『何をしたいのか分かりません』
「京都から来ました。
時透 夜久です、よろしくお願いします」
「はーいじゃあ皆仲良くしてあげてね〜」
「ねぇねぇ!時透さんって京都に住んでたんでしょ??舞子さんって本当にいるの!?」
「夜久さんってなんかロマンティックな名前だね〜!」
「ねぇ今度時透さんの家って金持ちなの?」
ここまではお決まりの口々に飛び舞う私への質問コーナー。
普通は、答え方や話し方によってここから友達ができ、青春を楽しめる重要なスタート。
でもそれを…
「…それを知ってどうするの…」
「え…ど、どうしたの?」
「だから私がもしその質問に答えたとして何か価値があるの?」
「え、えーと…ただ気になって…」
「それを知って何か価値があるの?」
「…変な子…もう行こ行こ、」
「そうだね〜、話になんない」
壊してしまうのがこの私。
そして皆が私の元から離れてゆく_
「……」
でも、今回は違った。
「貴方も行かないの…?」
「え?あー…なんか面白そうだなぁ…ってさ」
「面白い…?何が…?」
「お前。」
唯一離れないでいてくたのが彼だった。
「は……」
「なぁなぁ…何でそこまで質問が嫌なの?」
彼は、私の顔にずいずいと近付いて聞いてくる。
私も一応乙女だ。
無感情で答えられるわけがない。
私は顔を赤らめて表情を隠すように下を向いた。
「…別に…嫌とは言ってない…」
私は下を向いたままボソボソと話す。
「そっかぁ…」
彼は考えるように相槌を打った。
「貴方は…私の事…嫌わないの…」
私は彼のことを不思議に思い、聞いてみる。
今までの私と話した人々はすぐに離れていってしまう。
なのに彼は、それと真逆に私のことに興味を持っているようだった。
「ん?別に!世の中いろんな人いるし!」
彼は明るい笑顔で私の質問に答える。
なんで…なんでだ…
どうして彼は私の事を嫌わないんだ…
いい人ぶっていたいのか…
私は次々と彼の思想に悩まされる。
別に好かれるのが嫌いな訳ではない。
だが私の頭の中には
いい人ぶって自分の評判をあげるための演技じゃなかろうか、
後から私の事を虐めるんじゃなかろうか、
などの考えが頭の中をぐるぐるしていた。
「……で…」
「ん?」
「…なんで嫌わないのよ…っ…」
私は歯を食いしばった表情で、ばっと顔を彼に向けた。
「へ…?」
彼は急に大声を出した私に困惑して、眉を内側にあげた表情でこちらを見てくる。
しまった。
せっかく自分に興味を持ってくれたのに。
唯一、離れず傍にいてくれた人なのに。
思わずいろんな思いを大声で彼にぶつけてしまった。
あぁ…自ら大切なチャンスを逃してしまった…
私は自分の行動にすぐ後悔した。
「……」
彼もめんどくさくなってこんな私から離れるのだろう
そんな思いを私は胸にしまった。
「あ、お、俺の名前は亜音 紫乃!よろしく!」
だが彼は自己紹介をしはじめた。
話を逸らそうとしたのだろう。
彼は焦っているのか仕草があたふたとしていて、瞼も何回もぱちぱちと瞬きをしていた。
何度も噛んで額に汗を浮かばせながら懸命に話し出す。
私はそんな彼に思わずクスッと笑ってしまった。
「…ふふっ…焦りすぎだよ…」
「え?あ、ご、ごめん…笑」
彼は片手を頭の後ろに回して照れくさそうに瞳だけキョロキョロさせながら謝った。
今回は一味違う転校日だな。
私は彼が後々離れていくとしても今この時間を過ごせている事自体とても満足だった。
あー…友達っていいな…
コメント
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あ、ごめん。 投稿するつもりない小説間違えて投稿ボタン押してしもうたわ。ノベルの下書きにし直すのやり方分からん…