テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
くつしたのあな
317
昼休み。教室。
机が少しずつ動かされる。
中央に空間ができる。
自然に。
誰も指示していないみたいに。
でも、止まらない。
「来い」
軽い声。
名前は呼ばない。
でも、分かる。
呼ばれているのは自分。
立たされる。
中央。
囲まれる。
距離が近い。
逃げ場がない。
「なあ」
誰かが言う。
「ちょっとゲームしよ」
軽い。
いつも通り。
笑いが広がる。
誰も否定しない。
「ルール簡単」
続く。
「質問にちゃんと答えろ」
それだけ。
「答えられなかったら?」
別のやつが聞く。
分かっているくせに。
「その時考える」
笑い。
曖昧。
でも、それが一番逃げ場がない。
「いい?」
確認。
でも、答えは待っていない。
もう始まっている。
「最近さ」
最初の質問。
軽いトーン。
「なんでそんな空気悪くすんの?」
一気に来る。
言葉が詰まる。
答えがない。
でも、沈黙は許されない。
「ほら」
急かされる。
「早く」
「……わかんない」
やっと出る。
小さく。
一瞬の沈黙。
そのあと、笑い。
「分かんないって何?」
「逃げてるだけじゃん」
すぐに重なる。
「ちゃんと答えろよ」
トーンが少し下がる。
でも、まだ“軽い”。
「……ごめん」
出る。
反射で。
「謝ってるけどさ」
誰かが言う。
笑いながら。
「それ答えじゃなくね?」
周りも乗る。
「はい、次」
テンポが早い。
止まらない。
「なんでそんな使えないの?」
直接。
喉が詰まる。
さっきより、出ない。
「……できないから」
やっと出る。
「何が?」
すぐ返る。
詰まる。
答えがない。
また同じ。
「はいアウト」
軽く言われる。
笑い。
その瞬間、肩を強く押される。
バランスが崩れる。
でも倒れきらない。
「ちゃんと立てよ」
すぐ戻される。
逃げられない。
「ほら次」
止まらない。
「自分の価値って何?」
問い。
でも、答えは決まっている。
「……ない」
出る。
小さく。
一瞬、静かになる。
そのあと、
「いいじゃん」
笑い。
「じゃあさ」
続く。
「なんでここにいんの?」
詰まる。
呼吸が浅くなる。
頭が回らない。
「……わかんない」
また出る。
「またそれ?」
笑い。
「ちゃんと考えろよ」
少し強く言われる。
誰かが横から言う。
「こいつさ、考えてねえよ」
「だよな」
「空っぽだし」
すぐに広がる。
「ほら」
また急かされる。
「……ごめん」
出る。
もうそれしかない。
「それ禁止な」
すぐにルールが追加される。
笑い。
「“ごめん”言ったらアウト」
逃げ道が消える。
「じゃあどうする?」
問い。
でも、答えはない。
「……わかんない」
出る。
また同じ。
「はいアウト」
即座に言われる。
今度は、後ろから押される。
一歩前に出る。
戻される。
また押される。
動かされる。
位置を。
体を。
意思と関係なく。
「なあ」
誰かが言う。
「こいつさ」
周りに向かって。
「どう扱えばいいと思う?」
問い。
でも、全員に向けられている。
「使うしかなくね?」
「それな」
即座に返る。
「じゃあさ」
また決まる。
「ちゃんと使われろよ」
軽く言われる。
逃げ場がない。
否定もできない。
「はい、もう一回最初から」
誰かが言う。
笑いながら。
リセットされる。
同じ質問。
同じ流れ。
同じ結末。
誰か一人がやってるんじゃない。
全員が回している。
止める理由がない。
責任も分かれている。
だから、終わらない。
「なあ」
最後に誰かが言う。
「これさ、いつまでやる?」
一瞬の間。
「飽きるまででよくね?」
笑い。
全員が、なんとなく頷く。
それで決まる。
終わりがないことが。
コメント
1件
読んだ……これ、めっちゃ息苦しかった。「軽い」って繰り返されるのが逆に重くて、逃げ場のなさがひたすら積み重なる感じ、すごかった。質問に答えられなくて押されて、またルール追加されて、誰も止めない空気……読み終わった後もしばらくもやもやした。リアルな描写に胸が痛くなったけど、それだけ引き込まれたってことだよ。ruruhaさん、この空気感の作り方うますぎるわ。でも続き、主人公はどうなっちゃうんだろう……また読みに来るね。