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21話 129の夢
港に立っている。
でも、
足元の感触が違う。
防波堤はあるのに、
位置が少し内側だ。
波は来るが、
届く場所がずれている。
リカは、
そこに立っている。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
靴は、
いつものより少し軽い。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
夢の中でも揺れている。
団地が見える。
階段はある。
でも、
段の高さが揃っていない。
一段だけ低く、
一段だけ高い。
上っているのに、
進んでいる感じが薄い。
部屋に入ると、
家具の位置が違う。
机は窓の前にあるはずなのに、
少し横に寄っている。
椅子も、
いつもより壁に近い。
違和感はある。
でも、
焦りはない。
ショッピングセンターに行く。
入口は開いている。
中も明るい。
けれど、
店の並びが
少しずつ入れ替わっている。
知っているはずなのに、
初めて見るみたいだ。
人とすれ違う。
顔ははっきりしない。
声も聞こえない。
それでも、
怖くはない。
港へ戻る。
今度は、
団地より近い。
距離が縮んでいる。
リカは、
キーホルダーを握る。
番号を確かめようとして、
やめる。
夢の中では、
必要ない。
そこで、
目が覚める。
天井が見える。
山江マンションの部屋。
窓の位置も、
机の位置も、
全部合っている。
身体は、
落ち着いている。
嫌な感じはしない。
むしろ、
少しだけ軽い。
リカは、
布団の中で
一度だけ目を閉じる。
ずれた島は、
もう遠い。
それでも、
確かにあった。
そう思いながら、
ゆっくりと
朝へ戻っていった。