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#王子
すっこ
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#主人公最強
杯雪乃
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母は、
自分が死んだあとまで、
計画していた。
七枚の死亡通知を、
私に見つけさせること。
一枚ずつ、
過去を辿らせること。
そして。
七枚目まで来た私に、
二十九年前の真実を見せること。
「ここまで全部」
私は母の手紙を見つめた。
「母の予定どおり?」
真壁刑事が首を振る。
「全部ではありません」
「でも七枚を置いたのは母の指示」
「その可能性は高い」
「三田村さんが実行した」
「おそらく」
なら。
母が死んだあと、
三田村が母の家へ入り、
七枚を置く。
私は遺品整理で、
それを見つける。
一枚目。
高瀬。
そこから、
過去へ引きずり込まれる。
「母は私が調べるって分かってた」
父が言った。
「千佳は、お前の性格だけはよく知ってた」
「十二年も会ってないのに?」
「だからだろ」
私は父を見る。
「どういう意味」
「会わなくても」
父は言った。
「お前が何を許せなくなるかは、知ってた」
母の遺品から、
未来の死亡通知が出る。
その一人が、
まだ生きている。
放っておけるはずがない。
母は、
そこまで読んでいた。
気持ち悪い。
でも。
少しだけ、
悲しかった。
*
母の手紙には、
続きがあった。
七枚は順番どおりに渡してください。
ただし、澪が一枚目を捨てた場合は中止してください。
私は眉を寄せた。
「中止条件がある」
真壁が読む。
捨てるなら、それが澪の選択です。
私の死後まで、娘の人生を決めたくありません。
その一文で、
手が止まった。
「今さら……」
思わず、
笑った。
生きている間は。
何もかも決めた。
私の名前。
家族。
過去。
知る権利。
知らない権利。
全部、
勝手に。
なのに。
死んでから、
選ばせる。
「ずるい」
私は呟いた。
誰も何も言わなかった。
続きを読む。
一枚目を調べた場合のみ、二枚目へ進ませてください。
二枚目まで来たら、美佐子は話します。
三枚目まで来れば、雅彦は逃げません。
父が苦い顔をする。
「見透かされてる」
「逃げたでしょう」
「昔はな」
母は、
人間の弱さをよく知っていた。
だから、
死亡通知を順番にした。
誰に何を見せれば、
次の人間が口を開くか。
そこまで計算している。
四枚目で、由紀子は出生届について話します。
五枚目で、柿崎先生は二十九年前の記録を出します。
六枚目で、三田村さんは私との約束を守るはずです。
私は止まった。
「六枚目」
現在の六枚目は、
相原奈緒。
三田村ではない。
「やっぱり変わってる」
真壁が頷く。
「千佳さんの計画と、現在の通知は途中から分岐しています」
母が予定していた六枚目。
三田村。
現在の六枚目。
相原奈緒。
誰かが、
書き換えた。
「七枚目は?」
紙をめくる。
そこだけ、
母は具体的な名前を書いていなかった。
七枚目は空欄にしてください。
私は息を止めた。
「母も空欄?」
六人が澪を選ぶなら、それを受け入れます。
「じゃあやっぱり」
十五年前と同じ。
六人が、
私を七人目にする。
母は、
それを止めない。
でも。
続き。
ただし、澪の死亡日時は書かないでください。
私は七枚目を見る。
現在。
明日 午後六時。
「これは母じゃない」
真壁が言った。
「はい」
澪を死なせる必要はありません。
母の字。
はっきり書いてある。
七枚目は、澪を殺すための通知ではありません。
澪自身に、続きを選ばせるための紙です。
私は紙を握った。
誰かが、
そこへ死亡日時を書いた。
十五年前の事故と、
同じ午後六時。
「犯人は」
私は言った。
「母の計画を知ってる」
「かなり詳しく」
「でも母の意図は無視してる」
「そうですね」
つまり。
現在の仕組みは、
母が作った骨組みを使っている。
でも。
母が止めようとした場所から先を、
誰かが勝手に続けている。
人を本当に殺す形で。
*
手紙には、
もう一つ封筒が入っていた。
表。
七枚目まで来た澪へ。
私宛て。
今まで、
誰にも開けられていない。
封を切る。
母の字。
最初の一行。
ここまで来たなら、あなたは私をかなり嫌いになっていると思います。
私は、
少しだけ笑った。
「分かってるじゃん」
父が何も言わない。
続きを読む。
それでいいです。
私はあなたに、許してもらうためにこれを残したのではありません。
胸が詰まる。
私がしたことを、全部知ってほしかった。
私はあなたの母親になろうとして、何度もあなたの人生を奪いました。
守ったこともあります。
でも、守ったから奪っていいわけではありません。
私は、
母がこんな文章を書く人だったのかと思った。
生きているとき。
一度も。
こんなふうに話してくれなかった。
だから最後は、返します。
また。
返却。
名前も。
家族も。
過去も。
私の娘であることも。
私は、
そこで読むのを止めた。
「私の娘であることも?」
父が小さく息を吐く。
母は、
最後に。
私から母親まで奪うつもりだった?
違う。
文は続いている。
水城澪でいる必要はありません。
私の娘でいる必要もありません。
誰の娘でもなくていい。
誰かの娘を選んでもいい。
名前も、自分で決めてください。
私は、
目を閉じた。
ずっと。
自分が誰の子か知りたかった。
母は、
最後に。
そんなことは自分で決めろと書いた。
それは答えではない。
でも。
少なくとも。
今までの母とは違った。
*
その下。
話は、
二十九年前へ戻っていた。
私が病院から連れて帰った赤ん坊は一人です。
やはり。
翌朝、家には二人いました。
誰がもう一人を置いたのか、私は最後まで確認できませんでした。
「母も知らなかった」
父が呟く。
でも、私は二人とも育てることにしました。
私は息を止めた。
「二人とも?」
二十九年前。
母の家には。
最初から、
二人の赤ん坊がいた。
「じゃあ、一人は途中で消えた?」
父が答えない。
手紙。
一人は、三か月後に連れていかれました。
誰に?
次。
連れていった人の名前は書きません。
「何で!」
思わず声が出た。
最後まで、
隠す。
でも。
次の一文。
本人がまだ生きているなら、その人に決めさせたいからです。
また。
本人に選ばせる。
「母は知ってたんだ」
私は言った。
「その人が誰か」
真壁が頷く。
「しかし書かなかった」
だから、
七人を同じ場所に集める。
当事者本人に、
最後に名乗らせるため。
手紙は続く。
三人の娘のうち、一人だけは、名前を戻してはいけません。
胸が冷えた。
以前。
母は合意書の裏へ書いていた。
本当の名前に戻した瞬間に死ぬ子がいる。
「誰?」
続き。
その子は、二十九年前から一度も戸籍上存在していません。
「存在してない?」
存在させれば、二十九年前の事件が再開します。
真壁が眉を寄せる。
「事件?」
だから私は、その子を別の二人の名前の中に隠しました。
私は、
手紙を落としかけた。
「だから」
三人の娘の名前が、
何度も入れ替わっていた。
一人を隠すため。
澪。
ひかり。
その二つの名前を。
三人で使った。
誰が、
どの時期にどの名前だったのか。
分からなくするため。
「第三の子を」
私は呟いた。
「存在しないまま生かすため?」
母は、
人生を奪った。
でも。
少なくとも本人は、
そうすることで命を守ったつもりだった。
*
最後のページ。
そこには、
具体的な指示があった。
七枚目まで来たら、旧産科病棟地下資料室へ行ってください。
「明日の場所」
午後六時ではありません。
私は息を止めた。
午後十一時四十分です。
やっぱり。
母の計画に、
午後六時はない。
誰かが書き足した。
そこに七人が揃えば、地下資料室の金庫を開けてください。
「金庫?」
柿崎先生が顔を上げた。
「まだ残っている?」
「知ってるんですか」
「昔の保管庫です」
暗証番号。
母の手紙には、
七桁の空欄。
番号は、七人が一桁ずつ持っています。
私は理解した。
だから。
七人必要なのだ。
一人では、
金庫を開けられない。
「中には何が?」
次。
三人分の記録があります。
出生資料。
写真。
DNA検査。
本当の経緯。
全部。
そして、もう一通。
私自身の死亡通知があります。
私は止まった。
「母の?」
八枚目。
十五年前。
母へ届いた、
母が作っていない死亡通知。
「それを母が持ってた?」
八枚目を作った人間が、現在の死亡通知を続けるなら。
母の文章。
その人は必ず地下へ来ます。
胸が冷える。
母は。
自分が死んだあと。
八枚目の作成者を、
地下資料室へ誘い出すつもりだった。
「つまり」
真壁が言った。
「七人を集める目的は、出生の真相を明らかにするだけではない」
「犯人を呼ぶため」
私は答えた。
母を一度殺し。
佐伯の息子を死なせ。
死亡通知を本物の殺人装置に変えた人物。
その人物なら。
七人全員が集まる地下へ、
必ず来る。
「母は」
私は言った。
「死んだあとに犯人を捕まえるつもりだった」
誰も否定しない。
最後。
母の手紙には、
もう一行だけあった。
ただし、澪。
ここまで来ても、行きたくなければ行かなくていい。
私は、
その文字を見つめた。
最後の死亡通知は破ってください。
そして。
私の計画ごと、終わらせてください。
スマートフォンが鳴った。
例の差出人。
明日 18:00
旧産科病棟
七人目が来なければ、一人死にます。
母は、
私に選べと言った。
行くか。
行かないか。
最後の死亡通知を、
破るか。
でも。
母の計画を乗っ取った誰かは、
また。
私に選ばせないために、
他人の命を使っていた。
コメント
1件
え、ちょっと待って…めちゃくちゃ重い回だった…! 母が死後まで全部計画してたってのがまず鳥肌なんだけど、特に「私の娘であることも返します」ってところが胸にグッときた。許しを求めるんじゃなくて、最後に選択権だけは澪に返そうとしたんだな…って思うと、憎めないというか、切ないというか。 でもそれ以上に、母の計画を乗っ取って「本当に人を♡♡♡形」に変えた奴がいるってのが一番ヤバい。あと2話でどう決着つくんだろう…まじで続きが気になる🔥