テラーノベル
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朝。
教室の空気が違った。
遥は席に着いた瞬間、その違和感に気づく。
静かだった。
いつもなら聞こえる笑い声。
机を蹴る音。
誰かが肩をぶつけてくる感触。
何もない。
担任が教室へ入る。
ホームルームが始まる。
連絡事項。
小テスト。
提出物。
全部、普通だった。
チャイムが鳴る。
担任が出ていく。
その直後。
蓮司が立ち上がった。
教室中の視線が集まる。
「終わりにしよう」
一言だった。
誰もすぐには反応しない。
「もういい」
静かな声。
「飽きた」
笑いながら言ったわけじゃない。
本当に、興味をなくしたような口調だった。
「これからは普通でいい」
教室がざわつく。
「え?」
「マジで?」
「あいつは?」
誰かが遥を見る。
蓮司は肩をすくめた。
「好きにすれば」
それだけ言って席へ戻る。
その日。
誰も遥に近づかなかった。
殴られない。
暴言もない。
物も隠されない。
昼休みも。
放課後も。
静かなまま終わる。
帰り道。
日下部は違和感しかなかった。
「……何考えてる」
蓮司が止めるとは思えない。
あいつはそんな人間じゃない。
なのに。
実際、止まっている。
教室の窓から見える遥は、
何も変わらない顔で歩いている。
安心しているようにも見えない。
むしろ。
どこか張り詰めていた。
夜。
遥は部屋の隅に座っていた。
静かだ。
静かすぎる。
学校で何もなかった。
それが頭から離れない。
(……なんで)
終わった?
そんなはずがない。
あれだけ続いたものが。
昨日まで当たり前だったものが。
一日で終わるはずがない。
眠れない。
耳を澄ます。
廊下。
階段。
誰かの足音。
何も聞こえない。
それでも身体は眠らない。
「……来る」
誰にも聞こえない声で呟く。
終わるわけがない。
終わるなら。
理由がある。
理由が分からないものほど怖いものはない。
翌朝。
教室へ入る。
何もない。
二日目。
何もない。
三日目。
何もない。
周囲は本当に”普通”に戻り始める。
けれど。
みぅ 。
遥だけは、少しずつ壊れていく。
「今日は何もされなかった」
その安心ではなく、
「今日はまだ来なかった」
という恐怖だけが積み重なっていく。
教室の後ろ。
蓮司はその様子を一度だけ見て、小さく目を細めた。
「……まだ耐えるか」
誰にも聞こえないほど小さな声だった。
その意味を知る者は、
まだ誰もいなかった。
コメント
1件
ああ、これめっちゃ怖いやつだ…! いじめが突然終わったのに、遥が逆に「まだ来ない恐怖」で壊れていく描写が刺さったわ。蓮司の「まだ耐えるか」も意味深すぎて、ただの終わりじゃない匂いがぷんぷんする。静かだからこそ不気味さが増す感じ、めちゃくちゃ上手いな。続きが気になりすぎる🔥