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140 - 第91話 警報が出た区域

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2025年12月29日

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第91話 警報が出た区域


昼前の校門。


下校時間にはまだ早い。


校舎の影が校庭の端に伸び、

灰色のフェンス沿いに、淡緑の監視灯が等間隔に点っている。


門のそばに立つのは、背の高い男性。


濃い緑寄りの制服。


肩のラインが硬く、動きに無駄がない。


腰には装備一式。


サムライ第四隊。


だが、誰も見上げない。


視線は自然に避けられている。


校舎から出てきた生徒たちは、

制服の上にパーカーや薄手の上着を重ねている。


サイズの合っていない服。


成長段階はばらばらだ。


安心段階は表示されないが、

歩き方で大体が分かる。


数人の子どもが、小声で話している。


テレビでやってないよね。


事件。


うん。名前も出てない。


でもさ、昨日このへん通ったって。


足取り、ってやつ?


その言葉だけが浮いている。


正確には、誰の足取りかは分からない。


大和国では、

事件の中心に人を置かない。


置くのは、区域だ。


午前中、学校の端末に通知が入った。


行動サイコパス警報。


文面は短い。


該当区域において、安心阻害行動の可能性が検知されました。

本日は寄り道を避け、定められた動線を使用してください。


それだけ。


写真も、説明もない。


生徒の一人。


水色のインナーが袖口から少し見えている。


靴はかかとがすり減っている。


立ち止まり、道路の向こうを見る。


商店街。


いつもなら人が多い時間。


今日は、静かだ。


店のシャッターは半分だけ閉まっている。


理由は表示されない。


だが、誰も不思議に思わない。


午後。


街守隊の車両が、音もなく巡回する。


サイレンは鳴らない。


警告もしない。


ただ、同じ道を、同じ速度で何度も通る。


それが警報だ。


噂は広がる。


でも、形を持たない。


あの人じゃない?


いや、違うと思う。


引っ越しただけじゃない?


足取りは、追われていない。


消えている。


夕方。


ニュースでは、何も言わない。


代わりに流れるのは、

地域の安心指数。


今日も安定。


不安要素なし。


画面の端に、

小さく「警報解除」の文字が出る。


それだけ。


夜。


サムライの姿は消える。


巡回も止まる。


翌朝、通学路は元に戻る。


誰かがいなかったことだけが、

記録にも記憶にも残らない。


大和国では、

容疑者は追われない。


行動が、処理される。


足取りは、人のものではない。


制度が通過した痕跡だ。


そして市民は、


それを見ないことで、

安心を保っている。

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