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#コメディ時々暗闇
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#妖怪
百はな🍑
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レイが不敵に笑った瞬間、足元から漆黒の『影』が爆発的に展開された。影は触手のように笑顔の住人たちの隙間を縫って走り、彼らの足をすくい、あるいは視界を遮る。レイはその闇のラインをす走り、住人の間を信じられない身のこなしで通り抜けていく。
――一瞬。
レイの身体が影の中に溶けたかと思った次の瞬間、彼はバッファの目の前へと滑り込むように瞬間移動していた。
「こんにちは、バッファ」
「来ましたか、レイ。……あなたの能力も、もちろん知っていますよ。空間に干渉する『影』、これも実によろしくない、厄介な能力だ」
バッファが冷酷に微笑み、その巨大な掌をレイの顔面へと突き出す。カケルを戦闘不能にした、あの最悪の接触。
だが、レイは慌てない。アイツはあらかじめ数秒前の『過去の影』を自らの数メートル後ろに固定していた。突き出された掌がレイの肌に触れる直前、レイの肉体が後ろの影と瞬時に『同期』し、不自然な軌道でバッファの攻撃を完全に回避した。
「……なるほど。バッファ、君の能力の発動条件は、対象に直接『触れること』、で合っているかな?」
バックステップした位置から、レイが冷徹に問いかける。
「どうでしょうね。手品の種明かしを自分からする馬鹿はいませんよ」
バッファが掌を引く。隣で住人の肉壁を受け流しながら、俺はレイの動きを注視していた。あいつは考えもなしに敵の懐に突っ込むような間抜けじゃねぇ。命懸けのフェイントで、確実に何かを掴みやがった。
「レイ! 何か分かったのか!?」
俺の怒声に、レイは視線だけをこちらに同期させた。
「正確な能力の仕組みはまだ。……でも、発動条件は分かったかも」
レイはそう言うと、ジリジリと距離を詰めてくる笑顔の軍勢に目を向けた。
「まぁ、でも。その能力の全貌を理解するのにも、君の操るこの住人たちは少し――いや、かなり厄介だよね。視界の邪魔が多すぎる」
「レイ……。さっき言ってた新技、試さねぇのか?」
俺の問いに、レイは静かに右手を掲げ、人差し指をバッファの顔面へと突きつけた。
「もちろん。今から試すよ」
「ほら、皆さん! もっと、もっとです! 反逆者を追い詰めなさい! 最高に気持ちよくなるために、その邪魔な異分子をすり潰しなさい!」
危惧を感じたのか、バッファが喉を震わせ、さらに大きな声を張り上げて住人たちを誘導しようとする。
その声を遮るように、レイは不敵に微笑み、右手を突き出した。
「――『過去』と『未来』の影をを、今、この点に固定する」
レイが『過去』と『未来』の影を二つ、押し寄せる住人たちの中心で強引に同期させた。
「……おい、あれは特訓の時の……っ!」
俺の網膜が、かつてない空間の歪みを感知する。同期させた二つの影は、互いの因果を食い合うようにして、中心へと無限に収縮し――光すら歪める、一つの小さな『黒い球(特異点)』を顕現させた。
「これさ、ちょっとしたブラックホール。住人たちを傷つけずに、一時的にこの球へ集めるよ」
「なるほどな。そいつは便利だ」
「名付けて――『住民ホイホイ』だ!」
ネーミングセンスは絶望的に壊滅しているが、効果は絶大だった。黒い球が放つ強烈な引力によって、襲いかかってきた笑顔の住人たちが、磁石に吸い寄せられる砂鉄のように次々と球の周囲へと集められ、固定されていく。これなら、少しの間は俺たちも自由だ。
「な、何ですかこれは……っ! 皆さん! 早く、早くあの反逆者たちを始末しなさい!」
バッファの野郎、自分のメッキが剥がれかけているとも知らず、この状況でも住人たちにクソみたいな命令を大声で飛ばしやがって。……いや、待て。命令しているのに、引力圏の外にいる住人たちすら、バッファの声にピクリとも反応していない。黒い球に吸い寄せられるだけの人々。そして――住人たちは全員、ずっと下を向いている。
脳細胞が、野生の直感で一本の線を繋ぎ直す。
「あ……そういうことか!!」
「え、何?」
「レイ、分かったぞ。あの野郎の能力が!」
「まじ!? 先に気付かれるなんて、なんかちょっと悔しいな」
レイは苦笑いを浮かべたが、その瞳には俺への絶対的な信頼が宿っていた。バッファの仕組みさえ割れれば、もうレイがここに留まる理由はない。トオルの予知通り、この最悪の盾を突破する『正解の選択肢』が今、確定した。
「はぁ……。もう、ガイアの元へ向かっていいぜ、レイ。あとは――俺だけで十分だ」
「――うん。頼んだよ、No.1」
影を纏ったレイの肉体が、ビルへ向かって一直線に走り出す。その背中を見送る余裕は、この戦場にはない。
「待ちなさい、レイ! 逃げることは許しませんよ!」
バッファが慌てて大声を張り上げ、レイを追おうと地を蹴りかけた。だが、その巨躯の前に、肉体を滑り込ませ、不敵に笑って立ちはだかった。
「なぁ、バッファ。お前の相手は俺だ」
「退きなさい、アレン! あなた一人で、この街の軍勢に勝てると思っているのですか!」
「軍勢? ハッ、笑わせんなよ。……お前の能力は、人を完璧に操っているわけじゃねぇだろ?」
俺の静かな一言に、バッファの貼り付いた笑顔が、初めてピキリと凍りついた。俺の野生の推測は、すでに確信へとアップデートされている。
「住人たちはお前への忠誠心なんかじゃねぇ、お前の『声』に反応して動いていた。だからレイの技――あの黒い球に、お前の声(空気の振動)がすべて吸い取られた瞬間、住人たちには何も聞こえなくなったんだ。命令(誘導信号)を失った住民は、ただその場で下を向くしかねぇもんな」
「……っ」
バッファの喉から、不自由な引き攣り音が漏れる。
「お前の能力は、多分触れた人間のホルモンをコントロールする力だ。住人を事前に薬漬けにしていたのは、お前の能力(信号)をより強力に反映させるためのベースに過ぎねぇ。……常にデケェ声を出してたのは、ドーパミンがドバドバ出て考えることを放棄している住人に、お前の大声で『もっとハイになれる方向』を指示していただけだろ」
バッファの貼り付いた笑顔が、徐々に焦燥のノイズで崩れていく。
「カケルにはコルチゾール、ってとこか。あいつはこの街の薬を飲まされちゃいねぇが、もともと骨の髄までネガティブ思考だからな。そこにストレスホルモンを強制注入されりゃあ、絶望のあまりシステムフリーズを起こすのは当然だ」
すべてを完璧に見抜かれた衝撃に、バッファの顔から不気味な笑みが完全に消去された。
「くそがぁ……っ!!」
「ハッ、やっと本性を現しやがったか」
俺は獰猛に口元を釣り上げ、拳を固めて一歩前に出た。
「能力の種が割れちまえば、お前はただの雑魚だ。お前のゴミみたいな命令は、もう二度とこの街には響かねぇよ」
俺は胸のポケットから剥き出しの錠剤を一錠取り出し、噛み砕いて飲んだ。
「反撃開始だ」
コメント
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みぃです🤍 第33話、すごかった……! 「住民ホイホイ」って名前に思わず吹き出しちゃったんだけど、その場面めっちゃ格好良かったよ! レイの新技、影を過去と未来で同期させるブラックホール…発想がかっこよすぎる。 そしてアレンがバッファの能力を見破るシーン、痺れた。 「声(空気の振動)」で操作してたっていう種明かし、納得すぎるし、読んでて「あっ!」って声出た。 薬+音(ドーパミン誘導)っていう仕組み、ちゃんと伏線回収してて安心したよ。 ラストの「反撃開始」、震えた…続きが気になるよ。