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#一次創作
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放課後。
空き教室。
日下部は椅子にもたれながら天井を見ていた。
ドアが開く。
「お疲れ」
「お疲れ」
相談者が教室に入る。
「休憩中ですか」
「現実逃避中」
「いつ再開するんですか」
「未定」
相談者が笑う。
向かいの席に座った。
「今日は?」
相談者は少し間を空けて話し始めた。
「俺、学校では普通に笑ってるんです。友達と話してる時は楽しいし、その時は何も考えてないんです」
少し俯く。
「でも家に帰ると、急に虚しくなることがあります。さっきまであんなに笑ってたのに、何でだろうって」
日下部は静かに聞いていた。
「別に嫌なことがあったわけじゃないんです。楽しかったはずなのに」
少し間。
「急に何もしたくなくなるんです」
教室が静かになる。
日下部が口を開く。
「学校で笑ってる時、無理して笑ってる?」
相談者は少し考える。
「いや」
首を振る。
「普通に笑ってます」
「じゃあ」
日下部は頷く。
「楽しかったのは本当だな」
相談者は少し驚く。
「でも、楽しかったことと」
少し間。
「疲れないことは別」
相談者は黙る。
日下部は続ける。
「人と話すって思ってるより神経使う。空気読んで、相手見て、話考えて」
短く言う。
「意外と消耗する」
相談者は頷く。
「確かに」
「だから家に帰って気が抜けた瞬間に」
少し間。
「疲れが一気に出る」
相談者は視線を落とした。
「でも、疲れだけじゃない気がするんです」
「例えば?」
「家に帰ると急に静かになるじゃないですか。その静けさが」
少し考える。
「何か苦しくて」
日下部は少し考えた。
「学校ってずっと音がある」
「うん」
「話し声も、チャイムも、笑い声も」
短く言う。
「一人になると急になくなる」
相談者は黙る。
「落差か」
「たぶん」
窓の外から風の音が聞こえる。
日下部は言う。
「ジェットコースター降りたあとって急に静かになるだろ」
相談者は少し笑う。
「例えが急ですね」
「似たようなもんだ。ずっと動いてた心が」
少し間。
「止まると急に空っぽに感じる」
相談者は考え込む。
「俺、楽しくなかったんじゃなくて楽しかったからこそ反動が来てたのか」
「その可能性はある」
日下部は頷く。
「あと」
「うん」
「楽しい時間って」
少し間。
「終わる」
相談者は黙る。
「終わったことが寂しいだけの日もある」
相談者は小さく笑った。
「文化祭のあとみたいですね」
「そう」
日下部も笑う。
「終わったから寂しい。それだけの日もある」
相談者は立ち上がる。
「俺、笑ってた自分が嘘だったのかと思ってました」
「嘘じゃない」
日下部は言う。
「楽しかったのも本当」
少し間。
「帰って寂しくなるのも本当。両方あっていい」
相談者は静かに頷いた。
「ありがとうございます」
ドアが閉まる。
楽しかった日の帰り道ほど、心が急に静かになることがある。
それは楽しくなかったからではない。
心がちゃんと動いた一日だったからこそ、その反動で少し寂しくなることもあるのかもしれない。
コメント
1件
うわ、これすごく分かる……「楽しかったのに帰ると虚しくなる」って感覚、ちゃんと名前をつけてくれる話だった。日下部の「ジェットコースター降りたあとの静けさ」って例えがめちゃくちゃ腑に落ちた。楽しかったのも本当、寂しくなるのも本当で、両方あっていいんだって言ってもらえるだけで、なんか心が軽くなる気がする。こういう繊細な感情のグラデーションを描けるの、本当に素敵だな。