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14話 10024スポット カナの部屋
扉が静かに閉まる。
音が残らない。
床は均一で、
足裏に感触が返ってこない。
リカは、
少しだけ周囲を見る。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
慣れた靴。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
小さく揺れる。
「久しぶり」
声は軽い。
カナは、
動きやすそうな服。
髪はまとめすぎず、
肩に自然に落ちている。
鞄の横で、
ぬいぐるみほどのサルが
ゆっくり揺れていた。
窓が大きい。
外は遠く、
下の動きが
ほとんど見えない。
部屋は整っている。
物は少なく、
配置に迷いがない。
座る場所も、
立つ場所も、
最初から決まっている感じ。
リカは、
ソファに腰を下ろす。
沈み込みはちょうどいい。
「慣れた?」
そう聞かれて、
カナは頷く。
「楽だよ」
簡単な言葉。
お茶を出す動きも、
無駄がない。
二人で飲む。
味は濃くも薄くもない。
話すのは、
学校のこと。
移動のこと。
最近のこと。
少しの間、
気にならない。
でも、
時計を見る回数が増える。
リカは、
自分でも気づく。
居心地はいい。
温度も、
音も、
距離も。
それなのに、
身体が長く留まる気がしない。
窓の外を見る。
景色は変わらない。
「そろそろ帰るね」
自然に出た言葉。
カナは、
少しだけ眉を上げて、
すぐに笑う。
「早いね」
「うん」
それ以上は、
言わない。
玄関まで見送られる。
扉の前で、
サルのキーホルダーが
小さく揺れる。
「またね」
「また」
四次元装置を操作する。
番号を入れる。
確定。
表示を見た瞬間、
胸の奥が
ゆるむ。
高いところは、
嫌いじゃない。
でも、
長くいる場所でもない。
リカは、
そう思いながら
戻っていった。