テラーノベル
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神よ――
あぁ、神よ……
もし、願いが叶うのなら――
どうか私を……元の世界へ戻してください
あの人のもとへ
そして……あの小さな命のもとへ……
どうか、どうか……もう一度、帰らせてください……
沙夜は祈りを繰り返しながら、再び不思議な世界をさまよっていた。
何度も同じ願いを胸の内で唱え、ただ前へと歩き続ける。
やがて、見覚えのある景色が広がった。
(両側に花畑が続く道……前にも通った場所?)
そう思いながら、その道を戻るように進む。
それは、沙夜が求める世界へ近づいている――そんな確信めいた感覚だった。
しばらく歩くと、澄んだ水が静かに流れる川が現れた。
水面はガラスのように透き通り、沙夜の姿を映し出している。
その美しさに引き寄せられるように、沙夜は川へ一歩踏み出した。
――その瞬間、頭上から声が響いた。
(その川を渡ってはだめよ。立ち止まらずに歩き続けて……)
その声は、以前この道を通ったときに聞こえたものと同じだった。
やはり聞き覚えがある。
沙夜はハッと息を呑む。
「お母さん? お母さんなの?」
返事はない。
それでも沙夜は確信した。
あれは、幼いころに聞いた亡き母の、あの優しい声だ。
母の声に励まされ、沙夜は川を渡るのをやめて再び歩き始めた。
しばらく進むと、前方に明るい光が見えてくる。
以前この世界をさまよったとき、沙夜は「光の方へ行ってはならない」と告げられたことを思い出した。
胸に不安が広がった沙夜は、母に向かって叫んだ。
「お母さん! あの光の方へ行ってもいいの? あっちへ進んでも大丈夫なの?」
しかし返事はない。
そのとき、背後に人の気配がして、沙夜は驚いて振り返った。
そこに立っていた人物を見て、沙夜は息を呑む。
「あなたは……」
そこにいたのは、以前タクシーで出会い、助言をくれた女性ドライバーだった。
今、彼女は、タクシー会社の制服ではなく、白いドレスをまとっている。
沙夜は不思議に思いながらも、先へ進みたい気持ちが勝り、女性に尋ねた。
「あの光の方へ進んでも大丈夫なのでしょうか?」
女性は穏やかに微笑み、沙夜へ手を差し出した。
「私が案内するわ。さあ、つかまって」
沙夜は迷わずその手を握り、二人は手を繋いで歩き始めた。
歩く間、女性は一言も話さなかった。
その代わりに、ふと歌を口ずさみ始めた。
きらきらひかる おそらのほしよ
まばたきしては みんなをみてる
きらきらひかる おそらのほしよ
きらきらひかる おそらのほしよ
みんなのうたが とどくといいな
きらきらひかる おそらのほしよ
(これは……『きらきら星』の歌……?)
その歌声は、驚くほど優しく、胸の奥に染み渡る響きだった。
女性は穏やかに微笑みながら歌い続ける。
彼女の手の温もりと歌声は、沙夜の不安をゆっくりと溶かしていくようだった。
やがて、遠くに見えていた光の渦がすぐ目の前に迫ると、女性は歌うのをやめた。
光の入口に着いたところで、女性は歩みを止め、沙夜の手をそっと放した。
「あとは、あの光の中をまっすぐ進むといいわ」
それは、別れを告げる言葉でもあった。
「あなたは行かないの?」
「私はこちらの世界の人間だから、これ以上は進めないの」
沙夜は胸を締めつけられるような寂しさを覚え、足を止める。
すると女性が、迷いを断ち切るように力強く言った。
「あなたの大切なものを守りに戻りなさい! 戻って、やり直すのよ!」
「えっ……?」
「大丈夫。いつも見守っているから。さあ、行って! 一歩踏み出すのよ……」
女性の言葉に背中を押され、沙夜は覚悟を決める。
そして彼女の瞳を見つめ、静かに礼を言った。
「ありがとう……」
沙夜は女性に向かって会釈をすると、少し緊張しながら光のトンネルへ足を一歩踏み入れる。
その瞬間、背後から女性の声が聞こえた。
「あの子をお願いね……」
そう聞こえた気がしたが、確かではない。
「眩しい……」
光に満ちたトンネルを、沙夜はひたすら進む。
一番奥へたどり着いたとき、さらに強い光が彼女を包み込んだ。
その瞬間、沙夜は崖のような場所から足を踏み外し、真下へと落ちていった。
「ああっ、助けてっ! 私は戻らないと……あの人と、赤ちゃんのもとへ戻らないといけないのに……」
吸い込まれるように落ちていく中で、沙夜の意識はゆっくりと薄れていった。
――そして。
次に沙夜が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
まぶたを開けた瞬間、無機質な天井と点滴のチューブが視界に入る。
長い長い夢を見ていたような気がした。
目覚めた途端、不思議と胸の内はすっきりしている。
そのとき、自分の手が誰かに握られていることに気づいた。
(誰……?)
わずかに顔を動かすと、そこには司がいた。
沙夜の手を握ったまま、疲れ切った様子で顔を伏せている。
眠っているようだ。
スーツの上着は脱ぎ捨てられ、ネクタイも緩められている。
その乱れた姿は、仕事の途中で駆けつけ、ずっと沙夜のそばにいたことを物語っていた。
「司……さん……?」
か細い声に、司の体がぴくりと動いた。
すぐに顔を上げ、驚きと安堵が入り混じった表情を見せる。
「沙夜……目が覚めたんだね……よかった……」
心からほっとしたように、司の瞳がわずかに潤んだ。
「私……どうなってたの?」
「出産のときの出血がひどくて、生死の境をさまよっていたんだ。もう三日も眠ったままだった」
「そう……」
沙夜はそう返したあと、はっと目を見開く。
「赤ちゃんは? 私の赤ちゃんは?」
慌てる沙夜に、司は柔らかな笑みを向けた。
「大丈夫。僕たちの子供は元気だ。元気すぎて大変なくらいだよ」
その言葉に、沙夜の胸に安堵が広がる。
「よかった……」
「今は何も心配しないで、ゆっくり休みなさい。赤ちゃんのことは心配いらないから。君のお義母さんがそばにいてくれるから」
「……はい」
沙夜はほっと息を吐き、再び目を閉じた。
生死の境をさまよい、長い旅をしてきたせいか、心身は思っていた以上に疲れ切っている。
やがて静かな寝息が聞こえ始める。
司は沙夜の手を握ったまま、彼女の安らかな寝顔を見つめ、そっと目頭を拭った。
#キャバ嬢
ruruha
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管野アリオ
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瑠璃マリコ
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コメント
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冒頭のシーンは、ここに繋がっていたのですね…🪽✨️ お母さんにも、そして愛しの旦那さま司さんにも… 皆に守られて、赤ちゃんと司さんの元に、無事に帰ることができて良かったですね…🍀✨️
タクシーの運転手は司さんのお母さん?天の声は、さよちゃんのお母さんかなぁ😊全ては、守られていた!司さんの涙にポロリよ😭
良かった沙夜ちゃんが戻ってこられて 😢 キラキラ星の歌の様にお母さんが星になっても空から見ていてくれていろいろな人の芯の部分をみせてくれたのかな? 司さんの芯の部分も覗けた沙夜ちゃんと司さんがこれからどう関わっていくのか楽しみです