デパートを後にした二人は自由ヶ丘へ立ち寄る事にした。
俊の友人・真田信一が夫婦でやっているカフェを見学させてもらう為だ。ちょうどティータイムを過ぎた時間帯なので店も空いてくるだろう。
自由ヶ丘へ着くと駐車場に車を停めてから二人はすぐにカフェに向かった。
「こんにちは」
「よぉ俊、待ってたぞ!」
「俊さんいらっしゃい!」
二人が店に入った瞬間すぐに真田夫妻が声をかけた。
「また来たよ。あ、こちらは浅井雪子さん。これから鎌倉の自宅でカフェを開こうと計画中なんだ」
「はじめまして、浅井と申します」
雪子は笑顔で迎えてくれた真田夫妻に挨拶をした。
「ようこそいらっしゃい!」
「初めまして、信一の妻の真知子です。雪子さんにお会いできるのを楽しみにしていました」
「どうぞこちらへ座って下さい。今コーヒーをお持ちいたしますから」
信一は早速コーヒーの準備をしに行き俊と女性2人が窓際の席へ座った。
「素敵なお店ですね。フレンチカントリー風? 懐かしい雑貨がいっぱいあってとても素敵です」
「あ、わかります? もしかして雪子さんもフレンチカントリー派?」
「はい。昔から凄く好きで少しずつ雑貨を集めていました」
「そうなの? うわぁ嬉しい! カントリーって今流行っていないでしょう? だから若い人に言ってもわからないのよね。話が合う人が出来て嬉しいわ」
真知子は心から嬉しそうだ。すると雪子は窓辺に飾ってあるバラの模様のカップを見て真知子に聞いた。
「これはマリーですよね?」
「そうよ、さすがよくご存知! 私マリーが大好きなの!」
「私もです。家にはほんの少ししかありませんが」
雪子はマリーの雑貨が溢れた店内を見て嬉しそうに目をキラキラさせている。
「フフッ、昔は私もパートに出ていてね、そのお給料の一部でコツコツ買い集めたのよ。今はマリーを扱っている店がぐんと減っちゃったから買っておいて正解だったわ」
「確かに! 今なかなか売っていないですよね。ネットで探しても見つからなくて……また少しずつ集めたいって思っているのに」
「ほんとほんと! 昔は自由ヶ丘にも取り扱っている店がいっぱいあったのに今はそういう店も閉店が相次いじゃってねぇ」
「あっ、そういえば『カントリー1938』ってもう閉店しちゃったんですよね?」
「うん、だいぶ前にオーナーさんがたたんじゃったのよ。あのお店はアンティークの種類が豊富だったから凄く残念」
「私、昔あそこの2階でドライフラワーアレンジを習っていたんです」
「えっ? 本当に? 私もよ!」
「えっ? そうなんですか? いつ頃ですか?」
二人が夢中で会話する様子を見て俊は微笑んでいた。どうやら雪子と真知子の趣味は一緒らしい。二人は共通の話題で延々とお喋りを続けていた。
二人がお喋りに夢中になっている間俊は進一がいるバックヤードへ入って行った。
小さな厨房ではコーヒーの準備を終えた信一がカップをトレーに載せている所だった。
「これ持って行ってくれよ」
「ああ」
「それにしても、随分可愛らしい彼女じゃないか。なんか今までとはタイプが違うな?」
「そうかもしれない」
「清楚で控えめな感じが誰かに似ているなって思ったら今思い出したよ! 和久井奈見だ! お前大学時代好きだったもんなぁ」
「ハハッ、バレたか」
「いい人と巡り会ったな」
「うん、思い切って鎌倉に移り住んで良かったよ」
「ほんとタイミングってあるんだなー。出会いも、移住も……」
信一はしみじみと言った。
男性陣がケーキとコーヒーを持って来た事に気づいた女性二人は漸くお喋りを止めた。
「おいおい、随分意気投合しちゃってるじゃないの」
「だって、趣味が一緒なんだもん! 好きな雑貨の話だったら一晩中でも話せそう」
真知子が言うと雪子もうんうんと頷く。
雪子と真知子は歳は8つ離れているがほぼ同じ時代を生きて来た者同士色々と話が合うようだ。
ケーキを食べながら雑貨の話で盛り上がった後、二人はカフェの店内を歩き回りあちこちに置いてある雑貨を手に取ってまたお喋りを始める。雪子は店内の所々を指差してリフォームに関する質問もしているようだった。それに対し真知子は丁寧に説明をしている。その後二人はカフェのバックヤードにも入って行った。厨房も見学させてもらうらしい。
漸く二人が戻って来た所で今度は四人でカフェ作りについての話を始めた。
雪子が疑問に思っていた点、心配している点などを真田夫妻に質問すると細かく説明してくれた。
話せば話すほど雪子の心の中にあった不安は取り除かれていった。
とにかく真田夫妻はカフェ経営を楽しんでいる。その前向きな姿がとても素敵だなと雪子は思った。
真知子が一人で開拓して仕入れが可能となったガトーショコラは、甘さが控えめでしっとりしていてとても美味しい。
雪子はケーキ店と取引を始めるに当たり真知子がどうやったかを一通り教えてもらった。
夢中になって色々話しているとあっという間に2時間が過ぎていた。
外はすっかり暗くなっている。
俊と雪子はそろそろ鎌倉へ戻る事にした。
別れ際真田夫妻が言った。
「鎌倉のカフェがオープンしたら遊びに行きますから!」
「是非! お待ちしています」
雪子は笑顔で答えると俊と共に店を後にした。
コメント
2件
俊さんのお陰で無事本店襲来も勝利🏅を収めて心もスッキリ気持ちよく本店を後にした雪子さん👋 この後は俊さんの友人の真田夫妻のカフェで趣味〜カフェオープンの実際のお話を聞けてこれから先親交を深めれそう🍀 本当にお疲れさまでした、雪子さん&俊さん💕 さてこの後のご予定、美味しいディナー🍽️と…ムフフ(*≧∀≦*)💦💕❤️🔥
スッキリした後のカフェ訪問☕️気持ちもゆとりがあり有意義の時間で、活力が漲ってる雪子さん。 自分のカフェオープンに向かって真っしぐらですね〜✨ 真田夫婦ともこれからも親交が深まりそうだし、今日のいざ🚩東京へ👉は大勝利✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。 俊さん♡勝利のディナーは???