テラーノベル
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翌朝真子は、いつものように工房に出勤した。すると美桜は先に来ていた。
「真子おはよ! 昨日婚約指輪を買いに行ったんだよね? どうだった?」
「おはよう! 指輪買ってもらったよ…コレ……」
真子は美桜に指輪を見せる。
すると美桜は真子の手を握って間近でじっくり指輪を見つめる。
「えー凄く可愛いくて素敵! へぇー今こんな個性的な指輪があるんだねー!」
美桜はそのデザインを見て感動しているようだった。
「そう。たまたまお店にこれがあって一目惚れしちゃった」
「確か二人が再会した夜は満月だったもんねぇ。で、プロポーズも星空の下でだったよね? だから月と星かぁ。素敵ー、指輪に思い出が刻まれているなんて最高だわ! 良かったねー真子、婚約おめでとう!」
美桜は親友の婚約を心から喜んでくれている様子だった。
「うん、美桜ありがとう!」
それから真子は、昨日秋子に言われたように今後についての事を
を美桜に話そうと思い重い口を開いた。
「あのさ、美桜…話があるんだけれど……」
「工房の件は心配しなくて大丈夫だよ。だから真子は安心して拓さんについて行きなよ」
突然真子の話を遮るように美桜が言ったので、真子はびっくりして目を見開いた。
「美桜、どうしてわかったの?」
「真子の顔に全部書いてあるよ」
「!」
「アハハ……真子はすぐ気持ちが顔に出るからねー」
美桜はそう言って笑った。
「美桜ーっ!」
真子は駆け寄って美桜に抱き着く。
すると美桜は真子をしっかりと受け止めて背中をトントンと叩いた。
今日の教室は午後からだったので、二人はコーヒーを入れてから向かい合って座る。
そして話を始めた。
美桜は、真子が拓と再会したと知った時から、いずれこんな日が来るかもと予測していたと言った。
真子の事だからきっと工房の事を心配して神奈川へ帰るのをためらうだろうとも予想していた。
だから、もし真子が工房の為に神奈川へは帰らないと言ったら真子を説得するつもりだったとも言った。
それを聞いた真子は涙ぐみながら美桜に言った。
「美桜、ごめんね…中途半端に投げ出す事になってしまって…本当にごめんなさい」
「ううん、気にしないで。もし自分が真子の立場だったら同じ思いだったと思うから。それにね、私実は一つやりたい事を見つけたんだ」
美桜はそう言ってフフッと笑う。
「やりたい事? それって何?」
「実はさ…羊がいる牧場で働こうと思うの」
「羊?」
「うん、そう、一度イチから全部やってみたいのよ。羊を飼育する所から始めて毛刈りでしょう? で、自分で刈った毛を紡いで染めて、そして作品を作るの。実は前からちょっと思ってたんだよね。これってさ…若いうちしか出来ないじゃない? そう思ったら今がチャンスかなーって。そう思えたのも真子のお陰だよ。真子が拓さんと再会したから、私も次のステップへ進もうって思えたんだよね。だからね、逆に真子には感謝しているんだ」
美桜はそう言って微笑んだ。
「美桜……」
「あとね、私、深谷君と付き合う事にしたよ」
「えっ?」
真子は急に美桜がそんな事を言ったのでびっくりしていた。
「ふ、深谷君と?」
「そう」
「え? びっくり! いつのまにそんな展開に?」
「昨日彼とドライブに行ったんだ。でその時に付き合ってって言われた」
真子は驚いていた。
まさか二人がそんな事になっているとは全然気付かなかったからだ。
「そうだったのー? ちょっと驚き過ぎて心臓ドキドキだよ。あ、だから沈着冷静型の人って…..そっか、深谷君の事だったんだ! なるほど納得だわ。深谷君は沈着冷静型で思慮深いもんね。それと違って美桜は猪突猛進型だから…意外といい組み合わせかも? えーそうなんだーなんか嬉しい」
「私もさ、まさか急にこんな事になってびっくりよ! でもさ、なんか物事を前向きに捉えるとスルスル―ッと急に上手くいくんだなって。おまけによ、深谷君の親戚が羊の農場をやってるんだって。で、そこを紹介してくれる事になったんだよ」
「あー、それで農場…」
「うん、でもそれは本当に偶然だったんだよ」
「凄いよね、望んでいた事が目の前に勝手に来ちゃうんだもの」
「うん。真子もこの町で偶然拓さんに再会したでしょう? で、私もでしょう? この町って不思議がいっぱいだよね。ねぇ、もしかしてこの町って『奇跡の町』なのかなぁ? なんかそんな気がしてならないよ」
美桜が『奇跡の町』と言ったので、真子は驚いていた。
美桜もこの町の事をそう感じていたのだとわかると嬉しくなる。
「うん、確かにこの町は『奇跡の町』かも。なんでも願いを叶えてくれる『奇跡の町』なのかもしれない…」
真子は頷きながら言った。
「なんか美桜がやる気満々なのを見て凄く刺激を受けたよ。私も頑張らなくっちゃ」
「そうだそうだ真子も頑張れ! とりあえず真子は秋の『全日本藍染コンテスト』に向けて頑張れ!」
「うん、頑張る! あっ!」
そこで真子が叫んだ。
「体験型ミュージアムはどうしよう? その頃は私向こうに帰ってるかも」
「イベント中の一ヶ月間だけ帰ってくればいいじゃん。その間はうちに泊まってもいいし」
「うん、わかった。その一ヶ月間は責任持ってちゃんとやり切るよ」
「それなら安心だわ! 私達はこれからも創作活動を続けていくわよー!」
美桜がそう叫んだので、真子も「おーっ!」と言って右手を挙げた。
それから二人は目を見つめ合いフフッと微笑んだ。
コメント
3件
美桜ちゃんと真子ちゃん、さすが大親友💕 お互いに気持ちが分かって思い遣って協力し合える友達ス・テ・キです✨
真子ちゃん、美桜ちゃん本当に良かったね❣️ おめでとう🎉㊗️🎊🎈
美桜ちゃんは深谷君とお付き合いすることにしたのね〜🥰👍💕お似合い、お似合い☺️🌸 そして真子ちゃんの婚約〜神奈川に戻る事を見据えていたんだね🥹 工房のことも負担にならないよう考えてくれて自分のしたい事が見つかって✨やっぱり「奇跡の町、岩見沢」だね🤗❣️ これで心置きなく真子ちゃんも神奈川に戻って結婚👰♀️💍💒もできて💞 万事うまく事が運んだのはやっぱり「岩見沢の奇跡✨✨」のお陰としか思えない🥹