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#王子
すっこ
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#主人公最強
杯雪乃
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どちらか一人だけを、娘として残す。
母の字だった。
送られてきた写真には、
十四歳の私と、
赤いランドセルの少女。
私はずっと、
その子が相原奈緒の娘――篠宮ひかりだと思っていた。
十五年前に七歳。
私より七歳下。
父もそう言った。
榊原美佐子もそう言った。
なのに、
認知届に記された生年月日は、
私とまったく同じだった。
五月十七日。
出生年まで同じ。
「この戸籍が偽物なんでしょう?」
私は真壁刑事に訊いた。
「まだ断定できません」
「だって、ひかりさんは七歳下なんですよ」
父が目を逸らした。
その動きを、
私は見逃さなかった。
「父さん」
「……」
「何で今、目を逸らしたの」
「何でもない」
「嘘」
十二年ぶりに会った父は、
何度も私に嘘をついている。
守るため。
巻き込まないため。
何度もそう言って。
「ひかりさん、本当に私より七歳下なの?」
父は答えなかった。
「答えて」
「澪」
「今度嘘をついたら、もう何も信じない」
長い沈黙。
父はようやく言った。
「同い年だ」
私は息を止めた。
「……何?」
「ひかりは、お前と同い年だ」
頭の中が真っ白になった。
「でも父さん、十二年前に十歳だったって」
「嘘をついた」
「榊原さんも、十五年前に七歳だったって」
「美佐子にも、そう言うよう頼んだ」
「誰が?」
「俺だ」
怒りより先に、
理解できなかった。
「何のために?」
「年齢を知られたくなかった」
「誰に」
父が私を見る。
「お前に」
私?
「どうして私に隠す必要があるの」
答えない。
私はテーブルにあった、
赤いランドセルの少女の写真を取った。
「じゃあ、この子は?」
「ひかりだ」
「七歳に見える」
「七歳のときの写真だからだ」
私は止まった。
「……いつ撮ったの?」
父は答えなかった。
写真を裏返す。
母の字。
七歳。
奈緒の娘。
私は勝手に思っていた。
十五年前に母が集めた資料の中から出てきた。
だから、
十五年前に撮られた写真だと。
でも。
どこにも、
撮影日は書かれていない。
「真壁さん」
「はい」
「この写真、いつのものか調べられますか」
真壁が写真を確認する。
裏面の端に、
小さな印字がある。
写真店の管理番号。
そして、
薄く消えかけた日付。
私は目を凝らした。
十五年前ではない。
二十二年前。
七歳。
二十二年前。
今、
二十九歳。
計算が合う。
ひかりは、
本当に私と同い年だった。
「じゃあ、十五年前は十四歳……」
私と同じ。
父が目を閉じる。
「そうだ」
「私とひかりさん、二人とも十四歳だった?」
「ああ」
「二人は会ってた?」
父は答えない。
私は思い出した。
母が血まみれで帰ってきた夜。
何度もかかってきた、
知らない女からの電話。
そして、
思い出せない空白。
「私、ひかりさんを知ってた?」
父の顔が変わった。
それが答えだった。
「知ってたんだ」
「……少しだけ」
「どこで会ったの」
「家だ」
私は周囲を見る。
母の家。
ここ。
「ひかりさん、この家に来てた?」
「ああ」
「何回」
「何度か」
「どうして私は覚えてないの」
「千佳に忘れろと言われたからだ」
またそれ。
「母に言われただけで記憶なんて消えない」
「なら、なぜ覚えてない」
答えられなかった。
前にも同じだった。
死亡通知。
十四歳の私は触っていた。
読んでいた。
それなのに、
忘れていた。
「写真」
私はスマートフォンを見る。
さっき送られてきた、
十四歳の私と、
七歳の少女が並んだ写真。
「これ、おかしい」
真壁が見る。
「何がです?」
「ひかりさんが私と同い年なら、この写真は成立しない」
十四歳の私。
七歳のひかり。
同じ場所。
同じ瞬間。
あり得ない。
真壁が画像を拡大した。
しばらく見たあと、
「合成ですね」
と言った。
「え?」
「精巧ですが、二枚の写真を重ねています」
父が立ち上がる。
「誰がそんなものを」
「送ってきた本人でしょう」
私は背筋が冷たくなった。
電話の女は、
わざと私に、
ひかりが七歳下だと思わせていた。
父も。
榊原も。
そして写真まで。
全員が、
ひかりの本当の年齢を隠そうとしていた。
「どうして」
私は父を見る。
「同い年だと、何が困るの?」
父は口を閉じた。
「五月十七日」
私は続ける。
「誕生日まで同じ」
「……」
「出生年も同じ」
「……」
「それだけじゃないんでしょう?」
父の手が震えた。
「澪」
「何」
「もうやめろ」
「やめない」
「これは千佳が一番隠したかったことだ」
「母は死んだ」
私は言った。
「もう母の秘密を守るために、生きてる人間が死ぬのは嫌」
父は何も言えなかった。
真壁が資料を見ている。
「水城さん」
「はい」
「篠宮ひかりさんについて、別の記録が見つかりました」
「何ですか」
「児童養護施設の古い入所記録です」
画面を見せてもらう。
篠宮ひかり。
入所時年齢。
七歳。
入所日。
二十二年前。
間違いない。
「母親は?」
相原奈緒。
「やっぱり奈緒さんの娘……」
その下。
生年月日。
私と同じ。
五月十七日。
さらに、
出生地。
岸本総合病院。
私は顔を上げた。
「私もです」
母子手帳に書かれていた。
私は岸本総合病院で生まれた。
同じ日。
同じ病院。
「偶然じゃない」
私は呟いた。
真壁も否定しなかった。
「出生記録を確認できますか」
「すでに病院へ照会しています」
父が突然言った。
「やめろ」
真壁が見る。
「なぜです」
「そこを調べるな」
「理由は?」
父の顔から血の気が消えている。
「雅彦さん」
私は立ち上がった。
「何を知ってるの」
「澪」
「私とひかりさんは、同じ日に同じ病院で生まれた」
「……」
「二人の出生届はどちらもおかしい」
「……」
「母はそれを知ってた」
父がゆっくり座り込んだ。
そのとき、
真壁のスマートフォンが鳴った。
病院からだった。
「はい」
真壁の表情が、
少しずつ変わっていく。
「二人ともですか?」
私は息を止めた。
「……分かりました」
通話が終わる。
「何が分かったんです」
真壁はすぐには答えなかった。
「真壁さん」
「二十九年前の五月十七日」
彼は言った。
「岸本総合病院には、水城千佳さんと相原奈緒さん、二人の出産記録があります」
私は父を見る。
父は俯いたまま。
「じゃあ私とひかりさんは、同じ日に生まれた」
「はい」
「何がおかしいんですか」
真壁は続けた。
「出産した女性は二人」
水城千佳。
相原奈緒。
「ところが」
一度言葉を切った。
「新生児室の記録では、その日に生まれた女児は一人しかいない」
耳鳴りがした。
「一人?」
「はい」
「そんなはずない」
二人の母親。
二人の娘。
同じ誕生日。
でも、
病院の記録に残っている赤ん坊は、
一人だけ。
私は父を見る。
「父さん」
父は目を閉じた。
「どっちなの」
「……」
「その赤ちゃんは」
声が震えた。
「私なの?」
父は答えなかった。
「それとも、ひかりさんなの?」
長い沈黙のあと、
父は呟いた。
「それを調べたから――」
顔を上げた。
「千佳と奈緒は、二十九年前からお互いの家族を知っていたんだ」
コメント
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うわあああああ第25話マジでやばかった……!!😭✨ 「同い年だ」の衝撃から始まって、同じ病院・同じ誕生日なのに新生児は一人だけって、もう頭が追いつかないよ…!!澪ちゃんの「私なの?それともひかりさんなの?」って問いかけ、震えたよ。そして父が最後に言った「それを調べたから――」からの29年前の繋がり、怖すぎるんだけど続きが気になりすぎて今夜眠れそうにない…!!次回も待ってます🔥📖