TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

水面に落ちた星屑

一覧ページ

「水面に落ちた星屑」のメインビジュアル

水面に落ちた星屑

第78話 - 第78話

193

2024年08月19日

#恋愛

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#純愛

瑠璃マリコ

シェアする

この作品はいかがでしたか？

193

瑠璃マリコ

プロフィール

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール

テラーノベルのスクリーンショット

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

ホーム

検索

通知

本棚

その頃岳大の事務所では昼の休憩に三人でテーブルを囲んでいた。優羽が作った焼きそばを食べながら大和翔真の話題で盛り上がっていた。

「まさか大和翔真が突然現れるなんてねーびっくりしたよなー」

「私も外で彼を見た時は心臓が止まるかと思いました」

井上と優羽の言葉に続いて岳大が言った。

「彼は礼儀正しくて素晴らしい青年だったね。人気俳優に上り詰めたのがわかる気がするよ」

優羽と井上もうんうんと頷く。

「次のカタログを作る時はノーギャラでモデルをやらせて下さいなんて言ってくれたけど普通に頼んだらギャラは恐ろしい金額でしょう？　そう思うと怖くて頼めないですよね。それに『mountain top7』の方のイメージキャラクターの話はどうなったんだろう？　あれはただの噂だったのかな？」

「そうですよね。もし向こうの仕事を受けていたらうちのテレビに出たりモデルを引き受けるなんて出来ないでしょうから」

「それにしても予想外の事が次々と起こるよね。モデルのドタキャンに始まり大和翔真君の突然の来訪。次は一体何が起こるかな？」

と岳大が微笑んで言った。

「本当ですね。でも想定外の事が起きてもなんだかんだ全て上手くいっちゃうからまたもし何か起こっても大丈夫な気がしてきました」

井上はそう言って笑った。

そして昼食を食べ終えると井上が二人に言った。

「夏樹さんに店舗工事の進捗状況を報告しないといけないので今から店に行って写真撮りに行ってきます。一時間くらいで戻りますんで」

井上はカメラを手にして出かけて行った。

優羽は食べ終わった皿をカウンターへ運びながらこの家に岳大と二人きりになった事に少し緊張していた。

しかしそんな優羽とは正反対に岳大はいつものように編集部屋に戻り作業を続けている。

（私が自意識過剰だったんだわ）

優羽はホッと胸をなでおろすと片付けを続けた。

そして食後のコーヒーを淹れると岳大がいる編集部屋まで持って行った。

すると岳大が作業の手を止めた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

優羽がキッチンへ戻ろうとすると突然岳大が優羽の腕を掴んで引き寄せた。

そして両足の間に優羽を閉じ込めるとそのまま岳大の左腿に座らせ片腕で優羽の腰をホールドする。

優羽は岳大の両足に挟まれた形になり身動きが取れなくなってしまった。

あまりの突然の出来事に優羽は顔を真っ赤にしたまま戸惑っている。

「やっと二人になれましたね」

岳大は優しい声で囁くと優羽の顔を引き寄せて唇を重ねた。そのキスはうっとりするようなとても甘いキスだった。

あまりの心地良さに優羽が声を漏らす。

「んっっ…….」

その艶っぽい声が岳大に火をつけた。優しいキスはいつの間にか情熱的なキスへと変わり息が出来ないほどだ。

岳大は徐々に唇を優羽の耳へ移動させると耳に熱い吐息をかける。その瞬間鳥肌が立った優羽の身体は小鳥のように震えた。

岳大は唇を優羽の首筋へ移動させるとその白くて滑らかな肌の上を彷徨い始める。

優羽は久しぶりに感じる感覚に身体の力が抜けてしまい弱々しい声を上げる。

素直に反応する優羽を見て岳大は嬉しそうだった。そして一層強く優羽を抱き締めると再び優羽の唇を奪った。

シンと静まり返った部屋に二人のリップ音だけが響く。

しばらくキスが続いた後岳大は名残惜しそうに唇を離した。そして膝の上で恥じらう優羽の瞳を見つめて優しく言った。

「愛しているよ」

「え？」

優羽がびっくりしていると岳大は照れたように笑う。

「努力義務で頑張りました」

その言葉に優羽は思わずフフッと笑う。

「よくできました」

その瞬間再び岳大が優羽を抱き締める。そして岳大は真面目な表情をして言った。

「今度、君のご実家にご挨拶に行きたいんだけど」

「え？」

「こういう事はちゃんとしたいんだ、流星君の為にもね。だからきちんと君のお母さんとお兄さんに交際の許可をいただきに行こうと思っている」

岳大は優羽の目を見つめたまま静かに言った。

優羽はびっくりしていた。まだ付き合い始めてもいないのに岳大は優羽の家族に交際の許可を貰いに行くといった。

その時優羽は岳大が自分と流星の事を真剣に考えてくれている事を知る。途端に優羽の瞳が潤んできた。

優羽は泣いている事を悟られないようにうつむいて返事をした。

「うん」

溢れそうな涙を見られないように優羽は慌てて岳大の首に両腕を回すと抱き着いた。

岳大は一瞬びっくりしていたがすぐに優羽をギュッと抱き締める。

優羽はクスクスと笑いながらいつまでも甘えるように岳大にもたれかかっていた。

窓の外には春を待ちわびるような少し湿った雪が降り続いていた。

ガラスに映る二人のシルエットはしばらくの間重なったままだった。