テラーノベル
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#成り上がり
#死に戻り
#ハッピーエンド
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朝の作業がひと段落したころ、サベリオは荷車の影に立っていた。手を動かしていないと落ち着かないのに、何から始めればいいのかが見えない。橋を見れば照明が浮かび、照明を見れば濡れた配線が浮かび、そのたび胸の奥が冷たくなる。
「休憩してる顔じゃないな」
後ろから声がして、振り向くとミゲロが木箱を肩から下ろしていた。額に汗をにじませたまま、気軽な調子で笑おうとしている。けれど目だけは、サベリオの顔色をちゃんと見ていた。
「なあ」
サベリオは少し迷ってから言った。
「未来を知ってる、みたいなものだって言ったら、笑う?」
「内容による」
即答だった。変に慰めないところが、かえってありがたかった。
サベリオは言葉を選びながら、ここ数日のことをぼかして話した。祭りの夜に危ないことが起きる気がしていること。先回りしようとしても、別の場所で破綻すること。うまく説明できないのに、失敗の手触りだけは何度でも思い出せること。
全部は話していない。それでも口に出してしまうと、自分がどれほど怯えていたのかがわかった。
ミゲロは最後まで口を挟まずに聞いて、それから腕を組んだ。
「正直に言うと、半分くらいしかわからない」
「だよな」
「でも、冗談でそんな顔にはならない」
その一言で、喉の奥が熱くなった。
「一人で抱える顔じゃないぞ」
ミゲロは木箱の上に腰かけ、サベリオを見上げた。
「おまえ、もともと人の荷物を勝手に半分持つだろ。自分の荷物だけ抱え込むの、変だ」
「変って」
「変だよ。だから分けろ」
言い方はいつも通りぶっきらぼうなのに、不思議と胸にまっすぐ入ってきた。
サベリオはようやく息を吐いた。
「……じゃあ、少しだけ手伝って」
「少しじゃ足りない顔だな」
「じゃあ、かなり」
「よし」
ミゲロは立ち上がり、肩を軽くぶつけてきた。
「未来を知ってるみたいな顔の整備見習いさん。まず何からやる?」
サベリオはその軽さに救われながら、初めて自分ひとりではない朝を迎えた気がした。