そんな曖昧な言い方でもいいんですか?」
日下部「自分の状態を完璧に説明できる人間ばかりじゃないだろ」
遥「……『大丈夫』って言ったあとに、やっぱり大丈夫じゃなかったって気づくこともあると思う」
N「そのあとから話してもいいんでしょうか」
遥「もちろん。『さっきは大丈夫って言ったけど、実はちょっと聞いてほしいことがある』って」
N「……それなら、言えるかもしれません」
蓮司「あと、聞いてもらったからって、必ずすっきりしなきゃいけないわけでもないからな」
N「話しても、すっきりしなかったら?」
蓮司「話してもすっきりしないことはあるだろ。相手に分かってもらえたとしても、嫌だった出来事が消えるわけじゃない」
日下部「それでも、自分ひとりで同じことを繰り返し考えているときとは、違う見方ができることもある」
N「……私、相談するなら、ちゃんと説明できなきゃいけないと思っていました」
遥「……俺も、相手の話を聞くとき、うまく言葉にできないことがあるよ」
N「遥くんも?」
遥「うん。何て言ったらいいか分からないこともある。でも、分からないからって、聞かなかったことにはしたくない」
蓮司「おまえ、そういうところは頑固だよな」
遥「……そうかな」
蓮司「自分のことになると、すぐ話を終わらせるくせに」
遥「……」
日下部「今のは、否定できないだろ」
遥「……分かってる」
N「……」
遥「……ごめん。今の、俺の話だった」
N「いえ……私も、誰かの話なら『無理しなくていいよ』って言えるのに、自分が無理してるときは、全然そう思えないです」
遥「……うん」
N「友達が同じことで悩んでいたら、話してほしいと思います。そんなことで悩むななんて思わないです。でも、自分のことになると、話すほどのことじゃないって思ってしまう」
蓮司「自分には、友達に向けるような言葉を使えないんだな」
N「……はい」
日下部「なら、今度は自分にも、友達に言う言葉を使ってみればいい」
N「……難しそうです」
日下部「最初から信じなくていい。『友達だったら、どう言うだろう』って考えてみるだけでもいいだろ」
N「……私だったら、『嫌だったなら、嫌だったって言っていいんだよ』って言うと思います」
遥「……いい言葉だと思う」
N「でも、自分には言えないんです」
遥「……俺も、今すぐ自分に同じことを言えるかって聞かれたら、難しいと思う」
蓮司「じゃあ、まずは他人に言える自分の言葉を、嘘にしないことだな」
N「嘘……?」
蓮司「友達には『嫌だったなら嫌でいい』って言えるのに、自分には『こんなことで落ち込むな』って言ってる。その友達に向けた言葉は、本心なんだろ?」
N「……はい」
蓮司「なら、その考えを自分にも使える可能性はある。すぐには無理でもな」
日下部「それから、気づいてほしいなら、気づける手がかりを少し出すことも覚えておけばいい。相手に察してもらうことだけを期待していると、気づいてもらえなかったときに、また自分を責めることになる」
N「……分かりました」
遥「……誰かに気づいてほしいって思うのは、そんなに悪いことじゃないと思う」
N「……」
遥「でも、気づいてもらえなかったからって、誰にも大事にされてないって決まるわけじゃない。俺も、そこは気をつけたい」
日下部「まずは、自分が何を感じているのか、無視する前に気づくことだな」
N「……はい。次に友達に聞かれたら、すぐに大丈夫って言わないでみます」
蓮司「言わないって決める必要もないけどな。大丈夫なら大丈夫でいい。そうじゃないときに、反射で答えないようにすればいい」
N「……はい」
遥「……俺も、誰かに聞かれたとき、ちゃんと考えて答えられるようになりたい」
日下部「おまえは聞かれる前から、何もないって決めることも多いだろ」
遥「……それも、直したい」
蓮司「自分のことは後回しにしがちな三人で、ずいぶん話したな」
日下部「おまえも含めるのか?」
蓮司「俺は別に」
遥「……今の、すごく怪しい」
蓮司「何が?」
遥「……いや、何でもない」
日下部「そうやって、また流す」
蓮司「……おまえら、相談者が帰る前に俺を相談者にするなよ」
N「……ふふっ」
遥「……少し、楽になった?」
N「はい。私だけが変なのかと思っていたので」
遥「……そっか」
N「ありがとうございました」
日下部「また話したくなったら来ればいい。うまく説明できなくても構わないから」
N「はい」
Nが部屋を出たあと、遥は相談者が座っていた椅子を見ていた。
蓮司「遥」
遥「……何?」
蓮司「おまえ、さっきから自分の話になると声が小さくなるな」
遥「……気のせいだろ」
日下部「そうか?」
遥「……うん」
蓮司「へえ」
それ以上、蓮司は追及しなかった。
遥も、何も言わなかった。
誰かの痛みを聞くことならできる。その人が自分を責めないように、言葉を探すこともできる。
けれど、自分が同じ場所に立っているとき、遥はまだ、自分のための言葉をうまく見つけられなかった。
🗝 三人からのことば
遥「自分より大変な人がいるって考えることはあると思う。でも、自分がつらいと感じたことまで、なかったことにしなくていい。誰かの痛みを大切にできるなら、自分の痛みにも少しだけ目を向けてほしい」
蓮司「自分が相談していい人間かどうか、勝手に審査するな。相談は、つらさの大きさを競って合格するものじゃない。何が嫌だったのか分からないなら、分からないまま話せばいい」
日下部「気づいてほしいなら、少しずつ言葉にする練習をすればいい。相手に全部察してもらうのは難しい。『大丈夫じゃない』『少し聞いてほしい』。その一言からでも始められる」
コメント
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うわ、このエピソードめっちゃ刺さった……。「自分より大変な人がいるから言えない」って、自覚あるあるすぎて胸が痛かったわ。蓮司の「自分を審査してる」って指摘とか、日下部の「一言から始めていい」って言葉がすごく響いた。遥も自分のことになると言えないタイプなんだな……って最後のシーンでグッときた。誰かのためには優しい言葉が出せるのに、自分には向けられないもどかしさ、すごく共感する。次に「大丈夫?」って聞かれたときの選択肢がちょっと増えた気がするわ。素敵な話をありがとう🔥