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コメント
2件
第30話読み終えたよ…。早坂くんの冷静な追い詰め方、ゾクゾクした。特に盗聴器の暴露はカマかけだったんだね。青木のリトマス試験紙みたいな反応も笑えちゃったけど、最後の早坂くんの「全然スッキリしねぇ」にグッときた。七瀬に伝えない決意も含めて、重くて温かい話だったよ🥀
早坂
青木
早坂
早坂
青木
必死に平然を装っているけれど、目が完全に泳いでいる。
早坂
早坂
早坂
その証拠のひとつが名刺だ。
例のカッター入り封筒を渡す際に、この男は名刺も一緒にスタッフへ渡している。
職種も所属部署もご丁寧に記載済み。
だから勤務先を探すのは簡単だった。
ただ、住所の特定となると難しい。
個人情報になるからだ。
けれど幸か不幸か、この男は敵を作り過ぎた。
早坂
早坂
早坂
青木
図星を突かれ、カッと顔を赤く染める。
周囲に敵を作り、職場で孤立しているのが青木の現状だ。
ちなみに職場にも素性は隠していた。
……隠せるものなんだな、意外と。
早坂
早坂
青木
わざとコイツと同じ台詞を口にすれば、青木はますます顔を赤らめた。
青木
青木
早坂
男の言葉を遮って、俺は最後の止めを刺す。
早坂
早坂
早坂
早坂
青木の顔色がみるみるうちに青ざめていく。
怒りよりも怯えの色が濃く出ている。
ぎりっと下唇を噛み締めて、俺を睨みつけている青木の姿は、まるで親に叱られて拗ねている子供のようにも見えた。
警察に訴えたところで事件は揉み消されるかもしれないが、それよりも悪どいやり方がある。
それは恐らくこの男が、そして青木新一が一番恐れていること。
自身のスキャンダルが、世間に明るみに出ることだ。
大物政治家による隠蔽行為に、息子がしでかした不祥事の数々。
週刊誌の記事を彩るには最高のネタだろう。
……実際には、ネタを週刊誌に売るつもりはない。
そんなことをすれば、今度は七瀬が週刊誌の連中に追われる羽目になりかねない。
青木の家族や他の被害者、彼らにまで迷惑をかけてしまう。
それは俺も、七瀬自身も意図としない事だ。
あくまでもこれは脅し。
それでも、小心者で気が小さい青木にとっては衝撃が大きいはず。
これ以上の抑止力はないだろう。
早坂
早坂
早坂
早坂
早坂
コートのポケットに手を突っ込む。
そして"ある物"を取り出した。
アスファルトに放り投げれば、それを見た青木の表情が一瞬にして凍りつく。
早坂
それは小型のGPS発信器。
知らないうちに取り付けられていた。
もちろん俺や七瀬がつけたものじゃない。
すぐに青木の仕業だと気づいた。
恐らく青木は全部知っていた。
七瀬が俺のところに居候していることも、俺が住んでいるマンションがどこにあるのかも。 もしかしたら、部屋番号まで。
そう考えるとホラーだが、七瀬が1人で部屋にいる時に青木が乗り込んでくることがなかったのは、運が良かったと言える。
あのマンションはセキュリティが高い。
共用スペースには数台の防犯カメラが設置してあるし、各所に防犯センサーも稼働している。
エントランスには24時間、警備員も常駐している。
七瀬の居場所を突き止めたところで、マンションのICカードを持っていない青木が出入りすることは叶わない。
早坂
早坂
早坂
青木
早坂
気が小さいこの男のことだ。
大事な合鍵を肌身離さず持ち歩いているはず。
そう確信して尋ねれば、青木は乱暴な仕草で胸ポケットに手を突っ込んだ。
そして、小さな金属片を取り出す。
アスファルトに叩きつけられたそれを、拾い上げて確認した。
……間違いなく、あの部屋のディンプルキーと同じ型だ。
早坂
青木
青木
もう冷静さを保つことすら難しいのか、狂ったように怒り叫ぶ。
その怒声に、周囲が何事だと目を向けてきた。
好奇の視線に晒されて嫌な気分だが、コイツにはもうひとつ、問い詰めないといけないことがある。
それこそが、七瀬に聞かせたくない話のひとつ。
早坂
青木
早坂
青木
青木
あからさまに狼狽している。
本当に分かりやすい。
ここまで露骨な反応を見せたら、認めたも同然だ。
早坂
早坂
告げた途端、さあっと青木は青ざめた。
青くなったり、怒りで真っ赤になったり忙しいな。リトマス試験紙かよ。
青木
青木
早坂
青木
青木
早坂
早坂
恐らく、車用のGPSは実店舗で購入した物。 盗聴器はネットで購入した物だろう。
入手先がネット経由だと、さすがに購入先までは辿れなかった。
にしても、このご時勢に防犯カメラを設置していないマンションというのも、いささか問題があるような気はするが。
青木
早坂
早坂
青木
早坂
別に推理ってほどでもない。
疑い始めたのも少し前のことだ。
青木から怒涛の嫌がらせメールがきていることを七瀬が教えてくれた時、彼女が放った一言に違和感を覚えただけで。
『早坂に電話をしたせいで、 早坂の存在が青木に知られた』
それは多分。 俺だけしか気付けない違和感。
早坂
青木
早坂
早坂
そう。 七瀬が俺にLINE通話しようとして、それに気付いた青木が、一方的に通話を切った。
七瀬からはそう聞いてる。
青木
早坂
早坂
青木
早坂
青木
青木
回りくどい言い方をしているせいだろう。 青木の苛立ちが目に見えてわかる。
早坂
早坂
早坂
青木
早坂
早坂
早坂
青木
早坂
早坂
七瀬の交友関係は青木も把握していたはずだ。
異性の交流が無いことも知っているはず。
だとしたら、七瀬が咄嗟に電話した相手も同性の可能性が高い。
もし青木が俺の存在を知らなければ、画面に表示された俺の名前を見た時、女友達だと判断するんじゃないか。
でも青木は男だと気付いていた。
いや、知っていた――のかもしれない。
俺が把握している時期よりもずっと以前から、青木は俺の存在を知っていたのだとしたら。
そう思った時、盗聴器の有無を疑った。
七瀬に隠れて合鍵を作り、人の車にGPSを取り付けるような奴だ。 盗聴器を仕掛けることなど造作もない。
ただ、確信はなかった。
確信というにはあまりにも薄っぺらい根拠。
もしかしたら、程度にしか考えてなかった。
念の為に、と業者に確認してもらわなければ、今でも迷っていたかもしれない。
早坂
早坂
青木
青木
早坂
早坂
本当はすぐに取り外したいところだが、その場合、七瀬から鍵を借りなくてはならない。
盗聴器が仕掛けられていると伝えれば承諾してくれるだろうが、そして本来は伝えるべきなんだろうが。 俺はずっと伝えられずにいた。
そして、今後も伝えるつもりはない。
早坂
早坂
早坂
早坂
青木
早坂
早坂
早坂
早坂
青木
青木
俺がスマホを取り出すよりも先に、吐き捨てるような青木の罵声が周囲に響く。
望んでいた決別の言葉を前に、俺はもう一度、この男に宣告することにした。
早坂
早坂
早坂
青木
青木
青木
青木はそれだけ言い残して踵を返す。
足音を派手に踏み鳴らしながら、この場を立ち去っていく。
静寂が訪れ、残されたのは黒い物体。
アスファルトに放置されたままのGPSを拾い上げれば、機器には小さな亀裂が走っていた。
壊れてしまったかもしれないが、もう必要のないものだから問題ない。
早坂
早坂
言葉にすると、どっと疲労感が押し寄せてくる。
もう二度とこんな修羅場はごめんだ。 これから先の人生は穏やかに生きたい。
――時間はすでに23時。
明日も俺達は通常勤務だ。
七瀬を連れて早く帰りたいところだが、彼女も今は冷静な状態ではないだろう。
あんなに平和的な解決を望んでいたのに、結局、後味の悪い結果で終わらせてしまった。
青木のことをひたすら想い続けた4年間。 たとえ騙されていたとしても、七瀬にとっては大切な4年間だったことには変わりない。
平和的な解決を望んでいたのも、大切な思い出に泥を塗りたくなかったのだと思う。
気持ちはわかる。
今は悲しみに暮れているだろう。
でも乗り越えないと前に進めない。
七瀬も、そして青木も。
早坂
哀れな奴だ。 取るに足らないプライドのせいで、大切な人まで失ってしまった。
七瀬を大事に想っていたはずなのに、その想いを否定してまでアイツが守りたかったものは、七瀬を傷付けてまで守る価値のあるものだったのか。
問いただしたくても、肝心の本人はすでに立ち去った後だ。
まあ、今回のことで痛い目をみたんだ。 少しは更生してくれるといいんだけど。
こればかりは俺が関与できる話じゃない。
早坂
早坂
本当に――無駄なプライドなんて持つものじゃない。
他人と比べる見栄も、過去のこだわりも執着も、自身の成長の妨げにしかならない。
プライドなんて所詮、エゴでしかないのだから。