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満足したのか、琉成が俺の口から舌を抜き取り、破顔した顔をこちらに向けてきた。
「甘い、美味しい。もっと喰べたい、全部欲しい、もっともっと」
学ランの胸倉を掴み、琉成が俺の体を引き寄せる。
(何がしたいんだ?何が起きた!)
そうは思っても快楽で溶けた頭は上手く動かず、抵抗する所まで体が動かない。
「もっと食べて、もっと喰べさせて」
舌を指で掴まれ、無理に引っ張られる。
「んぐっ」
「赤い、甘い、美味しい…… あぁ、ずっとコレが喰べたかったんだ」
強制的にべっと出した状態になっている舌を、引っ張りながら琉成が舐めてくる。その舌先で、俺の舌の中心に沿って舐め、端を甘噛みする。噛まれたせいで溢れ出る唾液はスープでも飲むみたいな感覚で吸い尽くされ、琉成の事を心底怖いと思った。
「ひゃ、ひゃめ…… ろっへ」
上手く言えず、引っ張られ続けているせいで舌の根元が痛い。胸元をグッと押してみたりして抵抗したりもしてみたが、力が入らず無駄に終わった。
「…… 我慢出来ないや。ねぇ、喰べちゃっていい?」
そう言った琉成の目が座っている。拒否や否定など今のコイツの耳には一切届かないとすぐにわかった。
首を横に振って断りたいのに、頭が動かせない。『 食べる』って、俺の舌を噛みちぎって飲み込むって事か?カ二バリズムなんて絶対にダメだ、親友を食うとかホラー映画だけにして欲しい。
「んー…… でもここじゃ流石にヤバイな、人来るかもしれんし」
むしろ今すぐに来て俺を助けて欲しい。状況が受け止めきれず、目から涙が溢れ出る。 食い物を奪われはしても、それでも一番一緒に居て楽で、面白い奴だと思っていただけに、琉成から見て俺は、ただの食料としか思われていかったショックも大きかった。
「うわぁ…… 泣くとかマジヤバイって」
口元に弧を描き、琉成の顔がまたこちらに迫って来た。掴まれたままになっている舌を咬みちぎられるかもしれない恐怖に体が硬直し、動けなくなる。
ペロッ、ペロッ…… 。
予想外にも琉成は俺の頰を伝う涙を舐め取り始めた。掴んでいたままの舌をやっと離してくれ、慌てて口内に舌を戻す。だがその舌を奴の指が追い、口内へ琉成の細長い指がぐっと入ってきた。
「しょっぱくて、こっちも美味しい」
眦をチュッと吸われ、口の中の指が歯茎をなぞる。唾液の絡む指先が口内をくすぐるみたいに動き、腹の奥がキュッと疼いた。
(なんだコレ、変な感じがする)
気持ち悪いのに、心地いい。相反する感覚に心が騒つく。
「ひゃめらっへ、ほう、はらへっ」
「うんうん、何言ってるかサッパリだやー」
ニッコリ笑うと、琉成が俺の口から指を抜いてくれた。
(何だ、止めろってちゃんと伝わってるじゃん)
ホッと息をついたのも束の間。琉成は俺の体を横抱きにして持ち上げると、荷物もそのままに廊下を、来た方向へと歩き始めた。
「何処に、行く気だ?」
「もっと人の来ない所に行こうかなって。じゃないと全部喰べらんないし」
「ぜ…… 全部?」
高校生男子を軽々とお姫様抱っこしやがっている事実を非難したい気持ちが瞬時に吹き飛ぶ。
(え、こんな簡単に俺死ぬの?)
そう考えたせいで顔が真っ青になり、逃げたいのに、蛇に睨まれでもしているみたいに逃げられない。いつもなら何かトラブルがあっても脱兎の如く走り出せるのに、もう既に腕の中に捕まっているせいもあるんだろうか。
琉成は鼻歌を歌いながら足早に目的地へ進んで行く。この様子だと、もう行きたい場所は決まっているみたいだ。