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#成り上がり
#死に戻り
#ハッピーエンド
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その日からのサベリオは、自分でも笑えるくらい落ち着きがなかった。
朝のうちに橋へ走り、床板の浮いた場所を確かめる。昼には照明器具の金具を見て回り、まだ届いてもいない発電機の置き場所まで先に片づけた。やるべきことは頭の中ではっきりしているのに、理由だけが口から出てこない。
「今日は橋の板を先に替えたほうがいい」
唐突に言うと、アルヴェが図面から顔を上げた。
「なぜだ」
「なぜって……傷んでるから」
「傷んでる場所は他にもある。順番があるんだ」
返す言葉に詰まる。橋の中央寄り、欄干の近く、あの時足を取られかけた場所が危ない。そう言えたら早いのに、それを知っている理由が説明できない。
結局、サベリオは一人で工具を持ち出して橋へ向かった。床板を剥がしかけたところで、ヴィタノフがやって来る。無言で様子を見てから、手を差し出した。
「釘抜き」
「あ、うん」
それだけで手伝ってくれた。助かったと思った次の瞬間、アルヴェの怒声が飛ぶ。
「勝手に始めるな!」
橋の上の空気がぴりつく。
「段取りを乱されたら、他の班が全部ずれる」
「でも、ここ危ないんだ」
「危ない場所は全部だ。だから順にやってる」
言い返せなかった。焦っているのは自分だけで、みんなにはまだ今日が一回目の春なのだ。
昼すぎには、照明器具の吊り金具を先に点検しようとしてジャスパートに怪しまれた。
「どうしてそこ?」
「気になるから」
「気になるで配線は抜かないで」
もっともだった。
シェルターへ戻ると、デシアが入口の柱に寄りかかってサベリオを見ていた。録音機を胸に抱き、首を少し傾ける。
「今日のあなた、変」
「え」
「朝からずっと、何かに追い立てられてるみたい」
追い立てられている。まさにその通りだった。雨より先に。夜より先に。あの落下より先に。
「ちょっと、気になることが多くて」
ごまかすと、デシアは納得していない顔のまま、柱の木目を指でなぞった。
「気になるのはわかる。でも、見えてる順番がみんなと違う時って、説明しないと怖いよ」
その言葉が小さく刺さる。
助けたいだけなのに、やっていることは不審者みたいだった。先回りしているつもりが、ただ一人で暴走している。
夕方、橋の板は少しだけ直せた。けれどサベリオの胸のざわつきは、朝より強くなっていた。