テラーノベル
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その日、仕事を終えた七星はロッカールームで着替えを済ませ、鼻歌まじりに従業員通用口へ向かった。
ちょうどそのとき、総務課へ書類を届けに来ていた優人が、偶然その場を通りかかる。
書類を手にした優人には気づかないまま、七星は軽い足取りで通用口のドアを開けた。
その瞬間、外からバイクの轟音が響き、優人は思わず足を止める。
そこへ、看護師の平子由希が通りかかった。
「驚きました?」
「え?」
「先生と同じ脳神経外科の平子です」
「ああ、平子さん……。今のバイクの音は?」
「看護助手の子のお迎えですよ。ここ一週間ほど毎日。ほんと、下品な音で嫌になりますよね」
「ええ、ちょっと驚きました……」
「あの子、元ヤンなんですよ」
「あの子?」
「今出て行った、看護助手の遠坂さんです」
「……遠坂?」
その名前を聞き、優人は七星のフルネームが“遠坂七星”だったことを思い出した。
「彼女、昔家族の付き添いでこの病院に来たことがあって。そのときは金髪だったんですよ」
「金髪?」
「そう。眉も細くて、派手な服を着て……今ではあまり面影ないですけどね」
「そうだったんですか……」
「それより先生、総務課へ御用ですか?」
「あ、はい。社宅の書類を届けに……」
「社宅に入られたんですか? あの……失礼ですが、ご家族で?」
「いえ。単身です」
「単身ってことは、単身赴任?」
「いえ。僕は独り身なので」
その言葉に、由希の目が大きく見開かれた。
「そうだったんですね。じゃあ、総務課までご案内しますね」
「ありがとうございます」
うきうきと腰を揺らしながら歩く由希のあとを追いながら、優人は“バイクで男が迎えに来た”という七星のことが、少し気になっていた。
一方その頃。
大型バイクの後部座席に乗った七星は、運転する男に向かって声を張り上げた。
「今日、私のバイクの修理が終わってるはずだから、迎えはもういいよ!」
「おう、了解。じゃあ恵太の工場まで送ろうか?」
「助かる。ありがと!」
七星は、高校の先輩である酒井涼真の腰につかまりながら笑顔を浮かべる。
涼真とは、もう九年来の付き合いだ。
複雑な事情を抱えて祖母に育てられた七星にとって、涼真は頼れる兄のような存在だった。
二人を乗せたバイクは、やがて堀恵太が経営する修理工場へ到着した。
恵太は涼真の同級生で、七星にとっても長い付き合いの先輩だ。
「よっ、お二人さん、お揃いで~」
つなぎ姿の恵太がガレージから顔を出した。
彼はこの街で唯一のバイク屋の息子で、隣で修理工場を営んでいた。
「ようっ!」
「恵太~! 私の愛車、直った?」
「おう、ばっちりだ」
七星は涼真のバイクから飛び降り、恵太の後ろに置かれた愛車へ駆け寄った。
「どこが悪かったの?」
「二次エアの吸い込み不調だな」
「だから回転数が変だったんだ」
「ああ。パーツ交換しといたからもう大丈夫だと思う」
「サンキュー」
愛おしそうに愛車を撫でる七星を見て、涼真が笑いながら言った。
「今度は新車買えよ。中古だとまた不具合出るぞ」
「分かってるけど、新車高いんだもん」
「大丈夫だよ。恵太が安くしてくれるから」
「おいおい、この物価高だぞ。値引きにも限界があるって」
「ケチ臭いこと言うなよ。可愛い後輩のためだろう?」
「そうだよ、もっと言ってやってよ、亮兄!」
「おまえらな~、うちの店潰す気か?」
困ったような恵太の顔に、七星と涼真は大笑いした。
修理代を支払った七星は、さっそくバイクにまたがりエンジンをふかす。
「この音、この音!」
はしゃぐ七星に、涼真が声をかけた。
「調子に乗って事故るなよ」
「分かってる! じゃあね、二人ともありがとう! バーイ!」
七星は笑顔で手を振り、大きな音を響かせて走り去っていった。
残された涼真と恵太は、その後ろ姿を見送りながらつぶやく。
「相変わらず元気だねぇ」
「だな」
すると、恵太が涼真に向き直り、にやりと笑った。
「告白しちゃえよ! 好きなんだろ?」
「は? 何言ってんだお前」
「見てりゃ分かるって。そろそろいいんじゃないの? 七星ももう二十四だし」
「ちっ、そう簡単にはいかねーよ」
「告白したら今の関係が壊れるってか?」
恵太は大声で笑った。
「何分かったようなこと言ってるんだよ、お前は!」
涼真はばつが悪そうに呟き、恵太に膝蹴りを入れる。
「いってーな、やめろよ」
「この減らず口が!」
「キャー、ヤメテヤメテ、暴力反対~!」
恵太は楽しそうに笑いながら店の中へ逃げ込み、振り返って言った。
「茶でも飲んでけよ」
「おう!」
涼真は返事をし、少し切なげな表情を浮かべながら恵太のあとに続いた。
コメント
13件
由希さん‼️いくらいい点を稼ごうとしてもひとのわるくちは良くないよ 悪口聞けば聞くほど優人さんは七星ちゃんに興味持つんじゃないかな やはり本当に優しい人じゃないと良い人とのであいは望めないよ‼️ それから涼真さん 良い人そうなのに見守り過ぎていてなんか切ない😢涼真さんにも良い出会いがあると良いけど
涼真さんと七星ちゃんの関係が崩れるのは確かに嫌だよねー涼真さん💦 七星ちゃんの過去も気になるし平子由希が優人さんを狙って独身で社宅住まいが知れちゃったのも気になる🤔 今後の展開がとっても気になる〜〜(^^;;
平子由希…ズケズケ色々聞いてきてウキウキしてたけど…さり気なく人の悪口言う性格の悪さが滲み出てて嫌😫優人先生狙われてる…気をつけてー💦 七星ちゃんの過去気になります… そして頼れる兄貴の涼真さん、今の関係が壊れるより、今はこのまま仲間としているつもりなんだろうね… 優人さんとの出会いで、人間関係が色々動きそう!楽しみです✨️
#幼なじみ