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次の週、省吾は出張で北海道の小さな町にいた。
明日この町で、自律運航AI搭載のドローンによる荷物運搬の実証実験が行われる。
この実験が成功すれば、ドローンによる荷物配送の実用化が実現する。
出張にはCTOの原田と、開発に携わった技術者が数名が同行していた。
明日の実験に備え、最終打ち合わせが行われていた。
「人や車の動きを察知して、安全確保がちゃんと出来るかどうかが鍵ですね」
「故障診断プログラムは、最新バージョンをインストールしてあります」
「地磁気センサーもチェック済みです」
「緊急着陸プログラムもオッケーです」
「あとは、バッテリーだなぁ……果たしてどのくらい持つか……」
「この辺りは直線コースで飛行出来るので消費電力は最小限だと思いますが、都会だとなかなかそうは…….」
そして打ち合わせは午後五時で終了した。
省吾達は駅前に一つだけの小さなビジネスホテルに泊まっていた。
もちろん夕食は出ないのでメンバーを連れて外へ食べに出る。
商店街にある居酒屋へ入ると、まずは冷えた生ビールで乾杯した。
「「「お疲れーっす!」」」
近くには小さな漁港があるので新鮮な魚介類のメニューも多い。
今回初めて北海道に来た社員の為に、ちゃんちゃん焼きや石狩鍋、にしん漬け等の郷土料理も注文する。
省吾は仲間と共に美味しい料理を堪能した。
食事をしながら若いエンジニア達は、省吾に様々な質問をした。
省吾の学生時代の話や起業した頃の話等、普段あまり聞けないような質問をする。
省吾はそれに一つ一つ丁寧に答えていった。
そしてだいぶ酔いが回ってきたところで、若手エンジニアの一人が省吾に言った。
「そういえばこの前噂で聞いたんですが、深山さんのカノジョさん、狙われているみたいですよ」
「狙われてる? なんだそれ?」
CTOの原田が日本酒をぐびっと飲み干してから聞いた。
「僕も聞きました。三上(みかみ)さんですよね?」
もう一人の若手社員も言う。
「奈緒が狙われてる? どういう意味だ?」
省吾が二人に聞き返すと、片方が言った。
「技術統括本部の三上さんってご存知ですよね? その三上さんが深山さんの恋人を狙ってるっていう噂が広まってるんです」
「…………」
省吾は一瞬押し黙ったが、すぐに質問した。
「三上って、無人AI重機プロジェクトチームの三上君?」
「そうです」
「三上といえば、前に色々ありましたよねぇ? 社内で二股をかけて女性同士が揉めちゃって、結構な騒動になった……あの人でしょ?」
「そうです。あの後、片方の女性が退職しました」
「そんな事あったなぁ。たしか3~4年くらい前だよな?」
「「そうです」」
「三上君は仕事は出来るんですが、女性関係でいつもトラブってるイメージですよね。あの通りイケメンですから、社内でも社外でもモテモテですし……」
原田がため息をつきながら言った。
するともう一方の若手エンジニアが言った。
「これは僕の勝手な解釈なんですが、三上さんは深山さんの事をライバル視してるところがあるみたいです。僕達から見たら二人は雲泥の差なのに、本人は深山さんを追い越せるって本気で思っているみたいで……だから深山さんを挑発する為にあえてそんな事を言うのかなーって」
「僕もそう思います。三上さんはうちに入った当初から何かと深山さんを意識していますから」
そこで原田が言った。
「上の人間を目標にするのはいい事だが、でもなんで恋人を? 挑発するだけの為に? 私には理解できないなぁ」
「僕もです」
「手に入らないからこそ手に入れたくなるんじゃないですか? 彼にとっては恋愛もゲームみたいなものだろうし」
「三上君っていくつだっけ?」
「僕の三期上ですから36です。技術統括本部の主任になって今年で二年目ですよね?」
すると、原田が省吾に言った。
「深山君、こりゃあ帰ったら要チェックですよ。また変な事に麻生さんを巻き込んだら可哀想だ」
「そうですね」
省吾はそう返事をすると、何かを考え事をしながらグイッと日本酒を飲み干した。
コメント
26件
何だか不穏な動きがあるみたいですが、省吾さんのことだから大丈夫。
マリコ様今夜も楽しみをありがとうございます😊 ワクワクと読み始めましたが変な三上とか言うのが出てきた様ですね😢 心優しいみなさんで三上を撃退してくださいませね
男前と呼ばれる三上よ。。恋愛はゲームではない。あとで痛い目にあいなさい😤