テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第8話 1895 映画スポット 回る映像、止まらない時間
1895スポット。
映画スポット。
入口の天井に、
クリスタルランプが並んでいる。
石の中に光が留まり、
一定の明るさで床を照らす。
揺れない。
瞬かない。
ただ、点いている。
リカは、
肩までの髪。
少し外にはねている。
上着の袖は短めで、
指先が見える。
隣の友だち。
背は低く、
丸い襟。
靴のかかとがすり減っている。
もう一人。
髪は短く、
首に布を巻いている。
視線は先。
映写室の方を見ている。
館内に入ると、
ランプの数が減る。
通路ごとに間隔が空き、
光は必要な分だけ残されている。
影が伸び、
足元が静かになる。
案内板は紙。
上映番号。
時刻。
修正の跡。
誰かが書き足した線。
平均で、
五十ほどの映画が回っている。
時間帯ごとに入れ替わり、
フィルムは休まない。
座席。
硬い。
背筋が伸びる。
天井のランプが、
ひとつずつ消える。
通電が切られ、
光が石から引く。
暗さが落ちる。
前だけが残る。
映写室の奥で、
フィルムが回る音。
一定。
人の手が触れている。
画面に、
懐かしいアニメ映画。
線は少なく、
動きは素直。
間が長い。
誰も話さない。
笑いは、
少し遅れて広がる。
家には、
映像を見る機械がない。
動く絵は、
ここだけ。
途中で、
画面がわずかに揺れる。
映写室の影が動く。
すぐに戻る。
物語が終わる。
しばらくして、
クリスタルランプが点く。
一斉ではない。
順番に。
通路から、
出口へ。
光が戻り、
人の形がはっきりする。
立ち上がる。
服のしわを払う。
外に出ると、
空は緑寄り。
昼と夜のあいだ。
リカは、
何も言わない。
でも、
胸の中で、
映像がまだ動いている。
それが、
唯一の映像娯楽。
それで、
足りていた。