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※ここ(相談室)の文体こっちだった……汗
(室内。薄暗い午後。扇風機の音がゆっくり回っている)
(沙耶香がグラスに氷を落とす)
蓮司
「……ねぇ、もう夏終わらない?」
沙耶香
「八月に入ったばかりよ。まだ全然これから」
蓮司
「うわ、絶望した」
(グラスを受け取り、氷を口に入れる)
蓮司
「“これから”とか、しんど。ねえ、沙耶香ってさ、
なんでそんな平気そうな顔してんの」
沙耶香
「それ、褒めてる?」
蓮司
「いや。呪いの話してるだけ」
沙耶香
「そう。じゃあ私、あなたの呪いね」
蓮司
「……はは、そういうの、涼しくていい」
(しばらく沈黙)
蓮司
「祭り、行かない?」
沙耶香
「浴衣もないし、暑いし、人多いし」
蓮司
「“ないし、ないし”って……
じゃあ、行く理由が俺しかないじゃん」
沙耶香
「その理由、薄くない?」
蓮司
「……たまには、ちゃんと“いてほしい”って思うじゃん、俺だって」
(沙耶香、目線をずらして小さく笑う)
沙耶香
「そうね。でも、“いてあげる”って言うと怒るでしょ、蓮司」
蓮司
「……なんでわかってんだよ、そういうの」
沙耶香
「知らない。あなたのことなんて、なにも」
(扇風機の風が二人の髪を揺らす)
蓮司
「……なあ、
冷たい水が喉通ると、
“生きてる”って気がして、ちょっとムカつく」
沙耶香
「でも、それで笑ってる。
蓮司、そういうとこある」
蓮司
「沙耶香、俺より俺のこと冷静に見るのやめてくんない?」
沙耶香
「だって、誰が見てあげるのよ。あなたのこと」
(蓮司、ふっと目を伏せて笑う)
蓮司
「……死ぬなよ。ずっと、生きてろよ」
沙耶香
「命令?」
蓮司
「願望、ってことでひとつ」
(沙耶香、何も返さず、グラスの氷をくるりと回す)
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