テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
管野アリオ
416
#執着
猫とろ
146
瑠璃マリコ
17,615
#狂愛
柏木さくら
949
コメント
25件
14話…読み終えてせつなくなって 悲しい気持ちです😢 タイムリープした沙夜ちゃんが、もう一度お見合い当日の行動を見直してる。司さんも沙夜ちゃんへの恋心が溢れて緊張していたんでしょうか? 悟られないように優しい笑顔を見せて 時間が本当に戻せるなら…現実の世界の沙夜ちゃんに幸せになって欲しいなぁって…タイムリープした沙夜ちゃんが もう一度、司さんを信じられるように なって欲しいと願ってます
すごい…予想していなかった展開にびっくりしてます🫢 見えてないって、こういう事だったのかーー!! 同じ出来事が起こっているけど、それを変えることは出来ない…?🤔 司さん、最初から沙夜ちゃんに好意を寄せていたのよね🥹✨ これからどうなっていくんだろー💦続きが気になり過ぎます!
司さんの表情やお見合いをしてる沙夜ちゃんを気遣っているのを知れて良かったけど、タイムリープした沙夜ちゃんにしたら複雑でどうしていいかわからないよね🌀😫 先が読めず結末も読めない展開…マリコ先生どうなるの⁉️
そして次の週。
いよいよ運命の日がやってきた。
沙夜が司と見合いをする日が、ついに訪れたのだ。
未来を変えるべきか、それとも変えないべきか――
沙夜は今日まで何度も考えたが、結論は出なかった。
未来を変えれば、あの日授かった小さな命には二度と会えない。
だが同じ道を辿れば、あの現実がそのまま繰り返されるだけ。
いや、それ以前に――司から認識されない自分には、そもそも現状を変える力などない。
今日、見合いの場に向かったとしても、彼には沙夜が見えないのだから。
思い悩んだ末、沙夜は静かに決めた。
――たとえ司に認識されなくても、彼との見合い場所へ行ってみよう。
そう決めた。
沙夜は、あの日と同じベージュのワンピースを選んだ。
タクシーで約束のホテルへ向かう途中、ふと疑問が胸をかすめる。
(あんな立派な家柄の御曹司が、仲介人も立てずに最初から一対一で会おうだなんて……今思えば不思議だわ)
両家の見合いには仲介人が立ち会うのが普通だ。
しかし、沙夜と司の見合いにはそれがなかった。
その理由を、今度父に聞いてみよう――沙夜はそう思った。
ホテルから少し離れた場所でタクシーを降りた沙夜は、街路樹の陰から入口をそっと見守る。
そのとき、見覚えのあるグラファイトグレーのドイツ車が、エントランスに滑り込んだ。司の車だ。
沙夜は身を乗り出して車を見つめる。
あの日と同じスーツを着た司が運転席から降り、ドアマンにキーを渡した。
(来たわ……)
司の姿がホテルの中へ消えると、沙夜は姿勢を正し、ゆっくりと入口へ向かった。
ドアマンが車を駐車場へ移動させるのを見届け、少し緊張した面持ちで中へ入る。
司はロビーを横切り、まっすぐラウンジへ向かったようだ。
沙夜も急いで後を追う。
ラウンジには、コーヒーを片手に談笑する人々が大勢いた。
沙夜はあの日自分たちが座った席を思い返し、その方向を見る。
すると――あの日と同じ席に、司が腰を下ろしたところだった。
沙夜はおそるおそる歩みを進める。
(私のことが見えていないんだから、そばに行っても問題ないはず)
心臓が破裂しそうなほど激しく脈打つ。
沙夜は慎重に、ゆっくりと近づいた。
そのとき、司がふいに顔を上げ、沙夜の方を見た。
(あっ……)
沙夜は胸の内で叫んだ。
だが司の表情は変わらない。
彼の瞳は沙夜を通り過ぎ、入口の方へ向けられていた。
(びっくりした……。やっぱり見えてないのね)
その事実に、沙夜はほんの少しだけ勇気を得た。
思い切って司の隣のソファに腰を下ろした。
ここなら会話が聞こえる距離だ。
そして、沙夜もコーヒーを注文する。
スタッフがバックヤードへ向かう後ろ姿を見送りながら、ふと疑問が胸をよぎる。
(私がここにいて見えないっていうことは……今日、彼は誰とお見合いをするの?)
ほどなくして司のコーヒーが運ばれ、続いて沙夜のコーヒーも届いた。
司は一口飲み、「ふうっ」と軽く息を吐いた。
どこか緊張しているように見えた。
(まさか緊張しているの? あの自信に満ちた人が?)
沙夜が驚いていると、司が突然立ち上がった。
「沙夜さん……ですね?」
(えっ?)
司が話しかけている相手は沙夜ではない。
おそらく、彼女には見えない“この世界の沙夜”なのだろう。
司の視線の先を見ると、そこは靄がかかったようにぼんやりしている。
どうやら、違う世界線から来た沙夜には、自分自身の姿が見えないらしい。
(こちらの世界にも“財前沙夜”が存在するんだわ。理由は分からないけれど、私たちは互いの姿が見えない仕組みになっているのかもしれない……)
その異常な状況に、沙夜の頭は軽いショックを受けた。
自分が信じられない世界にいるのだと、改めて思い知らされる。
少し心を落ち着けようと、沙夜は震える手でコーヒーを一口飲んだ。
司と“この世界に存在する沙夜”の見合いは、あの日と同じように進んでいるようだった。
聞こえるのは司の言葉だけだが、その内容もあの日とまったく同じだった。
不思議な状況に少し慣れてきた沙夜は、見合い中の司へ視線を向けた。
あの日は緊張でまともに見られなかった彼の顔を、今ならじっくり観察できる。
沙夜は司の眼差しをじっと見つめた。
“この世界の沙夜”が来る前、彼は少し緊張していた。
しかし今は、柔らかな笑みを浮かべている。
(え? あの日彼は、こんな笑顔を浮かべていたの?)
それは銀座で女友達に向けていた視線よりも、ずっと柔らかく優しい表情だった。
司は、沙夜と出会った初日から、こんなにも優しい眼差しを向けていたのだと、沙夜は今さら気づく。
(本当に……私はいったい何を見てきたの?)
自分の行いが悔やまれて仕方がない。
司の表情には、緊張で固くなっている沙夜をなんとかリラックスさせようという配慮が満ちていた。
それなのに、司を冷徹な人間だと決めつけていた自分が情けない。
恥ずかしくて穴があったら入りたいほどだ。
もし謝れるなら、この場で謝りたい――
そう思ったが、彼の瞳には自分の姿は映らない。
その現実に、沙夜はがっくりと肩を落とした。
やがて司が立ち上がり、目の前にいるはずの“この世界の沙夜”に腕を差し出した。
二人はいよいよスイートルームへ向かうようだ。
目の前で起きている現実を、何ひとつ変えられない自分の無力さに、沙夜は深い絶望を覚えた。
そして二人がホテルの上階へ消えていくのを見届けると、沙夜は力なく立ち上がり、沈んだ表情のまま足を引きずるようにして出口へ向かった。