TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

二人はカフェから戻ると、仲良く並んでキッチンで夕食の準備を始めた。

それを見た航太郎は、ふとこんな風に思った。




(あれ? なんかあったのかな?)




二人のぎこちなさはすっかり消え、まるで昔からの知り合いのように自然に会話をしている。それを見た航太郎は、思い切って二人に問いかけてみた。




「ねぇねぇ、今日、なんかあったの?」

「え? どうして?」

「うん、なんか二人が仲いいから」




航太郎の言葉を聞いた二人は、目を見合わせてフフッと笑った。




「今日ね、看病のお礼に桐生さんが会社まで迎えに来てくれたの」

「そうだったんだ。でも、それだけじゃないでしょ?」




子供の勘は鋭い。

葉月は仕方なく、『パフェ』のことを伏せつつ、カフェに寄ったことを白状した。




「帰りに『grandswell』に寄って、コーヒーを飲んで来たの」

「なんだ、そうだったんだ」

「あそこのロコモコ美味いんだって?」




賢太郎がたまねぎを切りながら聞いた。




「そうだよ! ムッチャ美味しいよ!」

「じゃあ、今度三人で食べに行くか! 俺も食べてみたいからさ」

「いいよ、みんなで行こうよ!」




航太郎は嬉しそうだ。




その夜のメニューは、賢太郎特製の生姜焼きだった。

太めに切った玉ねぎと、たっぷりのニンニクが入った賢太郎の生姜焼きは、いつもの生姜焼きとはひと味違う。

生姜焼きの横には、山盛りの千切りキャベツが添えられ、見た目のボリュームも満点で、航太郎にも大好評だった。




「すげー、母ちゃんのとはまたひと味違って、めちゃくちゃ美味い!」




あまりの美味しさに、航太郎はご飯をおかわりした。




食事が終わると、賢太郎は航太郎の勉強を見に、二階へ上がって行った。

その間に、葉月は片付けをする。

食器を食洗器に入れながら、葉月は三人での夕食風景を思い返していた。



賢太郎がいる食卓は、違和感がまったくなかった。

あまりにも自然だったので、まるで昔から三人で食事をしてきたかのような錯覚さえ覚えた。




(何でかな? 不思議ね……)




そんな風に考えながら、葉月は片付けを続けた。




二時間ほどすると、ようやく賢太郎が降りてきた。

家庭教師を引き受けてくれた賢太郎のために、葉月はコーヒーを淹れる。




「ごめんねー、病み上がりなのに」

「大丈夫だよ。それより、航太郎が俺の母校の大学へ行きたいって言ったから、驚いちゃったよ」

「そうなの。あなたと知り合う前から言ってるの」

「中学の時から行きたい大学があるなんて、すごいよな。俺なんか高校に入ってから決めたのにさ」

「なんか、やりたいことがあるみたい。でも、あの大学って難しいでしょう? 塾なしでも大丈夫なのかなぁ?」

「航太郎は地頭がいいから、高校に入ってから考えれば大丈夫なんじゃない?」

「そう?」




葉月はそう返事をしながら淹れたてのコーヒーを持っていった。




「ありがとう」




賢太郎はコーヒーを一口飲んだ。



その時、航太郎が二階から降りてきて、二人に言った。




「先にお風呂に入ってもいい?」

「いいけど、何かあるの?」

「今夜流星と話す約束をしてるから」

「あ、そうか。もうすぐ長野だもんね」

「うん。じゃあお先に!」




航太郎はそう言って、バスルームへ向かった。




「長野って、佐伯さん?」

「そう。夏休みに入ってすぐの5日間、あの子、佐伯さんのお宅でお世話になるのよ」

「へぇ……」

「去年もお世話になったんだけど、今年は佐伯さんが山でのキャンプにも連れて行ってくれるみたい」

「それは楽しそうだなー。絶対いい経験になるよ」

「私もそう思う」

「で、その間、葉月は?」

「え? 私はいつも通り仕事よ」

「夏休みはないの?」

「うーん、夏休みは8月に入ってからかなー」

「そっか。仕事なら仕方ないなー。じゃあ航太郎がいない間は、仕事帰りに俺とデートしよっか?」

「え?」

「お互いのすべてを知るためには、二人だけの時間が必要だろう?」

「す、すべて……?」




まさかそんな提案をされるとは思ってもいなかったので、葉月は言葉に詰まってしまう。




「お? 今エッチなこと考えた?」




賢太郎がからかうように言ったので、葉月はムキになって言い返した。




「そ、そんなこと、考えてないわ!」

「ムキになってるってことは、やっぱり考えてただろう?」

「違います! 考えてませーん!」

「あやしい……」

「本当だってば!」





顔を真っ赤にして怒った葉月は、持っていたカップをテーブルに置くと、そばにあったクッションをつかんで勢いよく賢太郎に投げた。

しかし、賢太郎はそれを軽々片手でキャッチした。





「コーヒーこぼれちゃうよ」

「だって、からかうんだもん」

「からかってないよ、思ったことを言っただけだよ」




すると葉月は、再びもう一つのクッションを賢太郎めがけて投げつける。

それも見事にキャッチすると、賢太郎は腹を抱えて笑い始めた。




「アハハハ、葉月をからかうと面白いな」

「からかわないでっ!」

「あー、腹痛い……こんなに笑ったのは久しぶりだよ」

「明日、お腹が筋肉痛になって苦しめばいいのにっ!」




葉月はまだぷりぷりと怒っている。

それを見た賢太郎が、穏やかに言った。




「はいはい、俺が悪かったですー」

「いいかげんにして! もう年上をからかわないでよ!」

「あ、また歳のこと言った」

「だって、私が年上なのは事実だもん」

「ほら、そうやって拗ねるから、ついからかいたくなっちゃうんだよ」

「これは私の性格だから、しょうがないんですぅー」




思いっきり拗ねた口調で言った葉月は、自分でも可笑しくなりつい笑い出した。

それにつられて、賢太郎も声を上げて笑う。

リビングには、大人二人の楽しそうな笑い声が響いていた。




その時、洗面所のドアが少し開いた。

ドアの隙間からは、航太郎が聞き耳を立てている。





「よしよし、その調子! イイ感じだぞー! 二人には、もっと仲良くなってもらわないと……」





航太郎は小さな声で呟くと、二人に聞こえないようにそーっとドアを閉めた。





(あとで流星に報告しないと!)





航太郎はニヤリと笑うと、口笛を吹きながら服を脱いでバスルームへ向かった。

恋人の条件 ~恋に懲りたシングルマザーですがなぜか急にモテ期がきました~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,163

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚