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店を出た三人は、省吾の車で美樹の自宅へ向かった。

途中、地元で人気のケーキ店で手土産を買って行く。


美樹の自宅は、真白な窓枠がアクセントになったレンガ造りのお洒落な戸建てだった。



「ただいま~」

「「おかえりー」」



二人の男性が玄関まで来る。

出迎えたのは、美樹の夫・賢一(けんいち)と息子の冬真(とうま)だった。



「省吾君いらっしゃい、久しぶりだねー」

「おじちゃんいらっしゃい!」

「義兄さんご無沙汰です。冬真はまた一段と背が伸びたなぁ」



そこで美樹が奈緒に家族を紹介する。



「夫の賢一と息子の冬真よ」

「初めまして、麻生奈緒と申します」

「いらっしゃい!」

「お会い出来るのを楽しみにしていましたよ。さぁ、どうぞ中へ」




賢一は白いシャツにグレーのパンツ姿の紳士的な男性だった。

省吾の甥の冬真は、明るく染めた髪にパーマがかかっている。

顔は省吾に似ていてかなりのイケメンだ。かなりモテるだろう。



リビングへ行った奈緒はその広さに驚く。開放感溢れるリビングだ。

大きなガラス窓からは芝生の庭が見えた。窓辺にはゆったりと座れる白いソファーがある。

キッチンとダイニングの境にはアイランドカウンターがあり、その傍にはガラス製のスタイリッシュなテーブルが置かれている。なんともお洒落だ。

室内は白を基調としていたので、部屋全体がとても明るい。



そこで賢一が言った。



「もう料理は出来ているから、ダイニングテーブルに座ってもらおうかな」



座る前に、奈緒は途中で買って来たお土産のケーキを賢一に渡した。

それを見た冬真が叫ぶ。



「やった! 『シェ・シノヅカ』のケーキだ!」



冬真が満面の笑みで喜んでいる。笑うと更に省吾に似ていた。



「ありがとう。後でみんなでいただきましょう」



賢一は笑顔で言うと、早速料理を運び始めた。



「では皆様お揃いなので、ケンイチスペシャルコースを始めますよ~。まずはスープから」



賢一はシェフエプロンをキュッと締めると、弱火で温めていたスープをスープ皿に入れて運んでくる。



「手伝わなくてもいい?」

「大丈夫だ。君は疲れているんだから、ゆっくりしなさい」



皆の前にコンソメスープが運ばれると早速スプーンをつける。



「うわっ、すごく美味しい!」



奈緒が感激していると、省吾も頷きながら言った。



「本当に美味いな」

「お父さんの料理の腕前はプロ級でしょう? そのうちきっとレストランを開くって言い始めるよ」



冬真が真顔で言ったので、大人達が笑う。



「確かに店もやってみたいけど、そうなると本業の方がおろそかになっちゃうからなぁ……だから今は無理だろうなぁ」



賢一の言葉にまた笑い声が響く。

あたたかい雰囲気での食事会は、奈緒の緊張をあっという間に解きほぐしていった。


その後美味しいメニューは続く。


●ホタテのカルパッチョ

●生野菜のサラダ

●チキンのポワレ ハニーマスタードソース

●フランスパン


どれも素晴らしい味で、短時間でここまで本格的な料理を作る賢一に奈緒は脱帽していた。



「ほんとレストランに来たみたいだなぁ。なんか金を払わないと悪い気がしてきたよ」

「あら、だったら払ってくれてもいいのよ」

「おいおい、身内からむしり取ってどうする?」



そこでまた笑いが湧き起こる。

奈緒は省吾が姉の美樹と楽しそうに話す様子を、微笑みながら見つめていた。



食後はソファーへ移動し、ケーキを食べながら談笑する。



「そうかぁ、二人はあの大雪の日に海で出会ったのかぁ」

「うん。三月の爆弾低気圧の日だったからはっきり覚えてるよ」

「ほんと、あの時の雪はすごかったですよね」

「で、奈緒ちゃんは海で何を探していたの?」



美樹の質問にドキッとした奈緒は、なんと答えようか悩む。

そこで省吾が助け舟を出してくれる。



「奈緒は指輪を落としたんだよな? たしかボーナスで買ったやつだったっけ?」



省吾が上手く誤魔化してくれたので、奈緒は話を合わせる。



「え? ええ、そうなんです」

「あらぁ~、せっかく自分へご褒美で買ったのになくしちゃったのぉ?」

「でも安物でしたから」

「で、結局見つからなかったんでしょう?」

「はい」

「それは残念だったわねー」



そこで賢一が奈緒に言った。



「指輪っていうのはね、意志を持ってるって知ってる?」

「意志ですか?」

「そう。だからもうその人に用がなくなった~ってなると突然姿を消すんです」

「そうなんですか?」



奈緒は賢一の話に興味を持つ。



「そう。うちに来るお客さんの中にも、僕と同じ事を言う人が結構いるんですよ。ある日突然無くしたり、無くしたと思ったら突然意外な場所から出て来たりってね。ほんと不思議だよねぇ」



すると今度は美樹が言った。



「宝石って役目を終えたり持ち主に何かを知らせたい時に、突然色が変わったり割れたりする事もあるらしいわ。前にお客さんから聞いたんだけど、ある日突然指輪の色が変わったので不思議に思っていたら、ドロドロに揉めてなかなか決着がつかなかった離婚調停がいきなり解決したんですって。それも自分に有利なように」

「へぇ……、そんな事ってあるんですね」

「そうよ。だから指輪がお守りになるっていうのは本当よ。奈緒ちゃんの事はそのルビーがきっと守ってくれるはず!」

「はい。私もお守りが出来て嬉しいです。大事にします」



奈緒は穏やかに微笑むと、左手の指輪とブレスレットを愛おしそうに撫でた。

そこでまた賢一がおどけて言う。



「お守りはいくつあっても困る物ではないので、新しいお守りがご入用になりましたら是非うちのお店へお越し下さいませ~」

「お父さんったら、ちゃっかりしてるな!」



冬真の言葉に、また大人四人が声を出して笑った。

銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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