「竈 開(かみの ふーが)!」
宿儺がその言葉を発した瞬間、領域内部の空間が再び大きく変貌を遂げた。これまでの「伏魔御厨子」の内部に存在していた刃は溶解し、新たに無数の炎の柱が地面から吹き上がるように現れた。
その炎は、熱いだけではない。鋼谷が一歩踏み出した瞬間、足元の炎が彼の異能を打ち消すように燃え上がる。
「なんだ、この炎……触れたら力が奪われていく?」
鋼谷が後退しながら驚きの声を上げた。
宿儺は冷笑を浮かべながら彼らを見下ろす。
「竈 開……全てを焼き尽くす力だ。この炎は呪力も物質も問わず、触れたもの全てを無に返す。」
「なるほどな。」
五条は涼しい顔でその炎を見つめた。
「呪術の理屈を無視したような技、ますます面倒くさいね。でも、そういう手を出してくるのは、追い詰められている証拠だ。」
宿儺はその言葉に眉をひそめる。
「追い詰められている?五条悟、冗談は威勢だけにしておけ。」
鋼谷は拳を握りしめ、再び前に出た。
「五条、そっちが頭を使うなら、俺は力で突破する。」
彼は自分の異能を最大限に活性化し、炎の柱に突撃するように動いた。
しかし、炎が彼に触れる寸前、鋼谷の異能がそれを押し返した。周囲の炎が一瞬だけ揺らぎ、宿儺が目を細める。
「ほう、お前の異能、まだ底が見えないようだな。」
鋼谷はにやりと笑いながら宿儺を見据えた。
「底が見えるのは、お前の方だ。」
五条はその間に宿儺の背後へ回り込み、無下限呪術を使いながら「竈 開」の炎の挙動を観察していた。
「なるほど、この炎、中心から離れるほど力が弱まるな。」
五条は冷静に分析し、鋼谷に指示を出す。
「鋼谷、中心から離れた部分を叩け。そこから突破口を作る。」
しかし、宿儺は二人の動きを読み切っていた。炎の柱がさらに激しく燃え上がり、領域全体が揺れる。
「俺の力を過小評価するとはよほど自分を尊ぶのだろうな!」
宿儺が手を広げると、竈 開の炎が一箇所に集中し、巨大な火球となって五条と鋼谷に迫る。
鋼谷は咄嗟に拳を振りかざし、火球に立ち向かう。一方、五条はその隙に新たな術式を準備していた。
「次の一手で決めるぞ。」
五条が静かに呟く中、宿儺の笑みは消えることなく、炎の中心で待ち構えていた。
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