夫のプロポーズを、私が演出します〔サレ妻プランナーの完璧な式〕
ウェディングプランナーの紗英、三十三歳。結婚五年。夫の悠人は人に好かれる広告マンで、妻の仕事を「飾り付け屋」と呼ぶ。言い返したことは一度もない。飲み込んだ夫の言葉は、今日で四百十二個目。
ある朝、机に置かれた新しい申込書。
『サプライズプロポーズプラン』。依頼者は二十四歳の女の子。
「プロポーズする相手」の欄に貼られた写真は、青いシャツで笑う、私の夫だった。
希望日は十二月十二日。私たちの結婚記念日。備考欄には『上書きしたい』。
紗英は依頼を断らない。担当者の欄に旧姓を書き、笑顔で打ち合わせを始める。
式場、招待客、司会、映像、座席、花。プランナーにしか使えない道具で、夫が一番得意な舞台を、人前の暴露の場に作り替えていく。
式場を買収した新オーナー・一ノ瀬は、「冷徹な再建屋」と呼ばれる男。
紗英の段取りの力を、誰より先に見抜いた。
「式場の全部を使え。落ちるのは、彼一人だ」
十二月十二日。夫と愛人が「二人の記念日」と信じている日まで、あと一か月。
サレ妻プランナーが仕込む、完璧な式。