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#○○の主役は我々だ!
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ふゅう@低浮上
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何事もなかったように、天乃の姿は跡形もなく消え去った。残るのは空気のみで、あとは静まり返った廊下だ。
ひどく沈黙が長く思えて、階段のそばでこちらを覗き見る生徒の視線も、今はどうでも良かった。
天乃、天乃、天乃───。
それだけが頭の中で繰り返される。
「…………嘘つき」
ふ、と笑みをこぼしてからそう言った。
焦点の定まらないぼやけた視界で、地面に向かって言葉をこぼした。
「……わがまま、言いたそうな顔してたくせに」
最後にわがままを言えるチャンスで、最後にわがままを聞けるチャンスだったと、後悔がひとつ増えた。
……………
「猿!」
「何だよ…?」
ふと思い耽っていた時、自身を呼ぶゾムが目の前で保健室を指差した。
どうやら、ロボロのところに行ってもいいのか聞いているらしい。
「……いいけど、騒ぐなよ」
「気が利くやん猿」
「鬱?」
名指しで呼び止めようとすれば、運動不足だ運動が苦手だとか何とか言って体育の授業をいつも逃げようとする鬱にしては、あまりにも早い逃げ足だった。
心の中で舌打ちをしながら、しっかりしろ、と喝を入れる。
「……先生、大丈夫ですか?」
ふと、ロボロのもとへと行かなかった1人───トントンが自身に話しかける。
まだいたのか、と思いながらも笑みで返す。
「俺は大丈夫だよ。いつものことだし」
「いや、あの……体調もですけど精神面的にも」
賢いトントンは何もかもを見抜いてしまうのだろうか。
確かにあの別れは寂しく、ロボロに兄のことを直接伝えることも厳しかった。
「大丈夫だって。伊達に体育教師やってねーんだから」
けれど、そんなので項垂れるような教師になりたくてなったわけではない。意地でも笑ってみせようと笑みを深めれば深めるほど、トントンは険しい顔になる。
「……いや、めっちゃ顔真っ赤で泣いてるの、自覚あります?」
「───は、」
何を言っているのだと思えば、何やら頬に温かなものが滴っていた。地面へポタポタとシミをつくるそれは、自分の目からこぼれ落ちていた。
「え、なんで、なんでだ……え、鬱がいた時にもこんな感じだった?」
「いや、そん時は普通でしたけど、表情的にはいつもよりかは元気がないみたいな……」
涙を拭いながら問えば、どうもみんながいなくなったと思って気が抜けたのか、その衝撃で涙が溢れ出ていたらしい。
「あー、まじか、最悪」
微かに笑いながら言葉をこぼす。
拭っても涙はいまだに溜まり続けていく。
「……絵斗兄さんのこと、思い出してました?」
図星の言葉に何の言葉を発せられずにいると、相手は「あ、すんません。余計なこと言っちゃいましたか?」と困ったように発言したため、笑顔で首を横に振った。
「俺のそばにずっといるなんて、あいつらしくないよな?」
ふと、絵斗の最期の言葉を思い出してそう話題を展開した。
あの時はトントンたちも階段の陰から覗き見ていたのだから、絵斗のことも、俺が大泣きしたことも、絵斗の最期の言葉だって何もかもを知っている。
そんな自身の言葉に首を縦に振るトントン。
「絵斗兄やんはもっと”幸せになれよ!”タイプやと思ってましたもん」
「俺も同感」
今だってそう、違和感が拭えない。
「やっぱ辛い時は思い出す。悪夢みたいにな」
あの日の情景が脳裏にフラッシュバックされ、悪夢のように一日中意識してしまい、途端に泣きたくなる。
体育の授業で子供たちに教えているときも、登下校中の高校生を見たときも、何だか懐かしくて泣きたくなる。
けれど。
「でもなーんか不思議なんだよ、アイツの言葉」
違和感と同時にアイツの言葉には何か暖かさと熱さを感じさせた。