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あ、そうそう。 かぜを引いて熱がある時には背中にフェイスタオルを四つ折りくらいの大きさにして背中に入れると良いよ。 汗がタオルに吸い取られるから。
ドキドキしちゃうよね。 早く治して3人で美味しいご飯食べて、たくさん話をしてね😊
賢太郎様 葉月ちゃんの優しい看病で熱下がって良かったですね 💊も効いたけど葉月ちゃんご飯と温かな胸が更に良かったのでしょうね(*^_^*) 早く元気になって 三人家族団欒 楽しみですね😊
賢太郎が自分の家に泊まると知った航太郎は、大喜びした。
しかし、そんな航太郎に賢太郎は言った。
「風邪がうつったら困るから、治るまでは俺に近寄らないで」
「わかった」
「なるべく早く治して、勉強見てあげるからね」
「うん。でも、なるべく自分で頑張ってみる」
「偉いぞ」
そこで葉月は、ゲストルームに賢太郎を案内した。
部屋はリビングのすぐ隣だ。
庭に面したゲストルームは、以前、葉月の父親のバンド仲間たちが泊まっていった部屋だ。
部屋にはシングルベッドが二つあり、ホテルのツインルームのようになっている。
二人以上泊まる時は、床に布団を敷いて寝てもらっていた。
(またこの部屋を使う時がくるなんて……)
そう思いながら、葉月は賢太郎をベッドに寝かせた。
熱が高くて辛そうだったので、頭の下には氷枕を敷き、おでこを冷たい濡れタオルで冷やす。
寒気に襲われた賢太郎は、小刻みに震えていた。
「近くに、往診をしてくれる先生がいるから、午後に来てもらうわね」
「申し訳ない……」
「気にしないで。何か食べられそう?」
「今は、無理だな」
「だったら、飲み物を持ってくるわね。ゆっくり寝てて」
「ありがとう」
葉月が飲み物を持って部屋に戻ると、賢太郎は眠っていた。
(忙しいのに、バーベキューやサーフィンに無理やり付き合わせちゃって申し訳なかったな……)
葉月は反省した。
午後になると、近所の医者が往診に来てくれた。
賢太郎は、熱はあるものの咳や肺炎などの症状は見られなかった。薬を飲めば熱は1~2日で下がるだろうと言われ、ひとまず安心する。
その後、葉月はすぐに処方箋を持って、近くの薬局まで薬を取りに行った。
そして、帰宅するとすぐに玉子雑炊を作って賢太郎に食べさせ、薬を飲ませた。
それから、賢太郎はぐっすりと眠った。
夕方、夕食の支度を済ませた葉月は、一度賢太郎の様子を見に行った。
部屋へ入ると、まだ賢太郎は眠っていた。
日が暮れていたので、カーテンを閉めてから、葉月は賢太郎のおでこに手を当てた。
(下がってる?)
先ほどまでの赤みを帯びた顔色は落ち着き、呼吸も穏やかだ。
その時、賢太郎が目を覚ました。
賢太郎が起き上がろうとしたので、葉月はすぐにそれを制止した。
「まだ寝てて」
「うん。薬が効いたのかな? だいぶ気分がいいよ」
「でも、夜にまたぶり返すかもしれないから、まだ寝ていた方がいいわ」
「うん……」
「あ、汗をかいたなら、着替えてね」
「そうしようかな。もう汗びっしょりだよ」
葉月が着替えをベッドの上に置くと、賢太郎は上半身を起こし、突然Tシャツを脱ぎ始めた。
その瞬間、逞しく厚い胸板が葉月の目に飛び込んできた。
(わっ……)
賢太郎は気にする様子もなくTシャツを脱ぎ捨てると、洗い立てのTシャツに着替える。
次に、スウェットのズボンを脱ごうとしたので、葉月は慌てて後ろを向いた。
その間に、賢太郎は素早く下着とズボンを履き替えた。
葉月は、汗で湿った洗濯物を拾い上げながら言った。
「夕食はここに持ってくるわ。食べられそう?」
「うん。でもこってりしたものはちょっと……」
「大丈夫よ。今日はあっさりした和食だから」
「それはありがたい。助かるよ」
「うん、じゃあもうちょっとしたら持ってくるね」
部屋を出た葉月は、洗濯機まで洗濯物を持って行く途中、心の中で呟く。
(思ってたよりもマッチョな身体だったから、ドキドキしちゃった……)
そして、なんとか胸の高鳴りを抑えながら、洗濯機のスイッチを入れた。
その後、葉月は食事を賢太郎の部屋まで運んでから、航太郎と二人で夕食を食べ始めた。
「賢太郎さんの具合はどう?」
「薬が効いてだいぶ楽になったみたい。でも、夜にぶり返すかもしれないからもうちょっと様子を見ないとね」
「そっか。せっかく同じ屋根の下にいるのになー、会えないのは残念!」
「治ったら会えるわよ。それまでは、自分でしっかり勉強しなさいよ」
「わかってる」
航太郎は素直に返事をし、夕食を済ませてから二階へ戻っていった。
葉月は、食事の後片付けを終えてから、賢太郎の様子を見に行った。
「どう? 少しは食べられた?」
「うん。美味しくて全部食べたよ。葉月は料理が上手だな」
「フフッ、ありがとう。熱は?」
「今、測ってる」
その時、体温計の電子音が鳴った。
「37度4分」
「あ、下がってる。よかった」
「朝とは違って全然楽だよ。やっぱり医者の薬は効くんだな」
「でしょ? あの先生、この辺りではすごく評判がいいのよ」
「じゃあ、航太郎も世話になったの?」
「そうよ。離婚してここに戻ったばかりの頃は、あの子、よく熱を出してたから」
「そっか」
葉月は、当時を思い出しながら言った。
あの頃は子育てに必死で、全てに余裕がなかった。
一方、賢太郎も物思いにふけっていた。
離婚後、小学生の息子を一人で育ててきた葉月は、相当な苦労をしてきたのではないだろうか。
そんな葉月に対し、賢太郎は深い尊敬の念を抱いていた。
(息子が高熱を出しても、すべて一人で乗り越えてきたんだろうな。どれだけ心細かっただろう……)
その時の二人を思い浮かべると、胸がズキンと痛んだ。
「ここで寝てたらさ、君たち二人が食事をしながら話してる声が聞こえてきたよ」
「あ、やだ、聞こえちゃった? 何話してたかな?」
「ニュースの話とか、お笑い番組の話とか。すごく楽しそうだった」
「そう? フフッ、なんだか恥ずかしい」
「いつもあんな感じで食事してるんだね」
「そうよ。うちは二人きりの家族だから、食事中もテレビを解禁してるの」
「いいと思うよ。同じものを見て、同じことで笑う。それって大事なことなんじゃないかな」
「そう言ってくれると安心だわ。でも、食事中にテレビなんてお行儀が悪いって言う家庭もあるでしょう?」
「他所は他所だよ。気にすることないさ」
「うん」
「でさ、俺、思ったんだ」
「何?」
「うん。俺も、君たちの団らんの中に入れてもらえないかなってさ……」
その言葉を聞いて、葉月は胸がキュッと締め付けられるように感じた。
「もちろん、治ったら入れてあげるわ」
「やった!」
「航太郎もあなたに会いたがってるもの」
「それは嬉しいね」
「だから早く治さないとね」
「だな」
その時、葉月は突然手を掴まれ、引っ張られた。そして、ベッドに座っている賢太郎の膝の上に座らされた。
葉月が驚いて声を上げようとした瞬間、賢太郎にギュッと抱き締められた。
「あ……」
「しばらくこのままでいて……お願い……」
甘くとろけるような声で懇願されると、身体が硬直して動けなくなった。
賢太郎は、葉月の胸に顔を埋めたまま、しばらくじっとしていた。
賢太郎の身体からは、かすかに汗の匂いがした。
それは嫌な匂いではなく、野性的でとても男らしく感じられる。
久しぶりに男性の匂いを間近に感じた葉月の心臓は、ドキドキと高鳴り始めた。
(彼にバレちゃう……)
葉月は、自分の心臓の鼓動が賢太郎に聞こえてしまうのではないかと心配になる。
しばらくして、賢太郎はようやく顔を上げた。
「葉月の胸は柔らかくていい匂いがする。お陰で元気が出たよ」
「こ、こんなので元気になれるの?」
「もちろん! 最高の治療薬だ」
爽やかに微笑む賢太郎を見て、葉月の心臓はさらに大きく高鳴った。
「そ、それなら、よかったわ。じゃあもう行くわね。何かあったら遠慮なく言って」
「サンキュ」
「じゃ、お大事に」
「ありがとう」
葉月はドキドキしたままゲストルームを出ると、賢太郎の食器を持ってキッチンへ戻った。