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51歳のシンデレラ

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51歳のシンデレラ

第46話 - 第46話

142

2024年07月29日

#大人の恋愛

#恋愛

#純愛

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#大人ロマンス

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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雪子は夕食を済ませると、シャワーを浴びてからのんびりと読書を始めた。

正社員を辞めたら本を読む時間がぐんと増えた。

雪子がソファーに座って買ったばかりの文庫本に夢中になっていると、突然スマホが鳴った。

電話はデパート時代の先輩の板倉尚之からだった。

板倉は元夫とは同期で、雪子の先輩でもあり同僚でもあった。

尚之はデパートの横浜店が閉店になった後は本店へ異動していた。

異動先には、元夫の俊之と俊之の不倫相手の河合みなみがいた。

雪子と俊之が離婚した後の二人の事は、本店にいる雪子の同期である加奈子から時々聞いていた。

加奈子の話によると、俊之は離婚後みなみとまだ交際を続けているようだったが、再婚する様子はないと言っていた。

そして今も二人はまだ結婚していない。

しかし恋人関係はまだ続いているようだった。

最後に加奈子と話したのが数ヶ月前だったので、最近の二人の状況は知らなかった。

そこへ板倉からの電話だ。何かあったのだろうか？

俊之から届いた手紙の事が気になっていた雪子は、すぐに電話に出た。

「もしもし？　板倉さん？」

「よぉ、雪子ちゃんこんばんは！　すっかりご無沙汰しちゃったね」

「ううん、新しい店に慣れるまで大変だったでしょう？　どうですか？　本店は？」

「ああ、半年たってやっと慣れたよ」

「部長になっても現場に積極的に出ているし、相変わらず営業成績も凄いって噂で聞きましたよ」

「加奈子ちゃんからか？　参ったな。いやあ本店の奴はみんな凄いからさー負けてらんないよ！　それより聞いた？」

「何ですか？」

「俊之の事」

「ううん、何も。加奈子とは数ヶ月前に話したっきりですから」

「そっか。あのさ、あいつ、フード販売統括部に降ろされたんだよ」

「え？」

「びっくりだよな。店舗事業計画部からいきなり地下の食品売り場担当だぜ。俺もびっくりしちゃったよ。あと数年で定年なのにさぁ、今さら現場に行かされるってなかなかないだろう？」

「………..」

雪子は驚いていた。俊之は不倫はするだらしのない人間だったが、仕事に対する情熱は熱かった。

俊之は売り場から入りその後営業へ移った。営業に行った後は常に営業成績はトップ。

客への応対は丁寧で評判が良く、時代の流れを掴むセンスもあった。

それが認められてみるみる昇進し、30代半ばで店舗全体の運営に関わる店舗事業計画部へ異動した。

つまり出世コースまっしぐらだったのだ。

雪子と結婚した頃から給与はうなぎ上りで、その事もあり夫婦の間では一戸建てを購入する計画が進んでいた。

それが定年を前にいきなり地下の食品売り場へ異動したらしい。そんな話は今まで聞いた事がない。

「何かやらかしたのかしら？」

「おそらく、女関係かもしれない」

「嘘！　だって河合さんがいるのに？」

「河合とは上手くいってなかったんだと思うよ。だから2人は結婚しなかった。でもずるずるとつき合ってはいる。そこへ違う女が入って来たみたいだ。で、上にバレた」

「………..」

「アイツももう定年間近だろう？　だからいわゆる肩たたきってやつかもしれない。女性従業員が多い社内で女関係でトラブルを起こす奴は会社も早く叩き出したいんだろうな。折角雪子ちゃんが不倫の事は会社に伏せてやっていたのになぁ…あいつも馬鹿だよなぁ」

板倉はそう言ってフーッとため息をついた。

板倉と俊之は同期として長い付き合いだったので、雪子と俊之の結婚をあたたかい目で見守ってくれていた。

そんな同期が妻を裏切り、今度は愛人を裏切ったのだ。板倉にとっては二度裏切られた気分なのだろう。

「だからかな？」

「えっ、何が？」

「ううん、今日ね、和真に俊之から手紙が届いたの。もちろん中は開けていないけれどね」

「えっ？　なんだって今頃？　そんなの送られても和真君も困るだろう」

「そうなのよね…….」

「どうせろくなことは書いていないんじゃないか？　和真君を傷付けるような事にならないといいけれど、雪子ちゃん大丈夫？」

「うん」

「あ、俺さ、今度の木曜日、鎌倉に行く用事があるんだよ。顧客に鎌倉の老舗店の和菓子を買って来て欲しいって頼まれちゃってさ。だからその時少しお茶しない？　確か木曜日は休みだったろう？」

「はい、木曜なら大丈夫ですよ。何時頃ですか？」

「午前中でいいかな？　お茶した後、すぐ用事を済ませて戻らなくちゃだから」

「わかりました」

「じゃあ、10時に鎌倉駅前で」

「はい。じゃあ木曜日に！」

そこで雪子は電話を切った。

板倉の話を聞き、雪子は何とも言えない嫌な予感がしていた。