テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
雨楽器の余韻が静かに薄れたところで、ヌバーが舞台袖から顔を出した。
「それでは皆さん、お待たせしました。大人もいるけど題名はそのままでいきます」
客席がくすりと笑う。
「未成年の主張、開演です」
最初に飛び出したのは、小柄な少年の録音だった。
「将来の俺ー! 宿題はためるなー!」
笑いが大きくなる。続いて、少しかすれた女の子の声。
「お母さん! 心配しすぎ! でもお弁当は好き!」
あちこちで肩が揺れた。緊張で固まっていた空気が、声のたびにほどけていく。
けれど三人目、四人目と進むうちに、内容は少しずつ変わった。
「帰ってきても、また話しかけてくれる町でいてくれ!」
「助けてって言った時、聞こえないふりしないでくれ!」
「失敗しても、次に呼んでくれ!」
笑いのあとへ、胸の奥を押すような静けさが残る。
サベリオは思わず息を止めた。
どの声も、誰か一人のためだけではなかった。ここにいる皆へ向けて投げられている。そして同時に、自分自身へ返っていく。
ヌバーは袖で腕を組んだまま、照れくさそうに鼻をこすった。
「誘ってるんですけど、ちゃんと来てくれてよかったな」
隣のハルティナが笑う。
「来やすいようにしたの、あなたでしょ」
デシアはその声たちを一つもこぼさないように、舞台の中央で受け止めていた。町の靴音、鍋の音、橋の風の音、そのあいだへ人の願いが差し込まれるたび、ただの音の記録だったものが、だんだん物語へ変わっていく。
客席の後ろでは、昔シェルターに助けられた年配者たちが、静かに目を細めていた。パルテナはその様子を見て、唇をきゅっと結ぶ。前みたいに先に何か言うのではなく、今夜は最後まで聞く顔をしていた。
サベリオは胸の奥で、はっきり分かる。
この町に足りなかったのは、完璧な成功じゃない。
声を出せる場所と、聞いてもらえる夜だったのだ。
最後に流れた録音は、少し震えた若い声だった。
「ここにいていいって、言ってほしい」
その一言だけで、シェルターがしんと静まる。
サベリオは目を閉じた。
それは、自分が何度も言えなかった言葉でもあった。
#成り上がり
#死に戻り
#ハッピーエンド
114