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深夜四時四十四分、暗い空が少し明らんでいる。
私はアパートの屋上で、堂々巡舎蘭を待ちぶせていた。
アパートの屋上に渦巻くように夥しい数の蟲達が集まる。
蟲達が散り散りになった後、天国美の身体を乗っ取った堂々巡舎蘭が姿を現した。
「ごきげんよう、黒瀬楓子。……いや、名もなきドッペルゲンガーと呼ぶべきかしら?」
舎蘭が穏やかな表情で私を見る。
「《黒蔦呪縛》」
私は彼女の言葉には答えず、魔法で彼女を拘束した。
カボチャから延びた無数の黒い蔦が舎蘭の身体を縛る。
「あら、捕まっちゃった」
身体を無数の蔦で縛られ、魔力を吸われても彼女はどこ吹く風だ。
「……いきなりの非礼をお許しください。
しかし、貴女が今乗っ取っている少女は私の大切な人なんです。どうか彼女に身体を返してあげてください」
「悪いわね、私は誰の指図も受けないの。それにしても、あなたそんなに天国美ちゃんのことが好きなのねぇ。それはこの子が数少ないドッペルゲンガーの仲間だから?それともあなたがこの子にかつての自分を重ねているからかしら?」
私は知ったような口ぶりで離す舎蘭を睨む。
「貴女じゃ地獄子ちゃんを救うことは出来ないわ」
「貴女は偽物だもの」
「貴女は主人殺しのドッペルゲンガーで、貴女が本当に好きな相手は天国美ちゃん。貴女では地獄子ちゃんを救えないの」
「そんなの、貴女には関係ないでしょう」
「関係大有りよ。私は地獄子ちゃんと天国美ちゃんを救いたいの」
舎蘭がそう呟くと、彼女を縛っていた黒い蔦達がみるみる内に枯れていった。
「……何を驚いているのかしら?黒蔦呪縛は私が編み出した魔法よ。解き方だって当然知っているわ」
警戒する私に「安心して、今戦うつもりはないわ」と舎蘭が手をあげる。
「朝になったらこの子に身体を返してあげる。そうねぇ、その前に一つだけ、貴女に予言を授けましょう」
気がつくと、舎蘭は一瞬で私の肩に手を置いていた。
耳元で、呪いの魔女が囁く。
「次の地獄子ちゃんのデートの日、貴女は死ぬ。そして月での試練を乗り越えて、地獄子ちゃん達の呪いは解けるでしょう」
彼女の予言に、心臓の鼓動が早まる。
暗い空には、朝日が昇り始めていた。
「そろそろ時間ね、また遊園地で会いましょう」
そう言って舎蘭は倒れこんだ。
元に戻った天国美を抱き抱える。
天国美は静かに寝息を立てていた。
黒魔術の占いは未来を確定させる力。
逃れようとしても、運命が収束し、何らかの形で私は死ぬことになるだろう。
天国美の寝顔を見つめ、頬に触れる。
呪いの魔女の予言を頭の中で反芻する。
「そうか、私は死んで、天国美達は救われるのか」
よかった。
私はそう呟き、部屋にそっと天国美を戻した後、アパートを去った。
(タイムリミットまであと18日)
コメント
1件
うわ、重かった……「よかった」って呟く楓子のところ、胸が締め付けられたよ。自分が死ぬことで天国美たちが救われるならそれでいいって、そういう覚悟、ちゃんと静かに決めてる感じが切なくて。予言の魔女の不気味さも、朝日が昇る時間帯の対比も、すごく印象的だった。次、どうなるんだろう……18日後が怖いけど、読むのやめられないな。