テラーノベル
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※質問コーナー。
「好きな言葉ってありますか?」
蓮司
「さて、今夜の質問はこちら~」
「“好きな言葉ってありますか?”――高2女子より」
「……これは深いね。
刺青に入れたくなるくらいのやつ言わないと恥ずかしいやつ」
日下部
「いやいや、そんな重く考えなくていいだろ」
「うーん……オレは“だいじょうぶ”って言葉、けっこう好きかも」
蓮司
「わぁ、やさしいやつ来た」
「“だいじょうぶ”って、ほんとは誰に言われてもだいじょうぶになれないやつね」
「でも、誰かに言うために使うの、わかる。日下部らしい」
遥
「……“いらない”」
(ぽつりと)
「たぶん……小さいころ、ずっと欲しかった言葉だった」
日下部
「……それ、遥……」
蓮司
「“いらない”を欲しかった。
なんか……詩人だな。やっぱお前、ひと味ちがう」
遥
「褒めてんのかけなしてんのかわかんねぇ」
(でも少しだけ声がゆるむ)
日下部
「蓮司は?」
蓮司
「オレはね、“境界”って言葉、好きだな」
「どこまでが自分で、どこからが他人か、
ここからが冗談で、ここからが本気か、
……そういうの、曖昧にしといたほうが楽だから」
遥
「……だからおまえ、いつも逃げんだよ」
蓮司
「そう。逃げ道にしてんの。
でも、言葉ってそういうもんでしょ。
剣にも盾にも、嘘にも本音にもなる」
日下部
「……なんか、今日だけちょっと、
静かで、いいな」
蓮司
「うん、でもたぶん明日には全部忘れてる」
「そういうのも、また言葉らしくて、いいでしょ」
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