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#怪異
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#和風ファンタジー
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#怪異
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2026年7月23日 午前12時50分
■■県童ノ宮市湯山町新大群■■-■■ 塚森本家
鳥羽リョウ
「――おい! メッセージを読んだぞ! 一体、何がどうなってる!」
「やぁリョウ君……」
「何がやあリョウ君、だ!」
最初から怒鳴りつけてやろうと思っていたわけじゃない。
だけど、車窓から見えた神職姿の中年男の表情を見た途端、底知れぬ苛立ちが胸の奥底から沸き上がり、俺の声は思った以上に荒くなっていた。
事故を起こす前に、とサイドブレーキを入れエンジンを落とす。
スーパーつかもりのロゴが入った商用車を停車させたのは手入れのよく行き届いた生垣に囲まれた大きく立派な和風建築のお屋敷。この近所では知らない者は恐らくいないであろう童ノ宮の名士、塚森家の本家だ。
そして、俺、鳥羽リョウはスーパーつかもりの雇われ店長であり、言わば塚森家の人間とは雇用関係なのだが、今はそんなことに気を囚われている余裕がない。
飛び降りるようにして車から降り、玄関の前に立つ神職姿に向かってゆく。その困ったような、それでいてどこかノホホンとした表情に苛立ち、思わず平手打ちをかましてやりたくなるが、勿論そんなことはできやしない。
こいつは塚森レイジ。童ノ宮の氏子総代である塚森家の現当主。
確か今年で四十六歳だが俺からすればどこか頼りなく見える。多分、こいつのことを俺が生まれた時から知っているからだろう。
もっとも平安の世から生きている俺にとっては誰だって青二才だが。
「キミカが殴られて――。重症だっていうのは本当なのか?」
吹き上がりそうな感情を噛み殺しながら俺は本題に入る。
「なんで、そんなことになる? だって、あいつは塚森家のお役目の一環としてナントカって言う芸能人のために街を案内してたんだろ?」
「……栗原マキオ君ね。結構有名な子役だよ」
「誰であろうと知るか。もっと分かるように言え」
「いろいろと複雑な事情があるんだよ。……少し厄介な事情があって、マキオ君のことを塚森家で一晩預かることになって、それで彼のお母さんとキミカが童ノ宮の境内公園で落ち合ったんだけど――」
レイジの口調は歯切れが悪い。こいつは小さい時からそうだ。
相手のことを思いはばかってなのか、レイジは強い物言い、直接的な表現を嫌う。それはレイジの優しさの表れなのだが、同時に話し相手がイラつく一因にもなっている。
「じゃあ、賊は公園で襲って来たってことだな。キミカはそいつからマキオって坊やの母親をかばったってことか……」
嫌が応にも、俺は脳内で世にも惨たらしい映像を自動再生してしまう。
真夏の境内公園――。
そこで俺の知らない女性と何ごとかを談笑しているキミカ。そこにこれまた見慣れぬ不審な男が歩み寄り、女性にちょっかいをかけてくる。
キミカは性を守るため、無謀にも自分の体躯の何倍もあるような相手の前に震えながら立ち塞がって……。
そこで俺は脳内映像を緊急停止。とてもじゃないがそこから先を俺は見たいとは思えない。御免こうむる。全く冗談じゃない。
吐き気を堪えて俺は言った。
「捕えてくれた柴崎さんと秘書のお嬢さんには礼をするべきだろうな。……それで賊はどうした? 警察に突き出したのか?」
「うん。それが、なんだけどね……」
「まだ、どこかに転がしてるのか? だったら――」
俺に始末させろ、と言う言葉が口を突いて出る寸前、辛うじて俺はそれを飲み込む。だけど、本気だった。
まだ見ぬ襲撃者に対する怒りと殺意で俺は目の前が赤く染まっていくような錯覚に捕らわれる。前にも言ったかもしれないが人であろうと怪異であろうと、俺はキミカに危害を加える者に容赦はしない。
絶対にだ。
「それで、狼藉者と言うのはどんなやつなんだ?」
「男じゃない」
「……あぁ? どう言う意味だ?」
「だから――、そのまんまの意味だよ。……キミカに酷いことをしたのは男性じゃない。女性さ」
答えたレイジの声が僅かにうわずる。思わず俺はやつを二度見していた。レイジの瞳が昏い。伏し目がちになり、俺と目を合わせようとしない。
子供の頃からレイジ己の内側に怒りを溜め込み、爆発寸前まで耐えるという悪い癖があったが、これは危険な兆候だった。
少なくとも、臨界値はとっくに振り切れているように見えた。
「女性ってまさか、お前……」
「そう、そのまさかだよ」
言ってからレイジは大きく息を吐く。そして、いつもと変わらない穏やかな口調でこう続けた。
「キミカを殴ったのはマキオ君の母親――、栗原ミサキだよ」
コメント
1件
あら?おっちゃんイライラしてるわね…。でも「人であろうと怪異であろうとキミカに危害を加える者に容赦はしない」って台詞、めっちゃ重くてカッコよかった🔥 しかも犯人、まさかの母親ってオチ!?それは予想外すぎるだろ…続きすぐ読まなきゃ!