テラーノベル
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#ダークファンタジー
#和風ファンタジー
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#和風ファンタジー
――幽世
流れる。流されてゆく。上へ下へと荒れ狂う激流にもみくちゃにされながら。
ゴボゴボ、ゴボゴボと――。まるで映画の怪獣のブレスのように白い泡を吐き出し続ける。だけど、それもすぐに出なくなった。胃の中の酸素が尽きたからだ。
同時に自分の肉体から生命の灯が消えたことをその魂は悟っていた。そのせいか、魂は最早水の冷たさを感じなかったし、川底にビッシリと敷き詰められた石や岩に激しくぶつかり、皮がはがれ肉が削げ落ちても全く痛みは感じない。
だが、それでも――。
魂は悲しかった。昏い水の流れに命を飲み込まれる直前、些細なことであの人と口喧嘩したまま仲直りできていないことが。
魂は悔しかった。自らの肉体を容赦なく殺しゲタゲタとおぞましい笑い声をあげた異形に一矢報いることもないまま終わることを。
魂は苦しかった。自分がいなくなった後、あの人がどれだけ悲嘆にくれるのかと思うと。
いや、それどころじゃない。あいつは、あの異形はあの人のことも殺すと言っていた。それもただ殺すだけじゃない。あいつはあの人を責め立て追い詰め苛め抜いて、それから殺してやるのだと笑いながら言った。
ダメだ、魂は叫ぼうとした。だけど、肉体は既に血の通いを止め、冷たい屍と化している。当然、口を開くことはできなかった。 だが、それでも魂は叫ぶことを止めなかった.いや、止められなかった。ダメだダメだダメだ! そんなのは絶対に――!
――好きなだけ泣け、喚け、叫べ。
――そして死ね。何度でも死ね。
――お前達はみんな、独りぼっちだ。
――オン・マーラヤ・パーピーヤス・ソワカ。
オン・カーマダーヤ・マハーラジャ・ソワカ。
オン・パーピマ・マーヤヴァンス・ソワカ。
はるか遠くで、或いはすぐそばで。あいつが、あの異形が不気味な呪文を唱えている。だけど、込められた感情は伝わってくる。
異形は飢えていた。何でもいいから取り込み、食らい尽くそうとしていた。
魂は懸命に抵抗を試みたが終わりはすぐそばまで迫っていた。そして、大きく開かれた破滅のあぎとに飲み込まれ、砕かれるかと思った寸前だった。
「――そなたの声、確かに受け止めた」
はっきりと聞こえたのは鈴を鳴らすような声。魂は見た。冷たさと暗闇だけに満たされた水の中で、燃え盛る炎のような一つ目が明るく輝くのを。
「ならば我とともに天狗道を進め。……そなたに外法の真髄を伝授しようぞ」
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