それから30分後、凪子は紘一と二人で応接室にいた。
紘一は一度事務所へ行くと、コーヒーを二つ持って戻ってきた。
朝倉一家は、先ほど事務所を後にした。
凪子は早速コーヒーを一口いただく。
その瞬間、ホッとして身体の力が一気に抜けるように感じた。
「紘一さん、色々とありがとうございました。本当に助かりました」
「いやいや…でもすんなりサインしてくれて良かったよ。最初はご両親がいるのを見てギョッとしたけれど、ご両親がいたお陰でスムーズにいったような気もするよね」
「はい。私、義理の両親がずっと苦手でしたが、今日ほど感謝した事はありません」
凪子はそう言って笑った。
「それにしても良輔さん、38にもなって親がかりとは…なんかちょっとアレだな」
「情けないですよね」
「そう、それ!」
そこで二人は声を出して笑った。これは共に戦った同志としての勝利の笑いだ。
そこで紘一はコーヒーを一口飲んでから言った。
「凪ちゃんはこれで本当にすっきりした?」
何か言いたげな紘一の目を見て、凪子はニヤッと笑いながら答えた。
「うーん、まだちょっと足りないかなぁ?」
「だよな。僕もそう思う」
「フフッ、ですよね」
「うん…よかったらあの写真、返そうか?」
「さすが紘一さん! わかってるぅー!」
凪子はそう答えると声を出して笑った。
紘一もニヤニヤしながら、書類袋の中から数枚の写真を取り出して凪子に渡した。
凪子はそれを感慨深げに見る。
「まあいずれにしてもソフトにね…」
「はい。ちょうど義理の母の誕生日がもうすぐなんです。嫁からの最後のプレゼントって事で…」
「ハハハッ、そりゃあかなり刺激的なプレゼントになるだろうなぁ」
紘一はそう言うと、大声で笑った。
それから紘一は、絵里奈の事についてを凪子に話した。
先日絵里奈の父親から電話があり、慰謝料は速やかに振り込むと言われたそうだ。
絵里奈の実家はその地域の地主で、色々役職をしている名士でもあるようだ。
だから娘の悪い噂が立っては困るらしい。
そこで父親は一括で速やかに払うと言ったそうだ。
凪子は絵里奈の件も片付いたのだとわかり、更にホッとした。
コーヒーを飲み終えた凪子は、そろそろ帰ろうとソファーから立ち上がった。
「離婚届はうちで出しておこうか?」
「いえ、一刻も早く出したいので帰りに役所に寄って行きます」
「そっか。まあ大丈夫だとは思うけれど、出しに行く時は良輔さんが周りにいないかチェックするようにね」
「承知しました。ハァ―ッ、でもこれでやっと自由の身です」
「ハハハ、すんなり解決出来てよかったよ」
「紘一さん、今回は本当に色々とお世話になりありがとうございました。紀子に、『心配かけてごめんね。もういつでもご飯行けるよ』って伝えておいてください」
「了解!」
凪子は最後にもう一度深くお辞儀をすると、笑顔で紘一の事務所を後にした。
凪子はその帰り道に役所へ寄り、無事に離婚届を提出した。
凪子は最寄り駅へ着くと、高級スーパーへ寄り美味しい惣菜と少し高いシャンパンを買って家に帰った。
そしてその夜は、晴れて自由の身になった喜びを満喫しながら一人で祝杯を上げた。
コメント
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ようやくって感じですね😮💨良輔親がいて話が早く片付いたし信也さんとも正々堂々お付き合いできるけど、やっぱり絵里奈が思いの外守られてる感が😡💢 やっぱり絵里奈にはもう一泡吹いてもらわないと治らないわー🤬🤯💢 そのための凪子さんから義母への🎁🤭❗️ ありがたーく受け取ってもらわないとね😆😸