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「そうだ!私これから帰るんですけど、佐倉くんはどうしますか?」
「い、いや、僕は用があるから……」
(なんだ、僕の名前知ってるのか…)
「そうですか、じゃあさようなら。」
藤本は僕に笑いかけてキャンパスを出た。
僕は藤本がいなくなるのを確認してから、端の方で笑いをこらえている友人の方へ行った。
友人は僕に気づき、笑いで出たらしい涙をぬぐいながら僕に言った。
「いやぁお見事お見事!まさか成功しちまうとはなーー。あぁ本当に笑えるぜ。」
「笑えねぇよ。……第一、これからどうすればいいんだよ。」
僕はその事ですごく気が重かった。
「そのまま付き合っちまえば?お前、今彼女いないんだろ?」
「…いないけどさ。」
「んじゃそれで決定♪」
「バカ。好きじゃないのに付き合えるか!」
「まぁ、いいからいいから。……じゃあ、お前のがんばりを評して今日は飯をおごってやろう。」
「本当か!?」
「あぁ、俺に任せろ!!」
友人はドンと自分の胸をたたき、うはははと笑った。
僕は
「飯をおごる」
という言葉で今までの事などすっかり忘れてしまった。
次の日。
(……頭いてぇ…)
別に二日酔いじゃない。
僕は未成年だし。
だが飲んでないとは言わないでおこう。
とにかく!
頭痛の原因は酒じゃない。
なにかっていうと…
「佐倉くん。おはよう。」
この藤本だ。
藤本は僕がキャンパスに入るなり、僕の所に寄ってきた。
不幸な事に取ってる講義のほとんどが、藤本と一緒だったのだ。
二日連続で気が重い。
(頼むから人目につくような事しないでくれよ……)
そう切に願ったところで、藤本には伝わらない。
でもまぁそんな心配をしなくてもいいか。
だって僕も藤本も、目立つ方じゃないからな。
「あの、佐倉くん。あさっての日曜日、空いてますか?」
「日曜?なんで?」
「その…デートってわけじゃないんですけど……映画でも見に行きませんか?」
それはどう考えてもデートじゃないか。
僕は最初断わろうとしたが、そのデートの時に別れを言えばいいと思い、
「いいよ。」
と言った。
それを聞くと藤本は嬉しそうに自分の席についた。
僕はなるべく藤本とは離れられるような場所に席をとった。
するとたまたま隣にいた(昨日のジャンケンを持ちかけてきた)友人が話しかけてきた。
「バッチリ聞いちゃったぜ。お前本当に付き合う決心をしたのか?」
「違うって。その時に別れるんだよ。」
「ふーん。そっかぁ。つまんねーな。」
「何がだよ。」
その後友人がやけにわざとらしくにやけながら
「別に〜。」
と言ったので一回だけ頭をはたいておいた。
とにかく僕はキッパリと言うんだ。
――好きじゃない
と。