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諒はベッドに座り直して私の疑問に答える。
「うちの病院の医療事務スタッフって、派遣会社に委託してるんだけど、その中の一人がちょっとね……」
「困ってるなら、その派遣会社に言えばいいんじゃないの?」
「困ってるというか……。自意識過剰とか思い込みとか思われそうな、微妙な感じなんだよな」
「例えば?」
「そうだな……。周りに俺のことを根掘り葉掘り聞いて回っているらしい、とか。うちの診察室って、事務方が入ることってないんだ。ドクターとナース、あとは清掃くらいね。だけどある朝、パソコンとキーボードの間に手作りらしいお菓子が置かれていたことがあったな。メモも何もなくて誰からか分からなかったけど、たぶんその彼女だろう。ナースはそんなことしないし、受付の前を通った時、もの言いたげな顔で俺のことを見てたからな。あとは、お弁当を作って来たんですとか言って、わざわざ医局まで持ってきたこともあったな。もちろん丁重にお断りした。医局エリアも派遣会社のスタッフは基本、立ち入らないことになってるはずなんだけどな」
「それだけ諒ちゃんのことが好きだということなんじゃ……」
諒の顔が不快そうに歪む。
「その人には悪いが、俺は好きじゃないから。あ、こんなこともあったな。他の先生が目撃したんだけど、俺の車の周りをうろうろしていた話とか。仕事が終わって通用口を出たら、いきなり建物の影から音もなく現れて、今帰りですか、一緒に帰りませんか、とか言ってきたりしたのが数回。彼女の就業時間はもうとっくに過ぎているのに、だぜ。あれはなかなか怖かった」
「へぇぇ……」
聞いているうちに気の毒になってきて、相槌を打ちながら私は顔をしかめた。
「こんな感じなんだけど、未遂というか、注意っていうレベルだと思わないか?例えばさ、学生時代のあの人みたいに、勢いよく直撃でもしてきてくれたら、迷惑だってはっきり言えるんだけどさ。そういうタイプじゃなさそうなんだよな」
「諒ちゃんって、女難の相でもあるのかしら……」
諒は淡々と話していたが、一瞬真顔になった。しかし、すぐににやりとした笑みを浮かべる。
「女難ね。それはあるかもな。今夜は酔っぱらった女の世話を焼く羽目になって、その上襲われたわけだからな」
私は首をすくめて慌てて話を元に戻す。
「と、とにかく。諒ちゃんが嫌だと思うなら、派遣会社に言っておいた方がいいんじゃない?だって、立ち入り禁止の場所にも入ったんでしょ」
諒は唸る。
「その時、医局長や師長には相談したから、たぶん何らかの形で本人には伝わってると思う。それに、不快だとか嫌だっていうのは個人的な感情だからな。それ以外は今のところ具体的な被害はないし、仕事はできる人らしくて、管理局の人たちには重宝がられているみたいなんだよな」
「なるほど……」
「だから考えたわけだ。これ以上面倒なことに発展する前に、俺には彼女がいるってことにして、牽制すればいいんじゃないかってね。そうなると、こんなことを頼めるのは、瑞月しかいないんだよ」
諒は言いながら私に近寄り、互いの距離を詰めた。
私は諒が近づいた分彼から離れる。
「そんなの……。今度こそ本当に『そういう人』を見つけた方が早いんじゃないの?前にも言ったけど、諒ちゃんならすぐに見つかるって」
「そう簡単に『そういう人』が見つかれば苦労しないんだよ」
「それはそうかもしれないけど……。そもそも理想が高すぎるんじゃないの?」
諒の言葉に首を傾げながら言った時、彼の唇が頬に触れた。
「りょ、諒ちゃんっ」
驚いた私は、体を引いて彼から逃げようとした。
しかしそれよりも早い動作で諒は私の背に腕を回し、囁く。
「俺のこと、嫌い?」
私は彼から離れようと身じろぎする。
「き、嫌いじゃないよ。諒ちゃんは昔から大好きなお兄ちゃんで……」
「俺とお前は本当の兄妹じゃない。親戚でもない。他人だよ」
諒は私の言葉をわざわざ否定し、私の首筋に唇を寄せた。
彼の熱い吐息にぞくりとし、私の唇からは小さな声がもれる。
「あ……」
諒がしみじみとつぶやく。
「瑞月はもう、本当に大人なんだな」
危うい状況だというのに、私はつい真面目に答えてしまう。
「だって、もう二十六だもの」
「そうだな。香水が似合う大人の女だ」
言いながら諒は私を再び押し倒した。私の太腿を自分の両脚で挟み込み、その手をトレーナーの内側に潜り込ませた。
肌に触れる彼の手に反応しそうになったが、持ちこたえた。諒から逃げようともがく。
「諒ちゃん、やめて。それから私、恋人の役なんて引き受けないよ。だからもう帰る。お願いだから離して」
しかし、諒は無言だった。私の両手を捉えて、頭の上で抑え込む。もう一方の手を器用に使い、私の体からトレーナーを簡単に取り払った。
「な、何するの!」
「まさか瑞月があんな風に男を襲ったりするようになるなんて、夢にも思っていなかったよ。ほんと、驚いた」
「やっぱりそんなの嘘よ。私が諒ちゃんを襲うなんてこと、あるわけないもの」
諒の手から逃げだそうとして、私はじたばたともがいた。けれど、両手と下半身をがっちりと抑えられていて動けない。
「そう思っているのは自分だけだよ。しっかし、酒の力ってすごいよな」
くすっと笑って、諒は私の腰を手で探り、あっという間にスウェットパンツとショーツを下ろした。