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席替えで隣になった翌日。先生が配った山のようなプリントを、大地は不器用にばさばさと落とした。
「うわー! 俺の人生、紙に押し潰されるぅー!」
床一面に散乱するプリント。
クラスがざわつく中、隼人は呆れ顔でため息をついた。
「ドジかよ。……ほら、拾え」
「ありがと隼人! 俺、やっぱ隣がお前で助かるわ! 運命の隣だな!」
「誰がだ」
顔を赤くしながら、隼人はプリントを押しつける。
だが大地は全く気にせず、にっこり笑って言った。
「なぁ隼人、俺さ、こういうの全部お前と一緒にやるの楽しいんだよ」
「……は? ただのプリントだぞ」
「そう! でも隣にいるのが隼人だから楽しいんだって!」
(……やめろ、その真顔。マジで心臓に悪い)
隼人はそっぽを向きながら、耳まで赤くなっていた。
昼休み。
今度は大地がまた机をひっくり返しそうになり、隼人が支える羽目になる。
「おーっとっと! あっぶねー! 俺今、隼人のヒーロー体験のためにわざとだぞ!」
「わざとじゃねぇだろ! ただのバカだ!」
「でも俺を助けられたんだから結果オーライだろ?」
クラスメイトたちは「また始まった」と笑うが、隼人だけは笑いを堪えるように唇を噛んでいた。
(……ほんと、なんで俺にだけこんな無敵なんだよ)
放課後。
黒板に残ったチョークの粉を、ふいに大地が両手ですくい、隼人に向かってふっと吹いた。
「ほら、今日のラッキーパウダー! 幸せ倍増!」
「おい! 目に入っただろ!」
「それは“好きな人を見すぎて目が痛い”現象だな!」
「……」
「……」
クラス中が「キャー!」と爆笑&冷やかしモード。
隼人は顔を真っ赤にしながら、バシッと大地の頭を叩いた。
「バカ!」
「でも笑ったな? 俺のおかげで今日も楽しかったろ?」
「……っ、うるせぇ」
隼人の胸の奥に、また得体のしれない熱が広がっていった。