冷えた風が表面の温度を下げる。ふと上を見上げると、少し色あせた冬空が広がっていた。
空を見ると、思い出してしまう。
彼女と出会ったのは、高校の時だった。教室の窓からじっと空を眺めている彼女に私が声を掛け、次第に仲が深まっていった。
歩いているときでさえ、彼女は定期的に携帯を取り出して空の写真を撮っていた。そんな彼女に、何故そこまでこだわるのかを一度聞いたことがある。
「好きなんだ。空。雲の形とか、空の青さとか、同じように見えて毎日違うでしょ?」
彼女は笑って答えた。綺麗な人だと思った。
寂しい空間に、一つの足音が聞こえる
「今年も来たよ。こんな寒い中居続ける君も可哀想だね。」
「来てる途中の路地で懐かしいのを見たから……ついでに買ってきてあげたよ。」
「……だから、いつか空を飛んだ感想教えてね。」
そう言って、彼女は立ち上がった。
私が好きだった、シャボン玉の容器を置いて。