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素敵
拓くんと真子ちゃんの出会い⁉️拓くんは真子ちゃんを知ってたんだね👀 なんとなくモテ男な拓くんと病弱で静かな美人真子ちゃんの接点がこれから増えていきそう〜ワクワク😊💗🎶
キーンコーンカーンコーン……
神奈川県立鎌倉北高校のチャイムが鳴った。
「おいっ、拓! 選択美術始まるぞっ!」
「…………」
「起きろよ、拓!」
「ふぁあぁああーーーっ」
長谷川拓は大きな欠伸をした後、屋上のベンチから起き上がった。
そのあまりにも呑気な様子に痺れを切らした友人の森田敦也は、
「先に行ってるぞ」
「うん、俺も今行く」
拓はそう言って漸くベンチから立ち上がると、のろのろと階段へ向かった。
美術室がある三階まで降りると、拓と同じように遅れて美術室へ向かう女生徒の姿があった。
スラリとした体型にサラサラの長い髪。
後ろ姿だけでそれが誰だかすぐに分かった。
(確か宮田真子だったかな?)
拓は、人の名前をすぐ覚えるという特技がある。
目の前の真子とは、三年生になって初めて同じクラスになった。
今まで一度も会話を交わした事はないが、美人だったので名前を覚えていた。
そんな真子の事が、拓は以前からずっと気になってる。
人伝に聞いた話だと、真子は身体が弱く1年生の頃は頻繁に学校を休んでいたらしい。
そんな経緯もあってか、いつも静かで目立たない存在だ。
拓が真子を見かける時は、いつも女友達とつるんでいるようだった。
真子は体育の授業の実技は全て見学していた。
この高校の体育の実技は、男女別々で行われる。
その際、拓は度々真子が教師の助手のような事をしているのを見かけた。
球技の時などは、真子はいつもボールを雑巾で拭いていた。
その時の真子の表情が少し寂し気で印象に残っていた。
美術室前の廊下まで行くと、教室からは美術教師葛城の声が響いてきた。
(やばっ、もう来てんのかよっ)
焦った拓は、ダッシュで後ろのドアへ駆け寄る。
その時、ちょうどドアを開けていた真子の身体に全身がぶつかってしまった。
「あっ、悪いっ」
拓のスピードは止まらず、
真子の身体を教室へ押し込むような形で後ろから当たってしまった。
二人がドアからなだれ込んで来たのを見て、教師の葛城が言った。
「おいおいお前ら受験生なのにラブラブしてんじゃねぇぞ。もう授業はとっくに始まってるんだからな」
その途端、教室中からヤジが飛ぶ。
「ヒューヒュー」
「お前らいつのまにそういう関係?」
「イチャイチャしてんじゃねーぞ」
それを聞いた真子の頬が真っ赤に染まる。
それを横目に見ながら拓が葛城に言い返した。
「そんなんじゃねーってば…」
それから真子にだけ聞こえるように言った。
「ごめんな…」
「うん…」
真子は小さな声を出して頷くと、
拓の顔を見ずにうつむいたまま自分の席へ向かった。
席についた真子に、隣にいた友里が聞く。
「長谷川君と一緒に来たの?」
友里はニヤニヤしている。
「違うわ。たまたま一緒になっただけ」
「なんだそっか。それよりも気分は大丈夫?」
「うん、今薬飲んで来たから大丈夫だよ、ありがとう」
真子はそう言って友里を安心させるように微笑んだ。
その時葛城が言った。
「じゃあ、今日は早速デッサンをやるぞー。受験で美大や建築科を受ける奴は、特に真面目にやれよ! 受験の実技ではデッサンの基礎力を見られるからな―」
そこで拓の隣にいた敦也が言った。
「拓は建築科を受けるんだろう? だったらデッサン真面目にやらなくちゃな」
「ああ、そうだな」
「夏期講習は美大受験の予備校に行くんだっけ?」
「ああ、デッサンだけ受講するつもり」
「そっかー、いよいよ俺達も受験かー」
「だな」
「ほらほらそこ喋ってないで、さっさとイーゼルの前に移動しろ」
葛城は喋っている二人を急かす様に言った。
気付くとほとんどの生徒は好きな場所へ移動し、
カルトンに画用紙をセットしていた。
拓と敦也は辺りを見回して、空いている席を探す。
「おっ、友里ちゃんの隣が空いてるー! 俺あっち行くわ」
敦也はそう言って、ちゃっかりと友里の隣の席へ向かった。
となると、残りの席は一つしかないはずだ。
拓はその時漸く空いている席を見つける。
その席はなかなか良さそうだ。
モチーフがバランス良く画角に入りそうな場所だったので、
(ラッキー!)
そう思いながら拓はその席へ向かった。
椅子に座り足元に鉛筆の入ったペンケースを置いた時、
右斜め前に真子がいる事に気付く。
真子の足元には、ラベンダーの絵が描かれた少し大きめの缶が置かれ、
その中には拓が持っている本数よりもかなり多い数の鉛筆が入っていた。
そして真子は手慣れた様子でカッターで鉛筆を削っている。
(すっげー)
その見事な手つきは、長年彼女がそうやって鉛筆を削ってきた事を物語っていた。
思わずその手つきに見とれていた拓の頭を、誰かがペチッと叩いた。
「いってぇー」
「二時間はあっという間だぞ。さっさと始めろ! お前建築学科を受けるんだろう?」
葛城が拓に向かって言う。
すると拓は、
「あ、先生に言われた夏期講習、とりあえず申し込みました」
と葛城に答えた。
「そうかそうか…それなら少し安心だな。夏休みに基礎を徹底的に叩き込んでもらってこいっ」
葛城はそう言ってガハガハと笑いながら移動していった。