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翌朝は、朝から小雨が降っていた。

雨が降るのは久しぶりだった。

詩帆は朝のスケッチは中止にして、久しぶりにのんびりした朝を過ごした。


詩帆はバイト先で購入したお気に入りのコーヒー豆を挽いて、丁寧にコーヒーを入れる。

すると部屋中にコーヒーの良い香りが広がった。

トーストにハムとチーズを載せてただけの簡単な朝食を済ませ、

二杯目のコーヒーを飲みながら携帯のアドレス帳を開く。

そして詩帆は加藤のアドレスを削除した。

その瞬間少し心がすっきりしたような気がした。


今日のバイトのシフトは午後一時からの遅番だったので、

詩帆は掃除と洗濯を済ませた後、久しぶりに部屋で絵を描く事にした。


画材が置いてある机の椅子に座ると、いつもの水彩絵の具ではなく

アクリル絵の具で描く事にする。

詩帆は美大のグラフィックデザイン科を卒業していたので、

学生時代は主にアクリル絵の具をよく使っていた。

折りたたんでいたイーゼルを取り出すした詩帆は、その上にF10サイズのキャンバスを載せて絵を描き始めた。


スマホで撮った写真を見ながら、出来るだけ実際に見たイメージに近くなるように描く。

集中しているとあっという間に二時間が経過していた。


詩帆は作業を中断すると、軽く昼食を済ませてからバイトへ行く準備を始める。

支度が整うと、アパートを出てカフェへ向かった。



その頃、涼平は事務所で昼の休憩を取っていた。

涼平が食後のコーヒーを飲んでいると二歳年下の佐野が聞いた。


「そういえば涼平さん、最近玲子さん見かけないっすねぇ。前は飲み会に来たりサーフィンを見に来たりしていたのに」


すると傍にいた加納も言う。


「そう言えばそうだな。彼女には引っ越し先教えたんだろう?」

「教えてないです」


涼平の言葉を聞いた加納と佐野が驚いた。


「え? お前ら付き合ってたんじゃなかったのか?」

「付き合ってはいないです。でも引っ越しを機にけじめをつけました」


涼平の言葉を聞き、もう一度二人は顔を見合わせる。

そこで佐野が言った。


「だって玲子さん、涼平さんにぞっこんだったじゃないですか」

「いや、あれはそんなんじゃないですから」


涼平が言葉を濁すと、加納が茶化すように言った。


「お前は悪い男だねぇー。そんなんじゃ、いつか世界中の女を敵に回すぞ!」

「モテる男は罪っすねぇー」


佐野までが涼平をからかう。

すると涼平は少しムッとして言った。


「俺は運命の人を待っているんです」


涼平がそんな事を言ったので、また二人は驚いた顔をする。


「運命って……。お前、菜々子ちゃん以上の人を見つけようったってそれは無理だぞ」

「そうっすよ、菜々子さんは涼平先輩にはもったいないくらいの人だったですからねぇ」


「いや、俺は絶対に運命の人と出逢ってみせますよ。せっかくこの地に越して来たんですから!」


涼平はきっぱりそう言うと、穏やかに微笑んだ。


加納はそんな涼平を見て、少しホッとしていた。


実は加納は涼平の事をとても心配していた。

涼平は6年前に婚約者を事故で失って以来、一時期見ていられない程弱っていた時期があった。

何に対しても無気力で、大好きなサーフィンからも足が遠のいていた。


しかしここ数年はだいぶ元気になりサーフィンも復活した。

けれど恋愛に関してだけは、いつもどこか刹那的で長く続いたためしがない。

だから加納は、きっと玲子とも身体だけの関係だろうと察しはついていた。


その玲子とはきっちりけじめをつけたと涼平が言ったので驚いていた。

しかしそれは何かの良い兆候のような気がしている。

もしかしたら涼平は、真剣に恋人を作ろうとしているのではないか?

そんな風に思えたのだ。


「運命の人に出逢えるといいな……」


加納は一言そう言って、微笑みながら自分のデスクへ戻って行った。

セルリアンブルーの夜明け

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コメント

2

ユーザー

すべてをリセットして心機一転、新しい場所での生活をスタートさせた涼平さん🌊✨ .運命の人はきっと すぐ近くに....⁉️🍀

ユーザー

加納さんは6年前の菜々子さんとの事も知ってて涼平さんのことを見守っていたんですね…見てられない時も多々あったと思うから、ようやく…と思うと感無量ですね🥹まだ本気の入り口に差し掛かったように見えるけど漠然とだけどターゲットはあるようですよ🥹🌷

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