五分後、家の中からインターフォンの音が聞こえた。
「あ、来たんじゃない?」
「ちょっと行ってくるね」
葉月は家の脇をすり抜けて、玄関へ向かった。
玄関へ行くと、大きな紙袋を二つ抱えた舟木が立っていた。
「いらっしゃい」
「こんばんは! いきなりで、なんかごめんね……」
「いえ、大丈夫ですよ。ちょうどみんなでバーベキューをしていたので」
「みんな……?」
「まぁご近所さんみたいなものです。よかったら舟木さんも一緒にいかがですか?」
「え? いいんですか?」
「是非どうぞ。こっちです」
葉月は舟木を庭へ案内した。
舟木が庭に姿を現すと、皆の視線が一斉に集まった。
「あ、こちらはお友達の舟木さん。ハーブティーをいっぱいもらったからって、わざわざ届けに来てくれたの」
「初めまして、舟木です」
「こんばんはー」
「いらっしゃーい」
「ようこそ! さぁ、座って座って」
その時、亜美が大声を上げる。
「それ全部ハーブティーなんですか? うわぁ、私もハーブティー好きなんですー」
それを聞いた舟木は、紙袋をテーブルの上に置くと女性達に言った。
「いっぱいあるから、もしよかったら皆さんで分けて下さい」
「うわぁ、ありがとうございまーす」
「わーい、嬉しい」
すると、今度は雅也が舟木に声をかけた。
「舟木さん、男はこっちこっち! ちょうどお肉焼けたからどうぞー」
「あ、はい。じゃあお邪魔します」
舟木は男性陣のテーブルの椅子に座った。
舟木の斜め前に座っていた航太郎は、今日初めて会う舟木を、いぶかし気にじーっと見ている。
そんな息子を見て、葉月は吹き出しそうになった。
「航ちゃんったら、こいつは一体誰なんだって、しっかりチェックしてるじゃん」
「ほんとほんと、穴が開きそうなほど見つめてるよ? 大丈夫かな?」
「でも、パパ候補はやっぱり、右隣に座ってる鉄道写真家だよねー?」
「そうだよー。だって航ちゃんの推しの人だし、憧れの人なんでしょう? 舟木さんは絶対かなうわけないじゃん」
莉々子と亜美が盛り上がっているところへ、葉月が口を挟んだ。
「だからぁ、そういうんじゃないって言ってるでしょう?」
「えー、なんでー? いいじゃーん」
「でもね、もし……もしもですよ? 桐生さんが葉月さんに迫って来たら、どうしますか?」
葉月は亜美の言葉にドキッとして、ワインを吹きそうになった。
そして、先ほどキッチンで起きた事を思い出す。
「ちょ、ちょっと……ゲホッゲホッ、いいかげんにしてよー。むせちゃったわ…」
「ごめんごめん。でもさ、そういう可能性もあるんだから、シュミレーションしておかないと」
「ないない。だってあれだけのイケメンなんだよ? もう彼女がいるに決まってるって」
「そうかなー?」
莉々子が首を傾げると、亜美が言った。
「私、わかるんです」
「え? わかるって、何が?」
「桐生さんの気持ち」
「えっ? どうして亜美ちゃんがわかるのよ?」
「私、看護師という職業柄、つい相手の気持ちを読み取る癖がついちゃってるんですよ。だからわかっちゃうんですよねー」
「なるほど…。で、亜美ちゃんから見た桐生さんの気持ちって、どんな感じなの?」
「フフッ、ずばりビンゴですよ」
「ビンゴ?」
今度は葉月が首を傾けた。
「はい。桐生さんはポーカーフェイスですが、時折無意識に葉月さんのことを目で追ってます」
「ひゃーっ! 亜美ちゃんするどいーっ! で、それが意味するところは?」
「明らかに葉月さんのことが気になっている証拠ですね。フフッ、いくらポーカーフェイスでも、この鋭い亜美さんの勘は絶対にごまかせませんからねー!」
亜美は楽しそうな笑い声を上げると、グラスのワインを飲み干した。
その時、葉月はこんな風に思っていた。
(そんな訳ないじゃん。だって私は子持ちのバツイチだよ? ないない、絶対にない……)
「じゃあさ、航ちゃんの新しいパパは、桐生さんで決定だね?」
「ですです。それ以外にいます?」
「舟木さんは?」
「うーん、彼は多分、当て馬的な立ち位置かと……」
「亜美ちゃんって結構残酷ーっ」
二人が調子に乗って大声で話しているのを聞いて、葉月は慌てて「シッ」というポーズを取る。
その仕草に、二人が慌てて声を小さくした。
葉月がチラリと隣のテーブルを見ると、男性陣は何かの話で盛り上がっているらしく、こちらのことなど全く気にしていない。
そこで葉月はホッとした。
そこで莉々子が言った。
「あっちはあっちでも盛り上がってるから大丈夫だよ。それよりさ、桐生さんって、まさか結婚はしてないよね?」
「結婚指輪ははめてませんでした」
「なら大丈夫か。たださぁ、テレビに出るような人だから、出会いは多いよねー」
「え? 桐生さんってテレビに出てるんですか?」
「うん。鉄道写真の自分の番組持ってるよ」
「ひゃーっ、ガチの有名人だったんだ! テレビ業界は華やかだってよく聞くから、莉々子さんの言う通り、出会いは多いかもー」
「それにしてもさ、航ちゃんのあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たよね?」
「言われてみればそうかも。最近反抗期でムスッとした顔ばかりしてるから、あんな顔は久しぶりかも」
「葉月さんのお父様がまだご健在だった頃は、よくここで今日みたいにパーティ―をしたでしょう? だから航ちゃんのあんな笑顔を見ていると、まるであの頃に戻ったみたい」
葉月もそんな気がした。
息子の無邪気な笑顔を久しぶりに見ていると、父がいたあの頃を思い出す。
その時、また葉月の携帯が鳴った。
今度は電話のようだ。
「葉月ちゃん電話!」
「土曜のこんな時間に誰だろう?」
携帯を見ると、元夫・啓介の名前が浮かび上がっていたので、葉月は驚いた。
「えっ?」
「どうしたの?」
「元旦那から……」
その言葉に、莉々子と亜美は驚いて、思わず顔を見合わせた。
___________________
【🌸お知らせ🌸】
いつも小説を読みに来て下さり、ありがとうございます。
また、沢山のコメントや♡ポチッ👆にも、心から感謝です。
「X」でもお伝えしたとおり、テラーノベル様が運営する『テラードラマ』で、
『マウントリベンジ』がショートドラマ化されました。
ドラマは本日より配信スタートです。
ショートドラマ向けに脚本を作っていただいたので、設定にはかなり変更があります。
小説と同じイメージでドラマを見ると、驚かれる方もいるかなと思い、あえてここでお伝えしておきます。
その上で、小説とはまた一味違った『マウントリベンジ』をお楽しみいただければと思います。
(ラストにちょっぴりほっこりシーン💚が入っているので、原作者としては大満足です🎵)
凪子役には相沢菜々子さん。そして、信也役には中塚智さん。
どちらもイメージにピッタリの素敵な俳優さん方です。そして演技力も素晴らしいです。
無料配信7話の中では、信也もしっかりと登場しますので、ご興味のある方は、是非覗いてみて下さいね!
テラードラマ➡https://teller.jp/short-drama/
瑠璃マリコ
コメント
64件
凄いマリコさん素敵な事が現実になりましたね。私はまだまだですよ仕事しながらの小説書いてますからね頑張って下さい~👏
すごいですね。おめでとうございます!
マウントリベンジ、ショートドラマ化おめでとうございます💐🎉 覗きに行って来ました😆🎵 不良輔、チャラそうでイメージにピッタリ‼️😁 凪子さん、芯の強そうな美人さんで素敵....💕✨ 信也さんも楽しみです😎💖