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坂上先輩も、花純ちゃんの左遷に対し 上層部に意見し、異動させられてしまったのですね....😢 上層部におべっかを使うこと無く、間違っていることはちゃんと「間違っている」と言える坂上先輩、素晴らしいです‼️ 青山花壇は まもなく買収されるけれど、坂上先輩の活躍できる場所が見つかると良いですね....🍀
坂上先輩も花純ンの出向に異議を唱えたんだ‼️すごいね👍🤩 そしてなんの魅力もない青山花壇のお嬢との交際を保留にして(そりゃするよね💧)まさかの営業部に異動なんて⚡️⚡️ なんとまあ縁故びいきというか会社としてどうなんだ⁉️ 呆れてものが言えないよ😵💫 縁故のイエスマンだけが残る会社に未来はないから雄馬パパの手腕で早めに買収して有能な社員がしっかり働けるようにしてほしいね💪💪
まだ11時20分だったので食堂は空いていた。
「ここの皿うどんが好きでさぁ、来るといっつも頼んじゃう」
「そうなんですか?」
「あ、そっか。花純ちゃんはお弁当派だったもんね」
「はい。でも皿うどんは大好きなので食べてみようかなぁ?」
「途中で酢を入れる味変になって、これがまた美味しいんだな!」
「じゃあ私もそれにします」
二人は食券機でチケットを買うと厨房前に並ぶ。そして皿うどんを受け取ってから見晴らしの良い窓際の席へ行った。
向かい合って席に着き早速食べてみると優香の言う通りとても美味しかった。
「いつも店長会議でここへ来るとね、この景色を眺めながらお昼を食べてたんだ。でも今日が最後なんだなって思うとちょっぴりしんみりしちゃうわね」
優香はしみじみと言う。
「私はまだ入社して間もないですけど、優香さんにはきっと沢山の思い出があるんでしょうね」
「そうねー。本社の営業部にいた時が一番キラキラしてたかなー? 懐かしいわ」
優香はそう呟くとまた美味しそうに皿うどんを食べる。
そこからは前向きな話しで盛り上がった。話している最中優香は急に声のトーンを押さえて言った。
「高城不動産の社食って凄く美味しいらしいわよ」
「えっ? そうなんですか?」
「うん、優斗さんが言ってた。よくありがちな社食専門の運営会社に丸投げしないで専用のシェフを雇ってるらしいわよ。それにメニューもオリジナルなんだって」
「えー? それって普通のレストランじゃないですか?」
「でしょ? だから今からすっごく楽しみ!」
優香がこれから働く高城不動産の子会社は高城不動産のビル内に設置される予定だ。
つまり勤務地は今までと変わらない。
だから二人は時間が合えば同じビル内で一緒にお昼を食べる事も可能だ。花純は今から楽しみで仕方がなかった。
そしてその時ふと思う。全てが良い方向へ進んでいるのは壮馬のお陰だった。
壮馬は花純が危機に直面しそうになるといつも助けてくれる。そして全力で花純を守ってくれた。
それに気づいた花純は思わず胸が熱くなる。それと同時に壮馬に対するさらなる深い愛情が芽生えてくるのを感じていた。
その時、花純を呼ぶ声が聞こえた。
「藤野さん! それに店長も!」
二人が声の方を振り向くと先輩の坂上健太が立っていた。健太はトレーを持ったままびっくりした顔をしていた。
そして優香と目が合うと苦笑いを浮かべつつペコリとお辞儀をした。
「先日は大変失礼いたしました」
「あら、どうも!」
「先輩お久しぶりです」
「びっくりしました。本社にご用ですか?」
そこで優香が答えた。
「はい。今日はお店の件で用事があったものですから…」
「そうでしたか。いやあ奇遇だなぁ…僕も座ってもいいですか?」
花純は一瞬困った様子だったが優香が素早くウインクしてくる。
『大丈夫よ!』
優香の無言のメッセージを受け取った花純は、そのまま従う事にした。
「どうぞ」
健太は嬉しそうに花純の隣へ座った。そこですぐに健太が口を開いた。
「いやーこの前は参りました。まさか藤野さんがあの高城建設の副社長の恋人だったなんて僕全く知らなくって…」
健太は恥ずかしそうに頭を掻く。
「花純ちゃんは彼に見初められちゃったんですよ。だから超ラブラブでもう大変なのー」
優香があまりにも大袈裟に言うので花純は慌てて言った。
「ちょっと優香さんやめて下さい」
「あらいいじゃない、本当の事だもの」
優香はそう言ってケラケラと笑った。
「いやー仲睦まじそうで何よりです。後輩だからって気軽に声をかけて反省しました。あ、ところでですね、今度僕、営業部へ異動になったんですよ」
「「えっ?」」
二人は同時に声を発したが、驚きは以前同じ部署にいた花純の方が大きい。
「先輩、ガーデンデザインはやめてしまうのですか?」
「うん…残念だけど会社の方針だから仕方ないよ」
健太は少し淋しそうに笑った。
花純はショックだった。仕事の上では花純は健太の事をとても尊敬していた。花純が植物達の事を第一に考えるように健太もそれを一番に考えていた。
だから、健太が現場を離れると聞いて複雑な気持ちだ。
その時優香が小声で健太に聞く。
「もしかして坂上さん、上層部に睨まれるような事を何かやらかしました?」
鋭い優香の質問健太は苦笑いをしながらこう答えた。
「上層部に意見しちゃいました。藤野さんの左遷の事を」
「「えっ?」」
花純と優香はびっくりして同時に声を漏らす。
「会社組織としておかしいだろうってずっと思っていました。でも睨まれるのが怖くて藤野さんが左遷された時に声を上げられなかった。先輩として情けないです。で、そういうのもあってなんとなく藤野さんのいる店に足を運んでいたのかもしれません。そうしたら店長の唐沢さんともお知り合いになれてその事を先輩に話したら、実は唐沢さんも藤野さんと同じような目に合われていたと知りました。そしてあのフローリストが密かに『流刑地』と呼ばれている事も聞きました」
花純と優香は驚きを隠せなかった。まさか健太がそこまで知っているとは思いもしなかったからだ。
そこで健太がさらに声のトーンを下げて続ける。
「今回はおとなしく営業部へ異動しましたが実は密かに転職活動をしています。実は今二ヶ所から誘いを受けています。どちらもガーデンデザインの設計の仕事です。そのどちらかに決まればこの会社は辞めるつもりです」
二人はびっくりして思わず顔を見合わせた。そしてすぐに優香が気になっていた事を健太に聞く。
「坂上さんは社長令嬢に気に入られていたでしょう?」
今度は健太が驚いた顔をしたがすぐに答えた。
「はい。実は先日社長から娘と付き合ってみないかと言われました」
再び優香と花純は顔を見合わせる。
「で? 付き合うの?」
「いえ、それはあり得ません」
「せっかく逆玉に乗れるのに?」
優香がすかさず詰め寄る。
「ハハッ、そんなので偉くなったりお金持ちになっても肩身が狭いだけです。一生あの一族の奴隷になるなんてまっぴらです。ただ転職が本決まりになるまではなるべく逆らわないようにして大人しくしています。交際の件も仕事が忙しいからと保留にしてありますし」
そこで花純がやっと口を開く。
「坂上先輩! 私、先輩がデザインするお庭や庭園が凄く好きでした。だから営業に異動したというのを聞いて正直残念でした。でも先輩がまた他所でガーデンデザインの仕事をやるつもりだというのを聞いて凄く嬉しいです。応援しています! 頑張って下さい!」
「私も応援しちゃう! 上にきちんと声をあげられるまともな社員がこの会社にもまだ残っていたんだってわかって嬉しかったわ。そんなあなたなら次の会社に行ってもきっと大丈夫よ!」
「ありがとうございます」
健太は心から嬉しそうに微笑んだ。