群れから少し離れたところで、俺は立ちすくんだ。手は震え、心臓は耳まで響くほどの速さで打つ。人通りは少なくない。だが、俺の存在はその街の景色の中で異物のように浮き上がっていた。
「あれ……なにあの格好」
声は背後からだ。振り返ると、数人の高校生の少年たちがニヤリと笑っている。片手でスマホを構え、まるでゲームのターゲットを撮影するかのような目で俺を見ている。
「ちょ……やめろって」
出そうになる声を必死で抑える。しかし、身体の奥が勝手に反応し、かすかに喘ぎが漏れてしまう。その瞬間、少年たちは一斉に笑い声を上げ、俺の羞恥を餌にするかのように足を止めさせた。
「ん……やめ……」
言葉はかすれ、震える。腕に力を入れても、立っているのが精一杯だ。ひとりが近づき、手で肩に触れる。直接的な暴力ではない。けれど、その触れ方は、俺の存在を「弄ぶ」ようで、逃げることを許さない。
「もっと見せてみろよ、その顔」
別の少年が笑いながらスマホを向け、画面越しに俺の羞恥を拡散しようとしている。群れにいなくても、俺は孤立し、晒される存在として固定される。
周囲の人々の視線も無遠慮だ。遠巻きに立ち止まり、囁き、笑い、嘲る。俺のかすかな声は、街の雑踏に埋もれ、助けを求める手段を奪われる。
「……もう……いや……」
それでも足は前に出る。必死に逃げたい、けれど身体が重い。踏まれるような視線、嗤われる羞恥、身体の奥の痛み——すべてが絡み合い、息をするのもやっとだった。
少年たちはそのまま、俺の歩く方向を取り囲む。手を伸ばし、かすかに押したり引いたり。直接的な暴力は少しずつ、しかし確実に増していく。俺の反応、かすかな喘ぎは、彼らの嗤いの対象となる。
群れから遠ざかっても、逃げる場所はない。通りすがりの人々も、ただ眺め、笑い、指を指すだけ。俺は街全体に晒され、存在そのものが虐げられる。足が震え、呼吸が乱れ、羞恥と孤独に押しつぶされそうになる。
「やめ……って……」
声はかすれ、身体は硬直する。けれど、彼らは一歩も引かず、むしろその小さな声を餌にして追い込む。俺の必死さも、羞恥も、すべては遊びの道具にされるだけだ。
そのまま数分が過ぎた。通りすがりの視線、少年たちの嗤い、俺のかすかな反応——すべてが絡み合い、俺は街の中で一瞬も解放されることのない地獄を味わった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!